空港建設とは?スケールの大きなプロジェクトを支える仕事をわかりやすく解説!

2025年11月5日 更新

観光・ビジネス・物流など、あらゆる経済活動の起点となる存在の空港 ですが、その裏側には、地域の発展や国際交流を支える大規模な建設プロジェクトがあります。

空港建設は、単なる建物づくりではなく、滑走路やターミナル、駐車場、通信・電力設備などを整備する“街づくり”に近いスケールの仕事です。

土木・建築・設備・電気・ICTといった多様な分野の技術者がチームを組み、何年もかけてひとつの巨大プロジェクトを形にしていきます。

今回は、空港ができるまでの流れと、関わる業界・職種についてわかりやすく紹介していきます!

空港建設の全体像

空港建設は、「街をまるごとつくる」ことに近いスケールの大規模プロジェクトです。

滑走路や誘導路といった航空機の運航を支えるインフラだけでなく、旅客が利用するターミナルビルや駐車場、貨物エリア、整備場など、さまざまな施設を同時に整備していきます。

また、国や自治体、航空会社、建設会社、設計事務所など、多くの関係者が連携しながら進めるのも大きな特徴です。

一つの建物をつくるのではなく、「交通」「物流」「商業」「観光」など多様な機能を複合的に備えた“街づくり”を行うイメージです。

そのため、設計や施工の技術力だけでなく、安全性・快適性・機能性・環境配慮といった要素を、高いレベルで実現することが求められます。

空港建設は、社会インフラの中でも特にスケールが大きく、チームワークと総合力が問われる仕事といえるでしょう。

空港建設にはどんな分野がある?

空港建設のような、数年がかりで進む大規模プロジェクトでは、土木・建築・設備・ICTなど、さまざまな分野の技術者が連携しながら、ひとつの「都市」をつくるように空港を形にしていきます。

滑走路やターミナルビルといった目に見える施設はもちろん、その裏で機能する電気・通信・設備システムまでを一体的に整備していくのが特徴です。

今回は、その中でも建築土木の分野に焦点を当ててご紹介します。

【土木】滑走路・誘導路の整備

空港建設における土木分野は、航空機の運航に欠かせない滑走路や誘導路などを整備する重要な役割を担います。

滑走路は、数千メートルに及ぶ長大な構造物であり、航空機の重量に耐えられるよう地盤の改良や高精度のコンクリート舗装が求められます。

誘導路やエプロンでは、航空機の移動や駐機のしやすさ、安全性なども考慮して設計・施工が行われます。

施工管理技術者は、測量データやICT施工機器、ドローンなどの技術を活用しながら、品質・工程・安全を管理します。天候や夜間作業などの制約もある中で、関係者と連携して着実に工事を進めることが求められます。

【建築】ターミナルビル・格納庫・駐車場などの建設

建築分野は、利用者や職員が利用するターミナルビルや、航空機を整備する格納庫、立体駐車場などの施設を担当します。

ターミナルビルは、旅客導線やセキュリティ、快適性を両立させる複雑な建物であり、構造・意匠・設備の各専門分野が連携して設計・施工を行います。また、耐震性や防火性能など、安全面にも厳しい基準が設けられています。

施工管理では、工期が長期にわたる中で多くの協力会社をまとめ、設計意図を正確に形にするマネジメント能力が求められます。

【設備・電気】照明・空調・電力・通信システムの整備

設備分野では、空港の機能を支える電気・空調・給排水・防災・通信など、多岐にわたるシステムを整備します。

滑走路照明や誘導灯、ターミナル内の空調・電力供給、非常用電源や監視カメラなど、運航の安全と快適性を維持する設備が対象です。

設計・施工・保守のすべてにおいて、信頼性と安定稼働が求められる点が特徴です。

施工管理者は、電気・機械の専門知識を活かして、他分野と調整しながら効率的な施工を進めます。

【情報・通信】航空機の安全運航を支えるICTシステム構築

近年では、ICT(情報通信技術)の活用も進んでいます。

BIM/CIM(建築・土木の3Dモデル活用)やドローン測量、3Dレーザースキャナ、AIによる工程管理など、デジタル技術が施工現場や維持管理に導入されています。

これにより、施工の精度向上や作業効率化、安全性の確保が可能になっています。また、完成後の空港運用でも、IoTセンサーを活用した設備管理や、データ連携によるスマート空港化の取り組みが広がっています。

