住宅業界の目的は「住宅を作ること」どんな業態・企業がある?

2024年11月27日 更新

建築学生だけではなく、多くの学生から人気の住宅業界ですが、まず住宅業界と言えばハウスメーカーというイメージを持つ人も多いのではないしょうか。

しかし、住宅業界とは「住宅を作ること」を目的とし、提供している業界ではありますが、「ハウスメーカー」「ビルダー」「工務店」のように様々な業態が存在します。

また、顧客が希望した土地に要望に応じた設計・仕様で建てる「注文住宅」と、事業者自らが土地を仕入れて住宅を建てたうえで、土地と建物をセットで販売する建て売り「分譲住宅」に大別できます。

そこで今回は、住宅業界の概要や業態、仕事内容、職種、関連する資格などに加え、業界全体の特徴や今後の展望についてもご紹介します。

住宅業界の概要

主に「住宅」の設計・建築・販売を事業とする業界です。

マンションを販売するゼネコンや、戸建て住宅などを販売するハウスメーカーやビルダー、工務店などの企業が該当し、全国的な大企業から地域の中小企業までさまざまな規模の会社があります。
今回はゼネコンを除く、戸建て住宅をメインとする業態についてご説明します。

また、不動産業界の一部に含まれる業界でもあり、建物の土地探しから業務を行うこともあります。注文住宅、分譲住宅、賃貸住宅によっても働き方は異なるため、自分の目指す働き方と合わせての業界研究が必要です。

住宅業界という括りには、新築事業のほかにリフォーム・リノベーション事業も含まれますが、今回は新築事業に焦点を当ててご紹介していきます。

「ハウスメーカー」と「ビルダー」と「工務店」の違い

ハウスメーカーやビルダー、工務店を分ける明確な基準はありませんが、一般的には会社の規模、営業エリア、自社商品の有無などによって分けられていることが多いです。

ハウスメーカー

ハウスメーカーとは、全国規模または広範囲のエリアで事業展開をしています。

住宅建築の企画、設計、施工のすべて行う「自社一貫施工」を行う会社では、施工を協力会社に依頼することで同じ業者が工事を行うため安定した技術を提供できます。 

そして、蓄積した技術を基に「自社独自の構造・工法などの商品開発」を行い高い技術力を武器としています。また、多くの会社では自社工場で部材を生産し、「設計から施工までをシステム化」しているため、短工期かつ安定した品質を実現しています。

大手企業ではグループ会社と連携し、引渡し後の定期点検やアフターサービス、リフォームを自社グループで行う場合もあります。

会社によって手がける規模も変わり、注文住宅、分譲住宅、賃貸住宅などの企画、設計、施工も行います。

注文住宅には外装や内装、間取りの全てを自分で決めていく「自由設計型」とすでに間取りが決まっている「規格型」があり、独自規格の制約もあるため、設計職として自由度の高い提案を望む場合には、会社ごとの研究が重要となります。

ビルダー

ビルダーとは、ハウスメーカーを除く住宅建築業の企業で、1〜3都道府県程度のエリアに特化していて、年間数百棟〜数千棟くらいの住宅を供給する会社の事です。地域密着型の工務店と全国規模のハウスメーカーの中間的な存在と言えます。

施工会社と契約をして現場の施工を行っているケースもあり、工務店よりもエリアの手が拡げやすいという特徴もあります。

また、注文住宅だけでなく建売住宅中心の会社もあり、「パワービルダー」とも言われています。建売を専門とする企業は、地価の安いエリアで土地を仕入れ、間取りや設計などを限定することで坪単価を抑えた土地付き戸建て住宅を建設し、販売を行います。

そのため、注文住宅とは違い、「建物の設計や仕様はビルダーが決定し、完成した物件を消費者が選んで購入する」流れとなります

工務店

工務店とは地域密着型で住宅の設計及び施工を行う大工及び職人の集団であり、市区町村程度の規模が多く、大きくても都道府県を跨ぐことはほとんどありません。

また、社長と職人だけの小規模な工務店から、豊富な施工実績を誇る大型工務店まであります。多くの工務店では伝統的な木造軸組工法を用いているところが多く、地域の風土や地形に合わせた住まいを建築できるという強みがあります。

