建築学生が就活の際に知っておくべきゼネコン業界における「業界用語辞典」

就職活動において大切なことのひとつに、その業界で使われている「言葉」や「用語」を知ることがあります。
特に建築・土木学生から人気の就職先であるゼネコン業界においては、現場や社内でさまざまな専門用語が当たり前のように飛び交っています。
インターンシップや本選考において、あなたの面接をする社員も当然に業界用語を知っており、面接などにおいて、適した言葉や用語を織り交ぜることで、あなたの志望動機を明瞭にしっかりと伝えられるでしょう。
用語を知っているだけのアピールには意味はありませんが、就活に役立つ業界用語をしっかり押さえ、知識面で他の学生との差を作っていきましょう。
この記事の目次
建設業界とゼネコン業界の概要
建設業界とは、建物やインフラを造る産業全般を指します。建築物の設計・施工を行う建築業、道路や橋梁、ダムといった社会基盤を築く土木業、さらに設備工事業など、多岐にわたる分野が存在しています。国土の発展、都市の再開発、災害復興など、日本社会を支える非常に重要な役割を果たしています。
その中でも、ゼネコン(General Contractor)と呼ばれる企業群は、建設工事を総合的に請け負い、設計・施工・工程管理・品質管理などをトータルでマネジメントする存在です。
スーパーゼネコンと呼ばれる大手企業(例:大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店)から、地域密着型の中堅ゼネコンまで、規模や強みもさまざまです。
学生の皆さんが目指すフィールドは、このゼネコンが中心となる場合が多いでしょう。
なぜ就活の際に業界用語を知っておくべきか
建設業界は、独自の専門用語が飛び交う世界です。就職活動の場では、企業説明会や面接で「当たり前のように」業界用語が使われることも珍しくありません。
インターンや面接の場で他の学生も知っているような話題に対して「それはどういう意味ですか?」と聞き返してしまうと、企業側に「この学生は業界研究が足りていないな」と見なされてしまうリスクがあります。
逆に、主要な業界用語を理解し、必要に応じて会話に織り交ぜることができれば、
「この学生は本気で業界を志望している」
「現場に出てもスムーズに馴染めそうだ」
といった好印象を持ってもらうことができるでしょう。
特に建設業界は「現場重視」の文化が根強く、「机上の空論」よりも「実際に理解しているか」が問われる場面が多いため、基本用語を押さえておくことは大きな武器になるのです。
基本的な業界用語(建設・ゼネコン業界)
それではここから業界用語を紹介します。
まずは、建設・ゼネコン業界の用語を紹介します。
業界用語(建設・ゼネコン業界)
元請け(もとうけ)
建築プロジェクト全体を受注し、責任を持って施工管理を行う企業のことを意味します。
ゼネコンの多くは元請けの立場にあります。
下請け(したうけ)
元請け企業(ゼネコンなど)から仕事を依頼され、特定の工事部分を担当する企業のことを意味します。
サブコンや専門工事業者がこれにあたります。
JV(ジョイントベンチャー)
Joint Ventureの略。複数の企業が共同で大型プロジェクトに取り組むために組成するチームのことを意味します。日本の中でも有名で巨大なプロジェクトでは、単独企業だけではリスクが高いため、JV方式がよく採用されます。
最近の例として、大阪・関西万博の大屋根は竹中JV・大林組JV・清水建設JVが約3分の1ずつ施工しています。24年秋には全周がつながり、仕上げなどを経て、25年2月末に竣工し、完成した大屋根は世界最大規模の木造建築物になると言われています。
請負契約(うけおいけいやく)
建設業における基本的な契約形態のことを指します。成果物(建物など)を完成させることを目的として、対価を得る契約のことを意味します。
サブコン(さぶこん)
サブコン(Subcontractorの略)は、ゼネコン(総合建設会社)から工事の一部を請け負う専門工事会社のことを指します。建設プロジェクトにおいて、ゼネコンが全体のマネジメントを行う一方で、サブコンは特定の分野に特化した専門工事を担当します。
例えば、電気設備、空調・衛生設備、外装工事、内装仕上げ工事など、建物を構成する各専門分野ごとにサブコンが存在し、それぞれが高度な技術力とノウハウを武器に、施工を行います。
