日本国内で半導体工場の建設が増加中!ゼネコンと半導体工場の関係性を理解しよう!

建築土木学生の就職先として、非常に人気の高いゼネコン業界。
現在、IT産業の隆盛により投資や注目が集まっている「半導体」ですが、国内で半導体工場の建設が進んでいます。
実は、その建設をゼネコン業界が担っていることをご存知でしょうか。
今回は半導体工場の建設にゼネコンが参入する背景や、半導体工場の特徴などについてご紹介します。
この記事の目次
ゼネコンの一般的な建設工事とは
ゼネコンの主な工事分野は幅広く、建築工事であればオフィスビル、商業施設、マンションや倉庫など、土木工事であれば道路やトンネル、橋などの建設工事を行っています。
また、産業・化学プラントやエネルギー関連施設の施工も請け負っています。
さらにゼネコンというと新たに建物や構造物の建設というイメージが強いですが、近年改修工事も多く行っています。
これらの工事は企画・設計から施工、アフターメンテナンスまで一貫して請け負うことが多いのが特徴でしたが、近年は施工のみ受注することが増え、JV(共同体企業)案件も増えています。規模の大きなゼネコンほど、幅広い分野での実績を持っているため、工事領域が広くなる傾向にあります。
半導体工場の建設がトレンドとなっている理由
半導体とは
最近よくニュースなどで耳にする「半導体」は主に、
・コンピュータやスマートフォンのCPU、メモリ
・AIや自動運転技術の基盤
・電気自動車(EV)の充電システム、バッテリー管理
・MRIやCTスキャンなどの診断機器
・データセンターのサーバー、ストレージ装置
・産業用ロボット
などの様々なものに使われており、今の最新技術の基盤に不可欠な素材となっています。
この数十年で様々な業界が半導体により急速に発展しており、そのニーズに併せて半導体産業全体が拡大しています。半導体製造メーカーの株価も急速に伸びており、世間でも注目を集めています。
また現在では、あらゆる電子機器に対応できるように様々な半導体が開発されています。近年、半導体の規格は限られたものではなく、企業で好きなように製作することが可能になりました。その影響により、今後も企業独自の半導体の開発、それを利用した製品開発が加速していくと予想されています。
日本での主要な半導体工場の建設状況
日本では2025年1月現在、建設予定も含めると15拠点の半導体工場が整備される予定であり、世界シェアとしては約9%程度となっています。
日本で半導体工場が建設されてきている理由
近年、台湾の半導体大手であるTSMCやソニーといった半導体メーカーの工場が、日本各地で増加しているのにはいくつかの理由があります。
まず日本の主要産業との親和性が高いためです。
日本の主要産業である自動車業界においては、電気自動車(EV)や自動運転技術が注目されており、その新技術には大量の半導体がの需要があります。TSMCの日本進出は、そのニーズを支える拠点となるため、TSMC以外にもソニーやトヨタからの出資により建設・運営された経緯があります。
その他にも、医療、通信、家電、ロボットといた分野で半導体の需要拡大しており、そのサプライチェーンの補強という意味でも国内での建設続いています。
また日本には半導体製造装置メーカーも複数あり、確かな技術力があることから、国内の半導体工場の整備に伴い、製造装置の供給がしやすいことも理由の一つと言われています。
さらに、日本政府の支援も後押しをしています。
かつて日本は半導体産業で世界トップクラスのシェアを誇っていましたが、現在は台湾のTSMCや韓国のサムスンなどが多くのシェアを持っています。
半導体産業の市場拡大もあり、日本政府としても国内での半導体産業の強化を目指して、税制優遇や研究開発の支援、土地の提供、補助金支援などを行っています。
以上の背景から日本での半導体工場の建設が進んできている状況となっています。
半導体工場の建設
ここからは半導体工場について建設という観点から、その特徴や建設を担うゼネコンとの関係性について解説していきます。
半導体工場はゼネコンによって建設される
高性能な半導体をつくるためには高性能な機械や工場が必要になります。半導体製作は分業化が進んでおり、半導体そのものをつくる精密な機械やパーツをつくる工場の建設が増えています。