規格商品という概念がなく、1棟1棟オーダーメイドの自由設計で住宅の設計及び施工を手掛けることができます。ハウスメーカーとは違い、少人数体制のため業務が細分化されておらず、住宅に関する幅広い業務を経験できることも特徴の一つです。

以上の住宅業界の業態を示しましたが、対象とするエリアの広さで比較すると、

ハウスメーカー>ビルダー>工務店

の順番になります。

ハウスメーカーは、全国規模または広範囲のエリアで事業展開しているため、企業の勤務制度によっては都道府県を跨ぐ”転勤”が伴ってくることがあります。(ハウスメーカーによっては地域密着型にしていることもある)

反対に、地域密着型で小規模な事業展開をしているため、”転勤”の心配はなく働くことが可能です。就職活動で大まかな人生設計を考える中で、勤務先を変え、多くの場所で活躍を望むのか、環境を変えずに働くことを希望するのか、就活生は注目するべき点でもあります。

住宅業界の仕事内容(業務フロー)

職種をご紹介する前に、まずは住宅が完成するまでの業務の流れを知っていきましょう。

基本的な流れとしては、

①集客
②お客様へのヒアリング・企画
③打合せ・企画/設計・見積提示
④着工・施工・竣工(工事の実施)
⑤内覧会→引き渡し

①集客

業態によって、集客方法は様々です。

「ハウスメーカー」であれば、個人顧客がメインの戸建て住宅や法人顧客がメインの賃貸住宅の場合があり、モデルハウスや住宅展示場での営業やチラシやDMの送付、自社ホームページやSNSの活用などを行います。

「ビルダー」の建売住宅の場合であれば、チラシの投函やSNSの活用、ポータルサイトへ掲載、また、建築済みの実物件を案内することがほとんどであり、予約なしで自由に住宅を内覧できるイベントの「オープンハウス」の開催などを行い、物件のポイントを押さえ、お客様に同行して営業活動を行います。

「工務店」であれば、知名度を上げるためのチラシや交通広告、自社ホームページやSNSの活用、または顧客との関係を一から構築するためのイベントの開催になります。

②お客様へのヒアリング・企画(請負契約前)

住宅を購入することを検討しているお客様に対して、自社の強みをアピールし、顧客獲得のための営業活動を行います。

「ハウスメーカー」であれば、得意とする木造や鉄骨造などの構造や工法が、予算や要望、自然環境に対してどれだけ対応できるのか。また、過去の建築実績や外観デザイン、間取り提案の特徴などの特徴を分かりやすく説明を行います。

「工務店」であれば、ハウスメーカーほど規格が決まっていないので、使用する建材を1から選んでこだわったお家づくりも可能であり、完全注文住宅であることをアピールできます。

③打合せ・企画/設計・見積提示(請負契約後まで)

購入に前向きなお客様に対し、設計職は営業職と共に要望を伺いながら企画を行います。住宅(面積・高さ・間取り)の構造に加えて、内装材や設備など詳細を検討していきます。方針が決まり次第、順次設計業務に着手します。

ここでは、建築基準法などの関連法規・構造・部材納まりの検討を行い、施工性を考慮し、現実的なプランに落とし込んでいきます。CADを用いて図面やCGの作成を行い、イメージしやすい資料をお客様にお見せし、お客様のイメージやニーズと食い違いがないか、打合せを重ねてすり合わせていきます。

工事を行うための詳細な指示図面である実施設計図面を完成させることで設計職の主な作業は、一区切りです。

また、住宅の工事を行うために必要な金額を表記した見積書の提示を行い、金額と工事内容に説得力のある説明を行うことも大事です。

④着工・施工・竣工(工事の実施)

