2030年を見据えたインフラ政策と建設業界の未来

2025年8月1日 更新

老朽化と人口減少の時代に、インフラはどう変わる?

日本の建設業界は多くの問題を抱えていますが、その一つがインフラの老朽化です。

老朽化したインフラは人々の生活にも影響を与えるため、修繕などの対策が急務となっていますが、このインフラの老朽化は政府のインフラ政策にも影響を与えています。

今回は日本が直面しているインフラの老朽化問題をご紹介したうえで、インフラ政策の方向性がどのように変わっているか、そして今後就活を行う学生への影響や就活を行う際に意識するべきことをご紹介します。

はじめに ― いま、建設業界が直面している課題とは?

日本では、高度経済成長期(1960〜70年代)に一気に整備された道路、橋、上下水道などの社会インフラが、今その多くは「使い続けるには修理や更新が必要な時期」に入っています。

出典:社会資本の老朽化対策情報ポータルサイトhttps://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html

国土交通省の調査によると、2030年には全国の道路橋の約54%、トンネルの約35%が建設から50年以上経過すると予測されています。このため、橋やトンネルの点検・補修・更新が急務となっています。

特に地方では、老朽化したインフラの通行制限が増えており、これが日常生活や物流に影響を与え始めています。

さらに、日本はすでに人口減少社会に突入しており、特に地方では使われなくなった道路や施設が増えています。都市部と過疎地では、インフラの必要性や役割が大きく異なり、それに応じた維持や管理が求められています。

2030年に向けたインフラ政策の方向性

こうした背景を受けて、国はこれまでの「たくさん作る」方針から、「必要な場所に、必要な規模で、長く使えるように整備する」という方針に変わっています。つまり、インフラ整備はこれから“量”から“質”へとシフトしていくということです。

この方針転換は、建設業界にも大きな影響を与えており、今後の働き方やプロジェクトの進め方に変化が求められることになります。

国土交通省は、今後のインフラ政策について以下に紹介する4つのポイントを挙げています。

老朽インフラの修繕・更新

今あるインフラ(道路、橋、トンネルなど)が古くなってきているため、これらを計画的に修理したり、更新していくことが最優先課題です。特に「壊れる前に手を打つ」ための予防保全が重要になります。

防災・減災インフラの強化

日本は昔から自然災害が多い国です。集中豪雨や大地震などに備えるため、防災インフラ(堤防や避難所など)の強化が進められています。災害が起きても、被害を最小限に抑えるために、これらのインフラの強化が欠かせません。

地方と都市のインフラ格差の是正

人口が減っている地方では、全てのインフラを維持するのが難しくなっています。これに対して、地域ごとのニーズに合わせたインフラ整備が求められています。地方と都市部のインフラに差が出ないように調整することが大事です。

脱炭素社会に向けたエネルギーインフラの見直し

脱炭素社会に向けて、エネルギーインフラ(電力やガスなど)も見直しが進んでいます。再生可能エネルギーの導入や、省エネルギー技術の強化が求められます。

特に注目したいのは、新しいインフラを造るのではなく、「今あるインフラを修繕して長く使う」という方向にシフトしている点です。これからは、インフラの更新だけでなく、その維持・管理に力を入れることが必要です。

これらの方針は、今後の建設プロジェクトの内容だけでなく、業界の技術や働き方にも大きな影響を与えると予測されています。

今後のインフラ整備では、ただ「新しく作る」だけでなく、「既存のものを守り、長く使っていく」ことがとても大切になってきます。建設業界にとっても、これからは持続可能で効率的な運営が求められるようになるでしょう。

「量から質へ」とはどういうことか? ─ 具体的な判断基準も

「量から質へ」という言葉は、これからのインフラ整備の方向性を示しています。単にたくさん作るのではなく、効率的で持続可能な形でインフラを維持していこうという考え方です。つまり、今後使われるかどうかをしっかり見極め、必要なインフラだけを選んで大切に守っていくということです。

例えば、以下のような判断基準が挙げられます。

使用頻度や需要の見極め

インフラの維持や更新の優先順位は、実際にどれだけ使われているかに基づいて決められます。例えば,道路の場合、1,000台/日未満の交通量では維持の必要性を再評価します。橋梁の場合、年間の通行台数が少ない場合、簡易構造に変更したり撤去を検討します。

効率的な施設の再編

使われていない施設をそのまま維持するのは非効率です。そこで、次のような選択肢が考慮され,、公共施設の稼働率が20%未満の場合、他の施設と統合したり、施設の用途を転換する可能性があります。

コストの長期的視点での評価

インフラの整備や維持には長期的なコストがかかります。これを「ライフサイクルコスト」として計算し、数十年単位での費用を考慮して更新の必要性を判断します。単年度のコストだけでなく、将来の維持費用を見越して、更新する価値があるかを判断します。

地域ごとの需要に合わせた対応

地域によってインフラの重要性や使用頻度は異なります。人口減少が進む地域では、必要なインフラを見極め、無駄な維持費を削減するため、地域ごとに必要なインフラを選定する戦略が必要です。

