LEEDとは?建築・土木学生が知っておきたい国際的な環境認証制度
近年、建設業界では「環境配慮」や「サステナブル建築」が大きなテーマとなっています。
世界的なカーボンニュートラルの流れやSDGsの推進により、建築・土木の分野でも 環境性能をどう確保するか が問われる時代になっています。
こうした背景の中で注目されているのが、LEED(Leadership in Energy and Environmental Design) という国際的な環境認証制度です。
この記事では、LEEDの基礎から評価のポイント、日本での導入事例、そして学生が理解しておくべきメリットまで、就活に活かせる形で解説していきます!
就活を控える学生にとって、LEEDを理解していることは「環境や国際基準への意識がある学生」として自己PRにもつなげられる知識なので、参考にしてみてください!

LEEDとは?
LEEDは、米国グリーンビルディング協会(USGBC) が開発した建築物や都市の環境における環境性能評価システムです。
世界160か国以上で導入されており、サステナブル建築を評価する仕組みとして国際的に認知されています。
※サステナブル建築とは、エネルギーや資源をできるだけ無駄にせず、環境・人・社会にやさしい建物を目指す建築のこと。省エネ設計や再生可能エネルギーの活用、長寿命化などがその特徴です。
対象は新築だけでなく、既存建物の改修、オフィスの内装、さらには都市開発や街区計画まで幅広く、建築・土木の分野を横断して使われています。
LEEDの特徴は、単なる「省エネ」や「環境配慮」だけでなく、建築物の 立地・設計・運用・利用者の快適性 までを総合的に評価する点にあります。
コストや資源の削減を進めながら、人々の健康に良い影響を与えることに配慮し、再生可能なクリーンエネルギーを促進している建築物の認証を行っています。

出典:LEEDとは | Green Building Japan
LEEDの認証カテゴリ(対象範囲:新築/既存/都市/住宅 など)
LEEDは一つの建物評価システムではなく、対象となる用途や規模に応じて複数のカテゴリが用意されています。これにより、新築ビルだけでなく、既存建物の改修や街づくり全体まで幅広くカバーできるのが特徴です。主なカテゴリは以下の通りです。
・Building Design and Construction(BD+C)/建築設計および建設
新築や大規模な改修を対象とする。オフィスビルや商業施設、学校、病院など幅広い用途に適用される。
・Interior Design and Construction(ID+C)/インテリア設計および建設
オフィスや商業施設の内装に特化した評価。テナントの入れ替えやリノベーション時に多く用いられる。
・Building Operations and Maintenance(O+M)/既存ビルの運用とメンテナンス
すでに存在する建物を対象に、省エネ改修や運用改善を通じて環境性能を高める取り組みを評価する。
・Neighborhood Development(ND)/近隣開発
個別の建物ではなく、街区やエリア全体を対象とする。再開発や大規模な宅地造成などで活用される。
・Homes(HOMES)/住宅
一戸建てや集合住宅を対象とする。断熱性能や再生可能エネルギー導入など、住宅の持続可能性を評価する。
・Cities and Communities/シティ&コミュニティ
都市や自治体を対象に、持続可能な都市計画やスマートシティの取り組みを包括的に評価する。
こうした多様なカテゴリによって、LEEDは「建物の種類」や「規模」に応じた柔軟な認証が可能になっています。
実際、日本では BD+C(新築の大規模施設) や O+M(既存ビルの改修) の活用事例が多く、外資系企業のオフィスや都市再開発プロジェクトを中心に導入が進んでいます。
認証システム
LEEDの大きな特徴は、建物や開発プロジェクトの環境性能を「見える化」し、国際的に比較可能な形で評価できる点にあります。
評価はポイント制で行われ、獲得した合計点によって4段階の認証レベルが付与されます
さらに、クレジットカテゴリー(必須条件と選択項目の集まり)には「エネルギー効率」「水の利用」「資源と素材」「室内環境」など多くの分野に分かれており、持続可能性を多角的にチェックする仕組みとなっています。

出典:LEEDとは | Green Building Japan
4段階の評価基準
LEEDの認証は、評価基準ごとに獲得したポイントの合計によって4段階に分けられます。
・Certified(認証):40〜49点
・Silver(シルバー):50〜59点
・Gold(ゴールド):60〜79点
・Platinum(プラチナ):80点以上