建築工事は「着工」→「施工」→「竣工」の順番で進んでいきます。

「着工」とは、工事を始めること。

「施工」とは、工事を行うこと

「竣工」とは、工事を終えること。

主に、施工管理職が担当し「工程」「安全」「原価」「品質」「環境」の5つを管理することで、現場を予定通りの工期に間に合わせるため、作業が円滑に行われるよう現場の管理を行います。

⑤内覧会→引き渡し

住宅が完成した後はいよいよ「引き渡し」になります。
しかし、工事が終わり、まず行うのは内覧会(竣工検査)です。

この検査では、工事後の仕上げが図面通りになっているか、汚れや傷、建具などに不具合はないか、床の軋み等はないかなど、不備がないかを営業、設計、施工管理など担当者が立ち会い行われます。

その後、お客様立会いのもと、設備機器などの説明などが行われ、問題がない場合、無事お客様のもとへの「引き渡し」が行われます。

住宅業界の仕事内容(職種や業務内容について)

住宅業界では、一般的に主に「営業」「設計」「施工管理」の3職種が挙げられます。また、補足として「積算」「CADオペレーター」「インテリアコーディネーター」など、工務店など小規模企業の場合では職種を兼任することが当たり前にもなっている業務が、大手ハウスメーカーなどでは1つ1つの職種として確立している場合があるので紹介していきます。

「ハウスメーカー」「ビルダー」「工務店」それぞれの業態・企業によって、職種の分けられ方は様々であり、業務を細分化している企業などでは総合職採用や技術職採用などが存在します。採用方法が異なることがため、入社後に就くことができる職種も限られる可能性があります。

社員の能力開発や人材育成を目的とした従業員に定期的に職種や職場の異動を行う人事異動制度の「ジョブローテーション」なども採用する企業があるため、会社選びをする上では自分に合った成長方法に焦点を当てながら考えていくのも良いでしょう。

営業職

営業職は、お客様を最初から最後までサポートする窓口担当です。

集客、顧客獲得、ヒアリング、契約、アフターサービスまで一貫してお客さんに関わる業務です。

具体的には、チラシやCM、住宅展示場などのプロモーションを行い、顧客を獲得するところから始まります。その後、設計職同行のもとヒアリングを行い、お客さんの理想の住まいやライフスタイル、予算計画の相談などと共に商談を行います。

その際、自社の強みを伝えると共に、お客様の理想が提案するプランで実現可能であることをイメージしてもらうことが大切です。

打合せを繰り返し行い、専門的な知識なども盛り込み、お客様の納得を得ることができたときに契約を交わします。契約が完了した後は、設計と施工が始まります。設計職に図面を仕上げてもらい、着工へと続いていきます。工事中も常にお客様の窓口となり、寄り添いながら関係性を築いていきます。

竣工、引き渡し後には、お客様の喜んだ顔を見ることができた安心感、また長期的に取り組んできた業務に対しても達成感も感じることができるでしょう。

引き渡し後もアフターサービスを行っている会社の場合はお客様との関係は続いていきます。住宅の営業職は、基本的な営業スキルだけでなく、建築の専門的分野の広い知識も必要になります。

また、実際に自分が生活している中で行う家事などの生活行為、設備などの使い勝手、収納するのに必要な広さや家具のスケール感など、日常生活から得られる気づきも武器になります。

実際の自身の生活スタイルを振り返り、面白い発見を見つけてみるのも「自分は住宅に興味があるのか?」という観点では自己分析になるでしょう。

設計職

住宅業界における設計職の仕事は、クライアントの要望に基づいて家の設計を行う仕事です。設計図の作成やデザインのスケッチ、3Dモデリング、部材や仕様の選定などを行います。

専門的な分野になると、建築の法規的なルールに適合しているか、また建具や設備、造作家具などが問題なく取り付けられるかなど、ミリ単位での計画を行います。

一方で、ハウスメーカーでは企業によって、独自の構造や 得意とする材料や工法などがあり、規格の制約も生まれてくるため、企業独自のマニュアルなどを読み込んで設計を行う必要があります。

