設計事務所の就活スケジュールとは?準備すべきことや業界のトレンドも紹介!

建築業界への就職を目指す多くの学生にとって、創造性と専門性を活かせることから人気の設計事務所。都市計画から住宅設計、商業施設のデザインまで幅広いプロジェクトに携われる可能性があり、自らの手で空間を生み出す達成感を味わうことができます。
そこで今回は、設計事務所業界への就職を目指す学生に向けて、業界研究、就活スケジュール、設計事務所特有の就活の特徴を詳しくご紹介します。ぜひ就活の際の参考にしてみてください。
設計事務所業界とは?
設計事務所とは、建築物の設計を専門に行う企業のこと。住宅、商業施設、公共施設といった多様な建築物のデザインを手掛け、施主のニーズを建築という形で実現する役割を担っています。個人経営の小規模事務所から数百人規模の大手設計事務所まで幅広く存在し、それに応じて手掛けるプロジェクトの規模や内容も大きく異なります。
設計事務所業界の魅力
設計事務所業界の最大の魅力は、自分のアイデアやデザインが実際の建築物として具現化され、多くの人々に利用されることです。自らが関わった建物が街のランドマークとなったり、人々の生活を豊かにすることに直結する喜びは大きなやりがいとなります。社会に貢献している実感を得やすいでしょう。
また、住宅や商業施設、公共建築、都市開発など、幅広い分野の案件に携われるチャンスがあります。プロジェクトごとに異なる課題や要望に応える経験が積めるため、設計者として大きく成長できるでしょう。さらに、著名な建築家のもとで働ければ、世界的に注目されるプロジェクトに参加できるチャンスもあります。日々新たな課題に挑戦しながら、自己成長を実感できる点も大きな魅力です。
設計事務所の主な職種
設計事務所の主要な職種には「意匠設計」「構造設計」「設備設計」などがあり、これらが互いに密接に連携していくことで、理想的な建築物を実現していきます。
意匠設計
意匠設計は、建築物の見た目をデザインする仕事です。外観デザインや内装、レイアウト、動線計画などを考え、建築主の要望と機能性、美しさを両立させます。住宅、オフィスビル、商業施設など、用途に応じたデザイン提案が求められます。
たとえば、住宅設計では家族構成やライフスタイルに合わせた間取り提案を行い、公共施設では誰もが使いやすいユニバーサルデザインを意識することも重要です。クライアントとの打ち合わせを重ねながら、形を作り上げていきます。
構造設計
構造設計は、建物の「骨組み」を設計し、安全性や耐久性を確保する役割を担います。地震や台風といった自然災害に耐える強度を持つ構造を計算・設計するため、高度な専門知識が必要です。
たとえば高層ビルでは、風や揺れに対して建物を安定させるための「制振構造」を設計したり、住宅であれば、木造か鉄骨造かといった構造形式の選定を行ったりします。意匠設計と連携しながら、デザイン性と安全性の両立を図るのが特徴です。
設備設計
設備設計は、建物内の「ライフライン」を整える仕事です。電気設備(照明・コンセント配置)、空調設備(エアコン・換気システム)、給排水衛生設備(トイレ・キッチンの水回り)など、建物に欠かせない機能を設計します。
たとえばオフィスビルでは、快適な室内環境を保つためにエネルギー効率の良い空調システムを提案したり、病院では感染症対策を考慮した換気計画を立てたりします。利用者の快適性とエネルギー効率を両立させる工夫が求められる分野です。
大手と中小の設計事務所の違い
大手設計事務所の特徴
大手設計事務所は、規模の大きなプロジェクトに関わる機会が多いのが最大の特徴です。都市開発や大型商業施設、高層ビルといった社会的影響力が大きな建築に関わるチャンスがあります。
これらの事務所では、プロジェクト規模が非常に大きいため、専門分野に特化した分業体制が整っています。意匠設計、構造設計、設備設計など、各部門がそれぞれ専門的な知識を活かしながら作業を進める環境が整っているため、役割分担が明確であり、自分の担当業務に集中しやすい一方で、業務範囲は比較的限られることもあります。
また、教育・研修体制も充実しており、新入社員向けの研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が整っているため、設計の基礎から実務に至るまでをしっかり学ぶことができる環境が整っています。
大手の設計事務所には日建設計、三菱地所設計、日本設計、NTTファシリティーズなどが挙げられます。
中小設計事務所の特徴
中小規模の設計事務所では、さまざまなタイプのプロジェクトに携わる機会が増えます。