このように、インフラの整備や維持は、使用頻度、施設の効率性、長期的なコスト、地域の実情などを踏まえて、より合理的かつ効率的に行うことが求められています。

インフラ政策に合わせて、企業の取り組みも変化中

国の政策方針に呼応する形で、建設業界の企業もさまざまな新しい取り組みを進めています。

ICTやデジタル技術を活用した効率化

建設業界では、ICT(情報通信技術)やデジタル技術を使って作業を効率化しています。例えば、i-ConstructionやCIM/BIM(建設情報モデリング)の導入で、現場の進行を3Dモデルで管理したり、ドローンを使って現場測量をしたりしています。

また、AI(人工知能)を使って点検データを分析することで、作業の精度を向上することも取り組んでいます。これにより、少ない人数でも効率よく現場を管理できるようになり、若手技術者の働き方にもプラスの影響を与えています。

修繕・維持管理ビジネスへの参入

以前は新しい建物を作ることが中心だった企業も、今では修繕や維持管理に力を入れています。特に、インフラ点検や補修の専門部門を作る企業が増えており、コンクリートの劣化診断や補修設計などの新しいサービスが登場してきています。

また、橋や下水道などの維持管理市場が今後拡大すると見込まれており、この分野が成長しています。

地方企業の連携と業務効率化

人口が減少している地方では、建設会社同士が協力し、エリア全体でインフラの維持に取り組んでいます。
例えば、発注単位を統一したり、機材や技術を共有することで、生産性を上げ、コスト削減を目指しています。

環境に配慮した資材や建設手法

環境問題に対応するため、CO₂排出量が少ない再生コンクリートや、木材を使った建設方法が進んでいます。具体的には、再生コンクリートや再生骨材、木質構造など、環境に優しい資材の活用が進んでいます。

また、公共事業では、環境に配慮した提案が評価されやすく、企業の競争力に直結しています。

これらの取り組みは、建設業界が効率化や環境対応を進めるとともに、新しいビジネスチャンスを開拓していることを意味しています。就活生の皆さんにとっては、デジタル技術や環境問題への意識が重要なスキルとなりそうです。

インフラ政策の変化から、就活生が学べること

国の方針が変わると、それに伴って建設業界の「仕事の中身」や「キャリアの方向性」も変わっていきます。そのため、建設業界への就職を検討中の学生にとっても、このような政策と企業の動きは就活において重要な情報となります。

特に今後就活を行う際は以下のポイントは意識するようにしましょう。

仕事の範囲が広がっている

以前は、建設業界での定番の仕事は「施工管理」や「設計」でしたが、今では維持管理やインフラ点検、補修設計、運営計画など、専門的な分野にも仕事が広がっています。

新しい分野でも活躍できるチャンスが増えている反面、これらの仕事を知らないと就活の際の選択肢に入りません。

就活生としては、「どの分野に公共投資が向かっているのか」「企業がどこに注力しているのか」という視点を持つことが大切です。これを把握することで、企業選びや志望動機をより具体的かつ説得力のあるものにできます。

そのため、就活の業界や職種研究を行う際は、上記でご紹介した仕事のように、「世の中の情勢から新しく生まれた仕事がないか」また「将来的に需要が高くなる分野や仕事はあるか」といった視点で調べるようにしましょう。

ICTや環境分野の知識が求められる

最近では、ICT(情報通信技術)や環境分野の知識がある人材がますます求められています。

例えば、「デジタル技術を使って現場を効率化するための知識」や、「環境に優しい建設方法に関する知識」が必要とされています。これまでの「建設=現場仕事」だけではなく、デジタルや環境に関わる仕事にも多様なキャリアパスが開かれているのです。

とはいえ、学生時代からICTの知識をつけるのは難しいと思います。

そのため、就活の際には「興味のある業界でどの分野に投資がされているか」や、「各企業がICT技術を用いてどのような業務効率や最新の技術を使っているのか」を調べることによって、企業の将来性を考える判断材料になります。

おわりに ― 変化する社会インフラと、建設業界の未来

これからの社会インフラは、これまでの「どこにでも均等に造る」時代から、「必要な場所に、持続可能な形で残す」時代へと変わっていきます。この変化に合わせて、建設業界も新しい技術や仕組みを取り入れ、どんどん進化しているのです。

建設業界の仕事は、ただ物を作るだけではなく、社会の変化に対応して暮らしを支え続けることが求められています。つまり、インフラを効率的に維持し、長期的に役立つ形で活用することが大事です。

今、建築や土木を学んでいる皆さんも、「これからのインフラがどう変わるか」に目を向けることで、自分が社会にどんな貢献ができるかを考えるきっかけになるはずです。これからの建設業界では、新しい技術や考え方が必要とされるので、自分がどのように成長し、活躍できるかをしっかり見据えていきましょう。

社会のニーズに応じたインフラ整備が進んでいく中で、建設業界も大きく進化しています。自分がどんな形でその進化に貢献できるのかを考えることが、これからのキャリア形成に役立ちますよ!

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