また、住宅の専門的な知識をお客様に対して簡潔に説明し、より安全で最適な提案をすることも大切です。

さらに設計業務を進めるうえで、建築全般の知識の理解に加え、CADのスキルも伸ばしていくことが求められます。工事を行うために、詳細な指示が必要になるため実施図面を描く知識も必要になります。

施工管理職

施工管理職の仕事は、現場の「工程」「安全」「原価」「品質」「環境」の管理です。

ハウスメーカーでは、設計と施工を自社で担う企業もあれば、設計は自社で行うが、施工する業者は外注するという企業もあります。

ハウスメーカーの施工管理職は、どちらの場合でも、現場の管理を行います。

「工程管理」とは、予定されている工期を守るため、工事のスケジュール管理を行うことです。

「安全管理」とは、現場での工事が安全に行われるよう、設備の整備や作業員への安全指導などを行います。

「原価管理」とは、予算内で工事を完成させられるよう、人件費や材料費を計算して管理することです。

「品質管理」とは、成品が設計図や仕様書に記載された品質基準を満たすように管理することで、品質管理では建物の強度や密度も管理対象となります。

「環境管理」とは、自然環境、周辺環境、職場環境の管理を指します。自然環境においては工事により周辺の生態系などへの影響がないように配慮し、周辺環境においては住宅街などでは特に、周辺の街への騒音などの影響を緩和し、職場環境においては従業員が働きやすいように配慮を行うこととされています。

このように、現場の職人の方々とのやりとりも多い一方で、設計担当者が書いた図面の通りに施工できるかどうか確認し、打ち合わせをすることも業務の1つです。

スケジュール管理や予算管理、報告書の作成や現場の安全、天候に進捗が左右されやすいため臨機応変な対応や職人さんやお客様とのコミュニケーションなど、多くの業務に携わるため、難しく感じることもありますが、結果的に計画通りに進めることができたときは達成感を感じることができるでしょう。

積算

積算業務とは、設計図や仕様書をもとに、工事にかかる費用や材料費を算出する業務です。お客様への予算確認のための見積提示や契約のため見積資料を作成します。

そして、建築に関する専門知識や図面の解読力、工事に必要な部材などを把握しながら行う作業のため、制作物に対する想像力などが求められる専門性の高い仕事です。

企業によっては、積算業務のみを行う職種を確立する場合や、設計業務を行う延長線上で積算業務も兼任で行う場合があるので、積算業務も経験したい場合は、選考前にチェックするべきところでもあります。

CADオペレーター

CAD(キャド)と呼ばれる設計図を作成するソフトを操作し、設計士やデザイナーの指示に従って図面の作成・修正・調整などを行います。CADオペレーターの働き方は、正社員・契約社員・派遣・パート・アルバイト・フリーランス(業務委託)など、多様なバリエーションがあります。

「ハウスメーカー」などでは独自の構造や工法、商品の入力を効率よく行うために会社独自で開発した自社CADを採用している企業も存在します。

自社CADを採用していない企業の場合、一例としてJw-cad(ジェイダブリューキャド)やAutoCAD(オートキャド)Vectorworks (ベクターワークス)等のソフトを使用しています。

インテリアコーディネーター

インテリアコーディネーターの業務内容として、主に住宅購入者の内装の仕様決めを担当します。住宅の内装・設備・建具の選定や配色、空間設計、家具のレイアウト、カラーコーディネートなどを行います。

就活生の中には「インテリアコーディネーター職」に就きたいという声も多くありますが、残念ながら「新卒の採用はほとんど無い」ことが現状です。

インテリアコーディネーターには、壁紙や家具などの色を選んでコーディネートすることや、空間をうまく使って家具などを配置するといったスキルと経験値、また、工事担当者との現場の細かい納まりについての打合せが必要になるため、資格だけでなく実務経験を求められます。