大手事務所と比べると大規模プロジェクトに携わることは少ないといえますが、住宅や店舗、地域施設といった比較的小規模ながら多種多様な案件に携わることができます。あまり分業されていない分、初期段階から竣工まで設計の全過程を経験できるチャンスがあり、総合的なスキルを早い段階から磨くことができます。
このような環境では、担当業務も広範囲に渡り、設計だけでなく、クライアント対応や現場監理、申請業務なども積極的に行うことができるため、実務経験が豊富になります。
また、少人数の事務所が多いため、大手よりも社員同士の距離が近くアットホームな雰囲気で働ける企業も多いでしょう。自分の意見やアイデアが直接反映される場面も多く、若手でも大きな裁量を持って仕事に取り組むことができるのも魅力。早いペースで成長を遂げたいと考える人には向いている環境と言えるでしょう。
設計事務所業界の市場動向・トレンド
近年では、環境に配慮したサステナブル建築や、省エネ性能を重視したZEB・ZEH住宅などの需要が高まっており、設計事務所に求められる専門性も多様化しています。さらに、グローバル市場をターゲットに海外展開を進める設計事務所も増加傾向にあり、今後も成長が期待できる分野です。
一方で、都市開発、再開発、高齢者施設の需要拡大など、景気変動や社会情勢に大きく影響を受けない安定したニーズも存在します。
設計事務所業界に向いている人とは?
設計事務所業界に向いているのは、クリエイティビティを持ちながらも、地道な作業をいとわない粘り強い人。設計プロセスは試行錯誤の連続であり、柔軟に考え直す姿勢も必要とされます。
また、クライアントや施工業者、社内の他部門と密に連携するため、高いコミュニケーション能力と協調性も不可欠です。さらに、社会や環境に対する感度の高い人、長時間の集中作業に耐えられる人も適性が高いといえるでしょう。

設計事務所業界の就活について
就活スケジュール
大手設計事務所の場合、大学3年生(大学院1年生)の春ごろからサマーインターンシップの募集が始まります。日建設計や日本設計といった大手では、8月〜9月にかけて実施されるインターンが選考の重要な足がかりとなるケースも多いです。インターン参加者を対象に、その後の早期選考へとつながることもあるため、できるだけ早めに準備して参加することが望ましいでしょう。
本選考のエントリー開始は、大学4年生(修士2年生)の春から開始するのが一般的。大手設計事務所では4月〜6月にかけてエントリー締切や面接が行われ、内定が出るのは6月以降という流れが多いです。
一方、中小規模の設計事務所やアトリエ系事務所では、採用情報の公開が遅く、秋頃(9月〜11月)に募集が始まるケースも少なくありません。応募タイミングを逃さないためにも、気になる事務所は採用サイトや就活サイトで定期的に情報をチェックすることが大切です。
また、設計事務所業界ではポートフォリオ提出が必須となる場合が多いため、スケジュールに余裕を持ってポートフォリオ作成を進めておく必要があります。特に中小事務所では、書類選考から面接、内定まで非常にスピーディーに進むこともあるため、事前準備が就活成功の鍵となるでしょう。
設計事務所業界のインターンシップ
設計事務所のインターンシップには、短期集中型から長期実践型までさまざまな形式があり、短期・長期どちらの場合でも設計業務を体験できるケースが多いといえます。
インターンシップでは、事務所のカルチャーや業務スタイルを実際に体感することができるため、積極的に複数参加することをおすすめします。さらに、参加経験は就活時に志望度の高さを示す強力なアピール材料にもなるので参加するとよいでしょう。
今からやるべき準備リスト
①ポートフォリオ作成
設計事務所の就活では、建築関係のほかの業界と比べてもポートフォリオのクオリティが重視されます。これまでの設計経験やクリエイティビティを示せるよう、しっかりと準備をしましょう。
面接で自分の作品について深く掘り下げた質問がされることもあるため、各作品ごとの背景や設計意図、工夫点についてきちんと説明できるよう準備が必要です。また、独自の世界観や設計哲学を持っていることもプラスに働きます。
②自己分析
設計事務所業界に限らず、就職活動を始める際に事前に自己分析に取り組みましょう。
自分がどんな価値観を持ち、どのような仕事にやりがいを感じるのかを深く理解することが重要です。たとえば、「過去にどんな経験で最も達成感を得たか」や「グループ活動での自分の役割は何だったか」を振り返ることで、自分の強みや興味が明確になります。また、アルバイトやサークル活動での経験を通して、どんな工夫をし、どのようにチームと協力したかを整理することも大切です。