ICT(情報通信技術)に興味のある方は、以下の記事もご覧ください!
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空港建設は、土木・建築・設備・ICTといった多様な専門が連携する“大規模プロジェクト”です。

安全で快適、かつ環境にも配慮した空港を実現するために、それぞれの分野がチームとして力を合わせ、ひとつの“空の玄関口”をつくり上げています。

空港ができるまでの流れと関わる業界・企業

空港は、行政や設計事務所、ゼネコン、設備会社、空港運営会社など、さまざまな立場の専門家が連携してつくられます。

ここでは、フローチャートの5つの段階に沿って、それぞれの業界・企業の役割を見ていきましょう。

計画・調査(行政・コンサル)

最初のステップは、「どこに、どんな空港をつくるか」を決める段階です。
国土交通省や地方自治体といった行政が中心となり、立地選定や予算の検討、環境影響評価(環境アセスメント)を行います。

この段階では、建設コンサルタントも重要な役割を担います。
日本工営、パシフィックコンサルタンツなどのコンサル企業が、需要予測や地盤・環境調査、基本設計支援などを担当し、技術的な検討を行います。

空港づくりの“設計図”を描くための準備段階です。

設計(設計事務所・コンサル)

次に、具体的な滑走路やターミナルの設計に進みます。設計事務所が中心となり、空港全体のレイアウトや建物構造、旅客動線などを詳細に検討します。

コンサル会社も引き続き、構造解析やコスト試算、施工時の工程計画など、技術的な支援を行います。環境基準や安全基準を満たすための専門知識が求められる段階です。

また、設計・施工を一括で行うプロジェクト(デザインビルド方式)では、ゼネコンやサブコンも設計段階から参加します。

この場合、ゼネコンがプロジェクト全体を統括し、サブコン(専門工事会社)と協働して、設計段階から施工性・コスト・維持管理を見据えた最適な計画を立てます。

設計と施工が連携することで、工期短縮や品質確保、コスト最適化を図ることができます。

※一貫施工方式(デザインビルド方式)とは?:設計と施工を一体的に発注することで、工期の短縮やコスト削減を図る手法。空港のような大規模・複雑なプロジェクトでは、近年この方式の採用が増えています。

施工(ゼネコン・サブコン)

設計が固まると、実際に空港を“つくる”段階に入ります。

建設:空港の「かたち」をつくる
大成建設・大林組・鹿島建設・清水建設などのゼネコン(総合建設会社)が中心となり、滑走路・誘導路・ターミナルビルなどの建設を担当します。

巨大で高精度な構造物をつくるために、地盤改良・耐震設計・コンクリート舗装などの高度な技術が求められます。

設備:空港の「機能」を支える
高砂熱学工業・関電工などのサブコン(設備会社)は、空港の空調・電気・通信といった日々の運用を支える設備システムの部分を整備します。

広大なターミナルを快適に保つ空調システムや、夜間の滑走路を照らす照明設備など、空港全体の安全性と快適性を支える重要な役割を担います。

試験・検査(行政・施工企業)

施設が完成すると、安全に運用できるかどうかを確認する「試験」や「検査」が行われます。

国土交通省の航空局などの行政機関が中心となり、滑走路や照明、通信設備などが安全基準を満たしているかを総合的にチェックします。

施工を担当した企業やエンジニアも立ち会い、設備の動作確認や最終調整、品質検査などに携わります。

行政と技術者が連携し、“安全に使える空港”であることを確かめる最終工程です。

運用・管理(空港運営会社・行政)

完成した空港は、空港運営会社が実際に運営します。

代表的な運営会社には、成田国際空港株式会社(NAA)、関西エアポート株式会社、中部国際空港株式会社などがあります。

運営会社の主な仕事は、施設の維持管理やテナント運営、旅客サービス、航空会社との調整など、多岐にわたります。

一方、行政機関は航空法に基づき、運営の監督や安全指導を行い、空港の安全でスムーズな運営を支えています。

空港は一社だけでつくることはできません。建設段階から運営まで、行政・コンサル・設計・施工・運営の多くの関係者が連携して進める、大規模なプロジェクトです。

空港建設の事例

空港建設は、単なる建物づくりではなく、滑走路やターミナル、駐車場、通信・電力設備などを整備する“街づくり”に近いスケールの大規模プロジェクトです。

土木・建築・設備・ICTなど多様な分野の技術者がチームを組み、何年もかけて完成させます。ここでは、日本の代表的な空港とその特徴、仕事の内容を紹介します。

成田空港 第3ターミナル

成田空港の第3ターミナルは、LCC(格安航空会社)向けに設計されたターミナルで、短時間で多くの航空機を運航できる効率的な施設が特徴です。

このプロジェクトでは、土木分野が滑走路や誘導路の整備を担当し、LCCの運航を支えるインフラ基盤を構築しました。建築分野では、旅客の利便性を高めるターミナルビルの設計・施工を行い、快適で使いやすい施設を実現しました。