インテリアコーディネーターを配置していない企業では、営業職や設計職が仕様決めや選定のアドバイスを行います。

住宅業界で働くうえで主に必要とされる資格

今回は、職種を問わず、ハウスメーカー住宅業界で働くうえで、に必要とされる4つの資格についてご紹介します。

基本的に、これからご紹介する資格は、就職前に必要なものではありません。また、設計職における建築士を除き、入社後にも取得が義務付けられることはあまりありません。

しかし、住宅に関する知識を磨くと共に、お客様からの信頼を得ることができますし、仕事で成果を出し、キャリアアップにつなげるためにも取得が望ましい資格と言えます。

建築士

まず、設計職として活躍するには必要不可欠です。

一級建築士、二級建築士、木造建築木造建築士の3つに分かれており、建物の規模、用途、構造に応じて、取り扱うことのできる業務範囲が定められています。

建築士はクライアントの注文に応じて、建築物の安全性や快適性、構造や設備にかかわる技術を頭に入れながら仕事を行い、建築士法に基づいて建物の設計や工事監理を行います。

施工管理技士

建設業法で定められた国家資格であり、建設現場で工事の計画や管理、監督を行います。

施工管理技士には、建築、土木、電気、管工事、電気通信など、建設業種別に7種類の資格があります。それぞれ2級と1級があり、1級のほうが担えるポジションの範囲が広く、取得難易度も上になります。

1級を取得すると監理技術者や特定建設業の専任技術者、一般建設業の主任技術者として働けます。 2級の資格でも、一般建設業の専任技術者・主任技術者になることが可能です。

インテリアコーディネーター

依頼主の要望をヒアリングして、快適な住空間やインテリアプランを提案する専門職。インテリアコーディネーターは、住宅メーカーや内装業者、リフォーム業者、家具販売会社、デパートなどに所属するほか、フリーランスとして活動することもあります。

インテリアに関する幅広い知識や美的センス、創造性、交渉力やコミュニケーション能力などが求められます。

住宅建築に携わる上で、必要な知識を浅く広く学びやすく、会話の引き出しが増えるでしょう。

ファイナンシャルプランナー(FP)

お金に関する幅広い知識を活かして、個人の人生設計や資産運用に関する相談やアドバイスを行う専門家です。主に不動産、住宅ローンについての知識を役立てることができます。相談者のライフスタイルや価値観、経済環境、家族状況、収入と支出の内容などを分析し、その人に合わせた資金計画や資産設計、アドバイスを行います。

その他にも、ガス。水道・電気の設備や収納・掃除関連の民間資格なども多く存在します。

また、企業によっては従業員の資格取得が進むことにより、企業全体の生産性・業務効率を高められる効果や自己啓発促進のため、「資格支援取得制度」を導入している企業もあり、就職後のスキルアップしやすい環境を求める就活生にはチェックするべき項目です。

住宅業界の特徴と現状

次にご説明するのは、住宅市場と市場動向 についてです。網羅しているわけではありませんが、就職を考えている方は、業界の置かれている状況を理解することを念頭におき、業界研究を進めていくとよいでしょう。

住宅業界の動向と現状

国土交通省の建築着工統計調査によれば、新設住宅着工戸数は1996年に164万3266戸を記録して以降、減少傾向が続き、人口・世帯数の減少や住宅余りの状況等を理由に2009年には78万8410戸と100万戸という記録になりました。

その後は80万~90万戸台で推移してますが、高齢化の進展によって、新築や中古問わず住宅を購入する世帯主の減少や人口減社会への突入によって、新設住宅着工戸数については減少傾向が続いていくと思われます。

消費税増税や金利などの景気の影響を受けやすい

何かを消費する際にかかる税金である消費税ですが、これは住宅にも適用されます。そのため、増税前は駆け込み需要として契約数が増加しますが、それ以降は減少に向かう傾向がよく見られます。