さらに、適性診断やMBTIなどを活用して、自分の性格や働き方を客観的に知ることも効果的です。家族や友人に自分の長所を尋ねてみることで、新たな気づきが得られることもあります。
③業界研究
自己分析を終えた後は、業界研究に進みましょう。設計事務所業界を理解することは、志望動機を作るうえで欠かせません。業界全体や各企業の特色をしっかり把握することで、将来のキャリア設計に役立ちます。
【業界研究で押さえておきたいポイント】
・業界全体の仕組みについて
・主要な企業の強みや特徴
・業界の将来性を見据えて、今後の課題や市場の動向(人口減少、脱炭素社会など)
これらの情報は、企業の公式サイトや公式YouTubeチャンネル、就活系の動画コンテンツ、各種就活サイトなどでも調べることができます。また、コンキャリにも建築業界や設計事務所の就職活動について詳しく解説した記事が多数掲載されているので、情報収集の際に参考にしてくださいね。
④OB訪問
業界研究で得た情報をもとに、OB・OG訪問を行うことをおすすめします。実際に設計事務所で働いている人の声を聞くことで、リアルな仕事内容や社風を知ることができ、ネットや書籍では得られない貴重な情報が手に入るでしょう。
OB訪問の申し込み方法には、主に以下の方法があります。
①大学のキャリアセンターを活用する
②OB訪問アプリやマッチングサービスを使う
③知人や先輩を通じて紹介してもらう
④企業の採用担当者に直接相談する
訪問時には、一般的な企業情報ではなく、実際に働いている人ならではの「1日のスケジュール」「入社後に感じたギャップ」「社内の雰囲気」「キャリアパスの考え方」など、具体的な話を聞くようにしましょう。訪問後には感謝の気持ちを込めてお礼のメールを送ることも大切です。
⑤ES準備
自己分析や業界研究、OB訪問を通じて得た情報を活かし、エントリーシート(ES)を作成しましょう。ESでは特にほとんどの企業で聞かれる「業界への志望動機」「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」「自己PR」に力を入れましょう。
また、ESを提出する前に、信頼できる第三者にチェックしてもらうことをおすすめします。先輩や志望企業の社員にフィードバックをもらうことで、内容がより説得力を持ち、読みやすくなります。企業の求める人材像に合ったアピールができるよう、何度も推敲を重ねましょう。
⑥面接練習
ESでまとめた内容をもとに面接練習を始めましょう。
多くの企業で「業界への志望動機」「学生時代に力を入れたこと」「自己PR」を必ず質問されるため、スムーズに答えられるように練習しておくことが重要です。最初は、話す内容を簡単にメモとして整理し、スクリプトを使って練習するのが良いでしょう。慣れてきたらスクリプトなしで話してみたり、友人や先輩に面接官役をお願いして模擬面接を行うとさらに効果的です。
また、設計事務所の選考では提出したポートフォリオについての質問をされることも。各作品ごとの背景や設計意図、工夫点についてわかりやすく説明できるよう準備しておきましょう。
面接対策のなかでは逆質問への準備も忘れずにしよう
ほとんどの企業では、面接の最後に「何か質問ありますか?」と聞かれ、これを「逆質問」と言います。逆質問は企業への理解を深めるだけでなく、自分の意欲をアピールする良いチャンスなので、事前にしっかり質問することを考えておきましょう。
質問内容としては、仕事内容に関すること、働く環境に関すること、企業の将来についてなどを挙げておくと良いでしょう。ただし、企業のウェブサイトで簡単に調べられる情報については避け、事前に調査した内容を踏まえた質問をすることを心がけましょう。
また、残業や福利厚生に関する質問や、面接官が答えづらい給与や評価制度についての質問も避けた方が無難です。
まとめ
今回は、設計事務所への就職を目指す学生に向けて、就職活動を始めるタイミングやスケジュール、準備すべきポイントについてご紹介しました。
実際にこの業界を志望する多くの学生が「もっと早く準備しておけばよかった」と後悔しているケースも少なくありません。これを避けるためには、早期に動き出すことが非常に重要です。選考スケジュールを把握し、それに合わせて逆算して準備を進めていくことで、納得のいく就職活動を実現できるでしょう。
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