理想的な住宅を提案する 「ハウスメーカーの施工管理職」の仕事内容や魅力とは?

2025年1月13日 更新

ハウスメーカーとは、住宅の設計・施工・販売を行う企業であり、自社ブランドを持ち、全国規模で営業していることが特徴として挙げられます。

近所で見かける住宅展示場やテレビCM、チラシなどで見かけることもあり、馴染みのある方が多いと思います。

そんなハウスメーカーの職種は大きく分けて「営業」「設計」「施工管理」と3つの職種があります。

なかでも住宅の建設現場の指揮をとり、円滑な工事を管理する施工管理職は、どういった仕事をしているのでしょうか?

今回はハウスメーカーの施工管理職の仕事内容や魅力についてご紹介します。
建築学を専攻している方々で、住宅建築が好きで実際に現場で活躍したいと思っている方は多いのではないでしょうか。住宅が建てられるイメージを持ち、働くイメージを持つためにもぜひ参考にしてみて下さい。

ハウスメーカーとは?

まずハウスメーカーの業態について簡単にご紹介します。

ハウスメーカーとは、全国規模または広範囲のエリアで事業展開をしています。住宅建築の企画、設計、施工のすべて行う「自社一貫施工」を行う会社では、施工を協力会社に依頼することで、同じ業者が工事を行うため安定した品質の商品を提供できます。 

蓄積した技術を基に「自社独自の構造・工法などの商品開発」を行い高い技術力を武器としています。また、多くの会社では自社工場で部材を生産し、「設計から施工までをシステム化」しているため、短工期かつ安定した品質を実現しています。

大手企業ではグループ会社と連携し、引渡し後の定期点検やアフターサービス、リフォームを自社グループで行う場合もあります。

会社によって手がける規模も変わり、注文住宅、分譲住宅、賃貸住宅などの企画、設計、施工も行います。

そのなかで今回は施工管理職についてご紹介しますが、
設計職についてもこちらでご紹介しているので、是非参考にしてみてください。

ハウスメーカーの「施工管理職」について

仕事内容

ハウスメーカーの施工管理職は、住宅の建設工事の現場に関わる業者・職人を指揮・監督し、工事全体の品質や進捗を管理する仕事です。

簡潔にいうと、住宅が建てられる過程を逐一確認し、工事現場の安全に配慮しながら、正確かつ円滑に工事が進むように管理します。

主に「工程」「安全」「原価」「品質」「環境」の5つの現場の管理を行います。

「工程管理」とは、予定されている工期を守るため、工事のスケジュール管理を行うことです。

「安全管理」とは、現場での工事が安全に行われるよう、設備の整備や作業員への安全指導などを行います。

「原価管理」とは、予算内で工事を完成させられるよう、人件費や材料費を計算して管理することです。

「品質管理」とは、成品が設計図や仕様書に記載された品質基準を満たすように管理することで、品質管理では建物の強度や密度も管理対象となります。

「環境管理」とは、自然環境、周辺環境、職場環境の管理を指します。自然環境においては工事により周辺の生態系などへの影響がないように配慮し、周辺環境においては住宅街などでは特に、周辺の街への騒音などの影響を緩和し、職場環境においては従業員が働きやすいように配慮を行うこととされています。

戸建て住宅の完成までの流れ

⓪着工前
建築物の用途や機能、設計図面の確認、施工条件の確認や施工に必要な資材や機材、人員の確保を行います。

①着工(工事を始める)(約1ヵ月)
(地盤調査、地縄はり・墨だし、地鎮祭、地盤改良工事、遣り方、水道工事等)

②基礎工事(約1ヵ月)
(配筋検査、土間コンクリート、型枠、仮設足場、組立等)

③上棟式(2~3週間)
(屋根、床・壁・サッシ取付、電気、断熱、外装材等)

④仕上げ(約1ヵ月)
(フローリング、タイル、造作・建具、クロス張り、照明・電気・設備、外構等)

⑤完成・引き渡し(1~2週間)
(竣工検査、内覧会、引き渡し)

※工事現場の管理だけでなく、書類作成業務も担当します。
例:施工計画書、資材の発注書、工程表、工事の進捗状況報告書、 報告書類

主な施工管理に絡む業務の例

これからご紹介する業務の例は、就職活動時に頭に入れていく必要はありませんが、施工管理職がどのようなシーンで活躍するのかイメージを持つためにも、参考にしてみてください。

①地縄張り・墨だし

敷地内に建物の位置を印し、図面上だけでは把握しにくい位置関係を明確にするために、作業場所の水平位置や中心位置となる基準線を書き出します。現場の職人さんと図面を確認しながら正しい寸法で配置できているかなどを確認します。