また、住宅を購入する際に、ローンを組む人が大多数ですが、この住宅ローン金利は景気とある程度連動する性質があります。基本的には、景気が良いと金利が上がり、悪い場合は金利が下がる傾向にあります。このように、景気や住宅ローンの金利などが変動することで住宅のニーズにも変化が出てきます。

住宅の性能が強く求められる傾向にある

住宅金融支援機構の2019年度の住宅市場動向に関する調査によると、住宅事業者、一般消費者の双方において、重視するポイントとして多く挙げられた事項は、「住宅の性能」でした。また、政府の2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、住宅・建設業界では建築物の省エネ性能(ZEH※水準)の強化をしています。

少子高齢化社会の進む日本ではバリアフリー対策や災害大国である日本では耐震耐火性能の向上も求められ続け、デザインだけではなく、機能性も提供できるハウスメーカーが今後も指示されることを示しています。

※ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:Net Zero Energy House)とは、断熱性能の向上等により大幅な省エネルギーを実現させた上、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入などにより、年間のエネルギー収支をゼロ以下にすることで、カーボンニュートラルの実現に寄与する住宅である。

住宅業界の今後の展望

住宅業界の動向や現状についてご紹介しましたが、今後の展望はどのように考えられているのでしょうか。

リフォーム、リノベーションの市場が拡大する

新設住宅市場が長期的に縮小傾向である一方で、既築住宅数の増加に加え、経年劣化に伴う修繕需要や住生活空間の充実を図るようなリフォーム需要も多く見込まれます。また、新設住宅市場を事業の中心としてきた参入事業者は、これまで以上に新築市場からリフォーム市場に移行すると考えられます。

住宅金融支援機構の「2019年度の住宅市場動向に関する調査」によると、販売や仲介も含めた住宅事業者の55パーセント以上が、リフォーム及びリノベーションなど事業にについて、「既に自社で実施中と回答」しており、住宅を取り巻く市場がリフォームやリノベーショ事業に向かっていることを示しています。

また、野村総合研究所の調査によると、2030年の住宅の新築着工数は、2019年の約半分程度まで落ち込むとの予測が立てられています。また、空き家をはじめとする遊休不動産が増加しています。それに対して国土交通省は「住生活基本計画(全国計画)」(計画期間:平成28年度~平成37年度)において、

「既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、住宅ストック活用型市場への転換を加速」

との文言を掲げており、それらの状況を鑑みると、ハウスメーカーもリフォームやリノベーション事業に積極的に参入していくことが想定されます。
そのため、リノベーションに関する知識についても身に付けることで、会社の方針が変わったときでも、柔軟に対応でき、重宝される社員になれるでしょう。

参考:
野村総研 2017年6月20日https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2017/cc/0620_3

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、住宅業界の業態別の仕事内容や職種、関連する資格、住宅業界動向や現状今後の展望などについてご紹介してきました。
住宅は、人々が安全に快適に暮らすために欠かせないものであり、それを手掛け、提供する住宅業界で働くことは、やりがいや社会貢献度も大きいと言えます。

自らが仕事として「どのような働き方」で住宅を提供したいのか、また、「どのようなシーンでやりがいを感じることができるのか」をイメージしてみることで面接の企業への逆質問も思い浮かびやすいでしょう。また、じっくり考えてみることで、入社後のギャップも少なく、新たな目標設定も立てやすくなります。

また、住宅市場は常に社会の動向を反映するため、住宅や建築の知識だけではなく、経済や金融などの幅広い知識を身に付けると良いでしょう。

業界の特徴を把握しておくことで就職活動を行う際の視野も広がります。

そして、業界の正確な情報を持つことで、面接の際には明確で自信のある回答をすることができ、志望度も伝わりやすくなります。業界の置かれている状況を理解できるように積極的に業界研究を行うようにしましょう!

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ここまで住宅業界について詳しくお話ししてきましたが、住宅業界といってもハウスメーカーから工務店まで業態も様々であり、企業もは多数存在するため、ご自身で選択肢を絞りづらく、また、ご自身で選考対策をすることも大変になってきます。

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