業界用語(設計・施工管理)
次に、設計・施工管理に関する用語を押さえていきましょう。
基本設計(きほんせっけい)
基本設計とは、建築プロジェクトにおいて、建物の大まかな形・寸法・機能・仕様などを定める設計段階のことを意味します。いわば「建物の骨格をつくるフェーズ」です。
実施設計(じっしせっけい)
基本設計に基づき、実際に施工できるように具体化した設計図のことを意味します。
施工図作成のベースになります。
意匠図(いしょうず)
意匠図とは、建物のデザインや空間の構成を表現するための図面のことを意味します。
簡単に言うと、
「建物を見た目や使いやすさの面から表現した設計図」です。
この意匠図をもとに、建物の外観・内装のデザイン、部屋のレイアウト、窓の位置や大きさなどが決まっていきます。
構造図(こうぞうず)
建築物や土木構造物を安全に、かつ機能的に成立させるために、構造部材の配置・寸法・仕様を示した設計図のことです。
建築でいう「構造部材」とは、柱・梁・耐力壁・基礎などのことを指します。
これらの部材が「どこに」「どのくらいの大きさで」「どんな材料で」使われるのか、を明確に指示するために構造図を作成します。
施工図(せこうず)
現場で建物を建てるために必要な、詳細な作業指示図を意味します。設計図だけでは不十分な細かい寸法や納まりを表現します。
施工図は意匠図や構造図との違いは「現場でものをつくる」ために特化していることです。
工程表(こうていひょう)
工事全体のスケジュールを可視化した表のことです。全体工程や月間工程、週間工程などの種類があり、各工程の順番や期間、重なりを管理するために必須です。
QCDSE
モノづくりやプロジェクトマネジメントにおいて重要とされる5つの基本要素をまとめた考え方です。
QCDSEのそれぞれの頭文字は、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)・Safety(安全)・Environment(環境)を表しています。
品質管理(ひんしつかんり)
設計図通りの品質を確保するための管理業務のことです。材料の確認、施工状況のチェック、試験結果の分析などが含まれます。
工程管理(こうていかんり)
計画通りに製品やサービスを納品するための管理業務のことです。工程表の作成、日々の進捗管理、打合せ、リスク管理がここに該当します。
どれだけ素晴らしいものを作っても、納期に遅れれば信頼を失い、ビジネスに大きなダメージを与えてしまいます。
安全管理(あんぜんかんり)
労働災害を防止するための管理業務のことです。現場の安全パトロール、KY活動(危険予知活動)などがこれに含まれます。
業界用語(建設現場)
そして、現場特有の「生きた言葉」も紹介します。
躯体(くたい)
躯体とは、建物の骨組み部分を指し、柱・梁・壁・床・基礎など、建物を支える主要構造部材を総称した言葉です。
建設現場では、躯体工事の進捗が全体工事の約半分を占めるとも言われ、非常に重要な工程とされています。
納まり(おさまり)
部材同士の取り合いや、接合部の処理方法を指します。「納まりが悪い」とは、見た目が不自然、施工に問題があるという意味です。
養生(ようじょう)
仕上がった部分を傷つけないよう保護することです。例えば、床や壁にシートを張ったりします。
ダンドリ(段取り)
作業をスムーズに進めるための準備や計画のことを意味します。現場では「段取り八分、仕事二分」と言われるほど重要視されます。
より深く知っておきたい業界用語
業界用語(建設・ゼネコン業界)
さらに建設・ゼネコン業界で覚えておきたい用語を紹介します。
VE(バリューエンジニアリング)
施工コストを抑えつつ、品質や機能を維持・向上させる手法のことです。通称ブイ・イーと呼ばれます。
設計段階から施工段階まで、コスト管理の要となる考え方です。
CM(コンストラクション・マネジメント)
発注者の立場で、設計・施工の全体プロセスを管理する手法のことです。
CM方式ではゼネコンとはまた違う新たなビジネススタイルが展開されています。
リスクアセスメント
工事におけるリスクを事前に洗い出し、評価し、対策を講じるプロセスのことを意味します。安全管理や品質管理にも深く関わってきます。
業界用語(設計・施工管理)
設計・施工管理系でもう少し専門性の高い用語を押さえましょう。
BIM(ビム)