②地鎮祭

建物の新築の際に、土地の神様(氏神様)に工事の安全と無事な完成を祈願する儀式を行います。自分の担当する現場の近隣住民への挨拶回りも行います。騒音を伴う工事が始まることを報告し、お詫びの気持ちを伝えます。

③遣り方

基礎工事の前に、柱や壁などの中心線や水平線を設定するために行います。実際の建築物の位置・高さ・水平の基準となる重要な工程であり、杭を一つ一つ確認し、正確性が問われる作業になります。

④配筋検査

設計図面に基づいて配置された鉄筋の位置や本数、取り付け方法があっているかを確認する検査を行います。
問題がなければコンクリート打設を行います。最終的に目視で確認ができなくなってしまう箇所のため、検査項目を書面や写真で残しておく必要があります。

⑤上棟式~仕上げ工事

現場の工事担当からの質問に対応します。
図面と現場を見比べて、正確な設備や品番の部材が取り付けられているか、図面上だけでは分からない部材の細かな納まりなど、工事の中で発生する問題や職人さんからの臨機応変に対応していきます。

⑥竣工検査

簡潔にいうと、「お客様に引き渡し前の最終確認」を行います。
この検査では、お客様立会いの下、施工管理担当を含む工事関係者で、実際の家が設計図面どおりに施工されているか、不具合が生じていないか、設備機器の動作確認などを行います。

⑦引き渡し
全ての検査が終了し、工事用のキーから施主専用のキーに変更することで、お客様へ引き渡し完了です。

現場の職人の方々とのやりとりも多い一方で、設計担当者が書いた図面の通りに施工できるかどうか確認し、打ち合わせをすることも大切です。

ハウスメーカー施工管理職の魅力とは

施工管理職の仕事は、住宅の建設工事の現場に関わる業者・職人を指揮・監督し、工事全体の品質や進捗を管理することです。

建築物は、施工管理だけでは完成しません。もちろん職人さんだけで作られるものではなく、現場の職人や施工管理、関係者で協力し合って施工します。その仕事の中で工事現場の職人さんから信頼してもらえることは仕事を認めてもらえることと同じであり、やりがいに繋がります。

工事のスケジュール管理や予算管理、報告書の作成や現場の安全、天候に進捗が左右されやすいため臨機応変な対応や職人さんやお客様とのコミュニケーションなど、幅広い業務に携わり、更に専門性も高く難しく感じることもありますが、結果的に工事が順調に進み、予定通り工事が完了したときは大きな達成感を感じることができるでしょう。

そして、住宅の施工管理職は、同時に多くの現場を見て経験を積むことができ、業務上のミスやトラブルを防げる危機感知能力を身に付け、進捗管理を効率化できるスキルを伸ばすことができます。

住宅の施工管理職は多くの現場を掛け持ちすることがほとんどであるため、色々な場面に遭遇することも多く、施工方法や手順に対する知識も得ることができ、経験を積みやすいため、住宅の施工についての知識を深めたい方には探求心が刺激される環境でしょう。

ハウスメーカー施工管理職に向いている人

ハウスメーカーの施工管理職は、常に現場や職人さんと向き合い、現場を取りまとめる仕事です。工事現場は危険が付きまとうため、安全性に対しての危機感知能力も大切です。また、図面を読み、工程の理解を行うことで先読みした行動ができるようになります。

特に建物を扱う建築業界では、一つの工事を行うにも多岐にわたる専門業者の方々と仕事をしていきます。そのため、より幅広いスキルが求められてきます。

《ハウスメーカーの施工管理職に向いている人の特徴》

・建築、住宅、現場を見ることが好き
・住宅の技術や施工に関することに興味がある 
・大規模な建築現場で臨場感を持ちながら統括がしたい
・忍耐力がある
・様々な場面で臨機応変な対応ができる
・状況分析が得意で、問題解決力がある
・知識を蓄えることが好き(知的好奇心旺盛)
・先読み行動が得意
・課題やスケジュールを計画的に進められる

自分の持つ強みを理解し、知識の引き出しを多く持っておくことで、実際の業務に応用できると思いますので、就活の自己PRの際に、上記を意識すると良いでしょう。


各ハウスメーカーの技術力の差別化の1つである「工法」の違いとは?