また、設備・ICT分野では、空調や照明、情報システムの整備を通じて、安全で快適な運用を支えています。

これらの取り組みにより、LCCの運航を効率的に支援できる空港が完成し、航空ネットワークの拡大や、多くの人がより便利に旅行できる環境の実現につながりました。

関西空港 第2ターミナル

関西空港の第2ターミナルは、LCC(格安航空会社)専用ターミナルとして建設され、運営効率や省エネに配慮した施設設計が特徴です。

プロジェクトでは、土木分野が駐機場やアクセス道路の整備を担当し、安全でスムーズな航空機運航を支えました。建築分野では、省エネ設計を取り入れたターミナルビルを施工し、利用者が快適に過ごせる空間を提供しました。

また、設備・ICT分野では、通信設備や空調・照明システムを整備し、ターミナル全体の安全性と快適性を維持しています。

これにより、LCCの就航が拡大し、航空運賃の低廉化と利便性の向上が実現され、国内外からの旅行需要の増加につながりました。

中部国際空港(セントレア)

中部国際空港は、愛知県沖の人工島に建設された海上空港で、地域の物流や経済活性化に大きく貢献することを目的としています。

このプロジェクトでは、土木分野が海上埋め立てによる滑走路・誘導路の建設を担当し、航空機の安全運航を支える基盤を整備しました。建築分野では、旅客ターミナルビルや駐車場の設計・施工を行い、利用者にとって快適で機能的な空間を実現しました。

さらに、設備・ICT分野では、空調・電力・通信設備の整備を通じて、空港全体の安全性と利便性を確保しています。

この取り組みにより、地域経済の発展や国内外物流拠点の形成が進み、航空ネットワークの強化と旅客サービス向上に貢献しています。

空港建設のトレンドと将来性

近年、空港建設では単に施設を整備するだけでなく、持続可能性デジタル化、災害対応、海外展開といった新しい視点が求められています。

まず、持続可能な空港開発の取り組みです。再生可能エネルギーの導入や、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化されたターミナルの建設など、環境に配慮した施設づくりが進んでいます。これにより、運営コストの削減だけでなく、地球温暖化対策にも貢献しています。

次に、スマート空港化の動きです。AIやIoTを活用した自動運転バスや荷物搬送システムなど、デジタル技術を活用することで、空港運営の効率化や旅客の利便性向上が実現しています。ICT技術者や施工管理者にとって、新しい技術を活かすチャンスが広がる分野です。

さらに、災害対応力の強化も重要です。BCP(事業継続計画)に基づき、地震や台風などの自然災害に対応できる設計が求められています。安全性と信頼性を両立させるため、構造設計や設備設計の高度な技術が活かされます。

加えて、海外展開も拡大しています。日本の建設企業がアジアや中東で空港建設プロジェクトを手がけるケースが増えており、国際的な技術力やプロジェクトマネジメント力が求められています。

このように、空港建設は今後も環境・技術・安全・国際性をキーワードに進化しており、学生にとっては社会貢献性や技術力を実感できるフィールドと言えるでしょう。

まとめ

空港建設は、単なる建物づくりではなく、国や地域の顔をつくる大規模プロジェクトです。滑走路やターミナル、通信・電力設備など、多様な施設を整備するために、土木・建築・設備・ICTなど、多くの専門職がチームで協力しながら働きます。

この仕事の魅力は、自分の手がけた成果が社会や地域の生活に直接つながることです。旅客が安心して空を利用できる環境をつくったり、地域経済を活性化させたり、目に見える形で社会に貢献できるやりがいがあります。

新卒であっても、大規模プロジェクトの一員として学びながら成長できる貴重なフィールドです。

空港建設に少しでも興味を持ったなら、まずは情報を集めて、積極的に業界や企業について理解を深めてみましょう。きっと、自分の可能性を広げるチャンスにつながります。

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