半導体工場は通常の工場と規模や性能が異なり、工場で働く人の居住環境を整えるために工場周辺の住宅地や駅の再開発が行われるケースもあります。
半導体工場ができる地域は経済的な意味でも成長が見込まれるので半導体工場という存在を活かしたまちづくりが求められます。そのような高度な工場建設、まちづくりを行っているのが高い建設技術を持つゼネコンになります。
半導体工場を施工するゼネコンは工場だけでなく、周辺の商業施設やマンションなどの建設も連続的に要求されるので、半導体工場を初めとした建設の連鎖が起こるとされています。
工場建築の特徴
工場には様々な種類・規模がありますが、一般的な工場の多くは鉄骨造で建設されます。面積が大きく、工期が短く、比較的建設地の面積に余裕のある地方で建てられる事が特徴的です。
地方や僻地を建設地とする場合には、建設地近辺に工事関係者のための仮設の宿舎や借り上げの社宅が必要になります。
半導体工場の場合は規模が大きいため、作業員の数も一日100人以上となることが予想されます。100人以上の作業員の宿舎を用意し、働く人の環境を整備することもゼネコンの役割となります。
工事の面では施工箇所によって施工のやりやすさに影響が出てきます。
例えば、1箇所のスラブのコンクリートを打設する場合を想定しても、コンクリートプラント(生コン工場)が建設地の近辺に無い場合、コンクリート打ち継ぎ時間や手配の管理など施工の難易度が高くなります。また、資材を搬入する場合でも工場から運送することに時間がかかるので、調達を早めに行うなどの時間管理を徹底し、工事を工程通りに進めることが要求されます。
大規模な工場によくある要件として複数の棟に分けて建物が要求されることがあります。この場合、立地条件によって、どの棟から施工すれば効率的に工事が進むかをゼネコン(施工者)が検討し、工事を進めなければなりません。
工場の建物構成としては、広い作業スペースと高い天井を持つ生産フロア、原材料や完成品を保管する倉庫エリア、事務所スペースと会議室、従業員用の休憩室やロッカールームなどがあります。また、用途によって異なる製造ラインや組立ライン、品質管理、機械管理のエリアなどが必要になります。多くの従業員の安全性や工事による地域の人への影響が少ないように安全面や環境面の配慮も必要になります。
半導体工場の特徴
半導体工場(ファブ)の建設には特殊な要件があり、以下のような特徴があります。
1. クリーンルーム
半導体部品製造には超微細な加工を行うため、空気中の微粒子を極限まで除去したクリーンルームが必要になります。クリーンルームは手術室のようなイメージです。温度・湿度の厳密な管理が必要で振動や静電気を防ぐための特殊な床材や壁材を施工します。機械が設置される部屋のほとんどがクリーンルームになるとされています。
クリーンルームに重要な要素として、製造する部品に埃やゴミが入らない、埃が発生しない清潔な環境が求められます。そのため、天井の配線の隙間、壁のネジ穴・目地などあらゆる箇所が塞がれます。また、床には帯電対策を施します。これはクリーンルームで働く人が機械の電気により帯電しないようにするため、静電気による埃を除去できるようにするためです。床材には長尺シートが使用されたり、塗り床仕様になり、光沢のある仕上げになります。
クリーンルームを有する工場の施工は難易度が高く、一般の工場に比べて工期が長くなる傾向にあります。その理由として、クリーンルームなどの特殊な部屋が多くなると業者の数が増えるためです。クリーンルームのための設備工事が通常より多くなり、内装工事の床仕上げは3層以上になり手間がかかることや壁を全て耐火仕様にするため必要な業者数が多くなります。
2. 設備工事の重要性
半導体工場を施工する上で最も重要になるのは設備工事です。
大量の設備機械を設置するための躯体として屋上や室内に大量の基礎が必要になります。また、大規模な建物に安定した空調・電気・熱源システム環境を形成するために躯体工事や内装工事が終了しても、屋上や周囲の土地で設備環境をつくるための工事が行われます。