ハウスメーカーの特徴として「自社独自の構造・工法などの商品開発」を武器としていることが特徴に挙げられるため、各ハウスメーカーの工法などを知ることでも、企業研究を深めることができます。

住宅の構造には「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3種類があり、住宅を建てる方法である”工法”にも種類が存在します。

各ハウスメーカーは特定の工法に特化しています.。工法によって、間取りの自由度耐久性耐震性耐火性工期コストなどが異なります。

木造


「在来軸組み工法」
日本で古くから用いられていた伝統工法で、柱と梁によって建物を支える特徴があります。

「枠組壁工法」(2×4工法)
規格木材でつくられた枠組みと壁・床・屋根などの構造用合板を打ち付けて、建物全体の荷重を箱のような構造で支える工法のことです。

「木質パネル工法」
住宅の床・壁などの構造体をパネルとして、工場で生産したものを現場に持ち込んで組み立てるプレハブ工法の一種です。

鉄骨造(S)

建物の骨組み(柱や梁など)に鉄骨を使用する構造や工法のことです。

「軽量鉄骨造」
鋼材の厚みが6㎜未満のものを用いる工法であり、2階建てまでのアパートや戸建住宅に使われています。

「重量鉄骨造」
鋼材の厚みが6㎜以上のものを用いる工法であり、3階建て以上の戸建住宅などに使われます。

鉄筋コンクリート造(RC)


柱や梁、床、壁が鉄筋コンクリートで構成されていて、鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めたものを用いて建物をつくります。

柱と梁で建物を支えるラーメン構造と、柱や梁の代わりに壁で建物を支える壁工法があります。

ハウスメーカーの施工管理職に求められる資格は?

施工管理技士

建設業法で定められた国家資格であり、建設現場で工事の計画や管理、監督を行います。

施工管理技士には、建築、土木、電気、管工事、電気通信など、建設業種別に7種類の資格があります。それぞれ2級と1級があり、1級のほうが担えるポジションの範囲が広く、取得難易度も上になります。

1級を取得すると監理技術者や特定建設業の専任技術者、一般建設業の主任技術者として働けます。そして、管理できる工事規模の上限がないため、大規模工事を扱う現場監督になることができます。

2級の資格でも、一般建設業の専任技術者・主任技術者になることが可能です。資格を取得していると、担当できる施工の規模が大きくなったり、重要なポストに就けたりします。そのため、資格取得はスキルアップや昇給のチャンスにもなります。

建築士

建築士を取得することは、施工管理の仕事をするうえで必須ではありませんが、建設業に携わるには有利な資格です。

基本的に建築士はクライアントの注文に応じて、建築物の安全性や快適性、構造や設備にかかわる技術を頭に入れながら仕事を行い、建築士法に基づいて建物の設計や工事監理を行います。

一級建築士、二級建築士、木造建築士の3つに分かれており、建物の規模、用途、構造に応じて、取り扱うことのできる業務範囲が定められています。

【種別の業務範囲の比較】

一級建築士>二級建築士>木造建築士

「一級建築士」

国土交通大臣の免許を受けており、一級建築士の名称を用いて、複雑・高度な技術を要するすべての建築物の設計・工事監理等を行うことができます。(ただし、一定規模以上の構造設計や設備設計をおこなうには、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士証の交付を受けている者の関与が必要になります。)

一級建築士しか設計・工事監理できない建築物

(例)
・高さが13m又は軒の高さが9mを超えるもの
・鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が300㎡を超えるもの

「二級建築士」

都道府県知事の免許を受けており、二級建築士の名称を用いて、設計・工事監理等の業務を行うことができます。

一級・ 二級建築士しか設計・工事監理できない建築物
(例)
・鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が30㎡を超え300㎡以内のもの

「木造建築士」

都道府県知事の免許を受けており 、木造建築士の名称を用いて、木造の建築物の設計・工事監理等の業務を行うことができます。

一級・二級・ 木造建築士のいずれもが設計・工事監理できる建築物
(例)
・2階建までの木造建築物で延べ面積が100㎡を超え300㎡以内のもの

引用:国土交通省 住宅局(平成31年3月14日):https://www.mlit.go.jp/common/001279403.pdf

まとめ

今回は、ハウスメーカーの「施工管理職」に焦点を当てて仕事内容ややりがい、必要な資格などをご紹介しました。

ハウスメーカーの施工管理職は、お客様の住宅が建てられる過程を逐一確認し、工事現場の安全に配慮しながら、正確かつ円滑に工事が進むように管理し、建設工事の現場に関わる業者・職人を指揮監督し、工事全体の品質や進捗を管理する仕事です。

ハウスメーカーの施工管理職を目指すにあたり、各ハウスメーカーの企業研究が大切です。どのような働き方が自分自身に向いているのかをしっかりと分析をし、働くイメージを持ちながら就職活動を進めていきましょう。

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