Building Information Modelingの略。設計・施工・管理を3Dデータで一元化する仕組みです。これにより、設計ミスの削減、コスト管理の精緻化が可能になり、近年ゼネコン各社で急速に普及しています。
工事監理(こうじかんり)
工事監理とは、設計図書に基づいて工事が正しく行われているかを確認・指導する業務のことです。主に設計者(建築士)が行う役割であり、現場での施工が設計意図からズレないように、品質・性能・安全性を守るために必要不可欠なプロセスです。
工事監理は、単なる「現場の見回り」ではなく、設計図書(設計図、仕様書など)の内容が現場で忠実に実現されているか、また工事の途中で発生する問題や変更に対して適切な判断・指導を行うことが求められます。
仮設工事(かせつこうじ)
仮設工事とは、建物本体を建設するために必要な一時的な施設や設備を設置・管理する工事のことを指します。
この仮設工事は、建物そのもの(本設工事)とは異なり、工事が終われば撤去されるものがほとんどです。
しかし、現場作業の安全性、生産性、品質を支える非常に重要な役割を持っています。
業界用語(建設現場)
現場で本当に飛び交うリアルなワードもさらに紹介します。
打設(だせつ)
コンクリートを型枠に流し込んで施工する作業を指します。打設作業は、コンクリート工事の中核です。
工区(こうく)
工区とは、施工現場をエリアごとに区切った管理単位のことです。
工程管理や安全管理を効率的に行うために設定され、現場内では「◯◯工区完了」などと日常的に使われます。
墨出し(すみだし)
設計図に基づき、建物の柱・壁・設備機器の位置を実際の現場に正確に記す作業です。施工管理者が職人が出した墨を確認します。また、時には施工管理者が墨出しをすることもあります。
バラシ
組み立てた仮設物(足場など)を解体する作業を指します。「足場バラシ」「型枠バラシ」など、特定の作業を表す言葉として使われます。
業界用語を覚えるコツ
建設業界用語は膨大に存在するため、「覚えなければ!」と気負うと大変に感じてしまうかもしれません。
しかし、次の3つのステップで取り組めば、自然と身につきます。
実際の使われ方を調べる
例えば、「打設」という言葉を見たら、YouTubeなどで「コンクリート打設」の動画をチェックすると、イメージが一発で湧きます。用語や意味だけで覚えようとすると難しく感じます。現場という場所は身近な存在ではないので工事現場の中で何が起こっているのか動画で見てみることをお勧めします。
人に説明できるレベルまで理解する
友達や家族に「納まりってね…」と話してみると、頭の中の整理にもなります。知識を覚えるにはインプットからアウトプットまで取り組むことが最短距離になります。
面接練習に用語を取り入れる
自己PRや志望動機の中にさりげなく使ってみると、自然に口に出せるようになります。エントリーシートの文章にある経験談や体験談を踏まえて業界用語を少し混ぜてみる。業界用語を自分の言葉で話してみると良いでしょう。
就活の段階で、用語を「知識」から「自分の言葉」に変えておけると、社会人になった後もかなりスムーズに仕事に入っていけるでしょう。
まとめ
建設業界、特にゼネコン業界に飛び込もうとする建築学生にとって、業界用語を理解することは非常に重要です。ただ単に用語を丸暗記するだけでなく、それが現場でどう使われるのか、どんな背景があるのかをイメージできるようになると、より一歩リードすることができます。
また、用語を知ることは単なる知識の習得ではなく、
「建設業界の文化や考え方を理解する第一歩」
でもあります。
就職活動はもちろん、入社後もスムーズにスタートダッシュを切れるよう、今のうちからコツコツと業界理解を深めていきましょう!
最後に
建設業界は、巨大で、専門性が高く、かつ人間味あふれる世界です。
業界用語の理解は、その世界に飛び込むための「パスポート」のようなもの。
一つひとつの言葉の背後には、先輩たちの知恵と現場のリアルが詰まっています。
就活を通じて用語に触れ、現場を想像しながら学ぶことで、
きっと「自分がこの業界で働く未来」がよりリアルに見えてくるはずです。
焦らず、着実に、そして少しだけ楽しみながら。
みなさんの建設業界への一歩を、心から応援しています!
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