特に空調工事の難易度を上げる要因として半導体工場のような建物は窓が少ないことです。窓が少ないということは施工中も換気しながら作業することが不可能になります。防水工事や設備工事では特殊な薬剤を使用するため換気が義務化されている工事もあります。屋上まで換気ルートを確保するのか、壁に穴を開けて換気をするのかなど工事の難しさが工程に影響を及ぼします。
設備工事は設備専門の施工業者(サブコン)が担当することが多く、別途工事になることもあります。別途工事は原則、施工業者であるゼネコンが管理する必要がないです。そのため、工事を工程通りに完遂するにはゼネコンとサブコンの連携した工事管理が必要になります。
面積や規模が大きい半導体工場の空調や電気供給を整備するためには、大規模な設備工事が必要となるため通常の工場よりもあと施工が多くなります。半導体工場の設備工事は建築工事と同じ規模で行われることも特徴的です。
3. 立地条件
日本で半導体を安定して供給するためには地震や自然災害のリスクを回避し、想定した上で建設する必要があります。ゼネコンには耐震技術を駆使し、機械の転倒防止やインフラへの影響を極限に少なくする事が求められます。
耐震対策として基礎に免震基礎が採用されることが多くあります。免震構造は建物を地盤から絶縁し、地震の揺れを大幅に低減する構造システムです。大量の基礎の下に設置された免震装置により地震の揺れに対応し建物を壊れにくくします。
また、半導体工場は輸出する際にコストを抑えるために空港や港へのアクセスなど、交通条件が良い立地が好まれます。海や川に近い立地の場合、地盤沈下に対処するために大規模な地盤改良が行われることもあります。川の氾濫や津波などの水害対策として、盛土があります。大規模な面積の土地を高くするため、土木工事として長い期間盛土が行われ盛土の上に建物が建設されます。
上記の工場建築の特徴でも述べましたが、工場が地方や僻地に建設される場合、コンクリートが確保しにくいなどの悪条件があります。この悪条件への対応としてPC(プレストレストコンクリート)があります。PCはコンクリートの強度を高めることや大スパンの建物に採用されることが多いことが特徴ですが、一番の特徴は工場で予めコンクリート躯体を製造することができる点です。製造された躯体を現場に運ぶだけなので、現場で生コンを確保する必要がなく、工期を短縮することができます。
このように立地条件により特殊な条件が発生するため、半導体工場の建設には巨額の投資と綿密な計画が必要です。また、一度建設すると移転が難しいため、立地選定が特に重要になります。
今後の見通し
今後、AI技術や半導体の需要増加により半導体関連の工場の建設が増えていくと考えられます。既存の工場の建設技術を活用し、半導体工場の施工がされます。
工期を短縮し、新たな製品開発に対応していくためにゼネコンが大きく半導体業界に関わり、建設技術が進歩していくと予想されます。半導体工場に巨額な投資が行われ、建設されていく中で、ゼネコン業界の利益が増加すると、大企業だけでなく中小企業のゼネコンの大幅な技術進歩が期待されます。
地方では少子高齢化による大規模な商業施設や開発が減少し、改修工事が増加傾向にあります。そんな中、地方に半導体工場の新設が増加すれば、半導体工場を通してまちづくりが活性化しゼネコン及び業界の利益が増えることに繋がると考えられます。
1つの半導体工場を建設すると、次の工場の受注や関連施設の建設も受注することに繋がります。こうして、工場建設の連鎖が今後日本で起きていくのではないか。それに伴いゼネコン業界もAIの導入やDX化などの技術革新が進んでいくのではないかと考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
半導体は身近な存在であり、トレンドとなっている半導体工場とゼネコンの関係を解説しました。ゼネコンに就職した際には、あなたも未来の日本を支える工場の建設に携わることが大いに考えられます。
主要な企業はAI半導体の開発を重要な戦略と位置付けており、今後も技術革新と市場拡大が続くと予想されます。世間の情報を取り入れ、就職活動に活用していきましょう。
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