出典:LEEDとは | Green Building Japan
クレジットカテゴリー(必須条件と選択項目の集まり)
評価項目は大きく以下のカテゴリーに分かれています。
統合的プロセス:より効率的で環境に配慮した建物づくりを実現するため、建物の計画段階から、設計者・設備担当・環境専門家などさまざまな分野のメンバーが協力して進めることを促します。
立地と交通:公共交通機関へのアクセスがよく、徒歩や自転車でも移動しやすい場所に建てることで移動にかかる環境負荷を減らすことを重視します。
敷地選定:建設による自然環境への影響(生態系・水資源)を最小限に抑えることを評価します。例えば、既存の自然を壊さずに活かす設計や、雨水の再利用などがポイントになります。
水の利用:飲料水などの水資源の使用量を削減する取り組みを評価します。節水設備の導入や、雨水・再生水の利用などが対象です。
エネルギーと大気:建物の省エネ性能や再生可能エネルギーの利用を評価します。
材料と資源:環境に配慮した建材の使用や廃棄物削減が評価されます。リサイクル素材や地産地消の材料を使うことで環境負荷を軽減することを目指します。
室内環境:建物内部の空気の質・採光・眺望など、人の快適性を高める設計を評価します。健康的で生産性の高い空間づくりを目指します。
革新性:既存の項目にはない独自の環境配慮アイデアを評価します。新技術の導入や教育プログラムなども対象です。
地域別重み付け:地域ごとの気候・環境課題に応じて重点評価項目を変える制度です。たとえば乾燥地域なら「水の効率利用」、寒冷地なら「断熱性能」が重視されます。
※以下3項目は建物単体ではなく“街全体のサステナビリティ”を重視しています。
立地選択と敷地利用:公共交通機関へのアクセスが良く、歩行者や自転車でも移動しやすい環境を整え、快適で便利なまちづくりを進めることを評価します。また、オープンスペース(公園・緑地)の確保など、人が集まりやすい空間づくりも重視されます。
近隣のパターンとデザイン:歩きやすく、にぎわいのあるまちづくりを目指します。住宅・商業・公共施設などがコンパクトに集まり、住民が徒歩や自転車で移動しやすい計画を評価します。地域コミュニティとの関わりも重視されます。
グリーンな近隣インフラと建築物:建物や道路などのインフラ整備で発生する環境負荷を減らす取り組みを評価します。再生可能エネルギーの導入、雨水の再利用、ヒートアイランド対策などが対象です。
このように、LEEDは点数制(スコアリング方式)で環境性能を「見える化」する仕組みになっており、国際的に比較可能な指標として多くの建築プロジェクトで採用されています。

世界と日本の環境建築認証を知ろう
建物の「環境性能」や「人へのやさしさ」を評価する制度は、世界中でさまざまに存在します。
日本では、国が独自に設けた「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」や「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」が代表的です。どちらも、エネルギー効率や快適性などの環境面を中心に評価する制度です。
一方、海外では「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」が世界的なスタンダードとして広く導入されています。
さらに近年は、“人の健康や幸福”に焦点を当てた「WELL(ウェル認証)」にも注目が集まっています。
WELLは空気・光・温熱・音環境など、働く人・住む人の心身の健康を基準に評価するのが特徴です。
LEEDとWELLはセットで取得されることも多く、「環境」と「人」の両面から建築を考える動きが進んでいます。
就活では、「国内制度だけでなく、国際的な認証基準にも関心がある」ことを示すと、サステナブル建築を広い視点で理解している学生として評価されやすくなるので、ぜひ知識を広めてみてください!
🔗 関連記事はこちら
・[CASBEEとBELSって何? 就活で役立つ日本の環境建築認証をわかりやすく解説!]
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日本におけるLEED認証の事例
近年、日本でも「環境に配慮した建物づくり」への関心が高まり、世界的な建築環境認証制度であるLEEDを取得するプロジェクトが増えています。
LEEDは、建物の省エネ性能・環境負荷の低減・快適性・立地計画などを総合的に評価する国際的な制度で、認証を受けた建物は“持続可能なまちづくり”や“環境経営”の象徴とされています。
ここでは、国内で高い評価を受けた代表的な4つのLEED認証事例を紹介します。
「街づくり」「オフィス」「教育」「医療」といった多様な分野で、どのようにLEEDの考え方が生かされているのか見ていきましょう。
【街づくり】虎ノ門・麻布台プロジェクト(Azabudai Hills)
所在地: 東京都港区
認証: LEED ND v4 Plan(Platinum)
森ビルが手がける、約8.1ヘクタールにおよぶ大規模な都市再開発プロジェクトです。
「緑に包まれ、人と人がつながる街」をコンセプトに掲げ、約2.4ヘクタールの広大な緑地が整備されています。高層ビル群の中にあっても、樹木や公園、散策路が一体となった“都市の中の森”のような環境を実現しています。
このプロジェクトは、建物単体ではなく「街全体の持続可能性」を評価する
LEED ND(近隣開発)カテゴリで、日本初のPlatinum認証を取得しました。
特に評価されたポイントは次の通りです。
・公共交通機関への優れたアクセス性(地下鉄3路線に直結)
・歩行者・自転車に配慮した安全で快適な動線設計
・大規模緑化による生物多様性の保全とヒートアイランド対策
・住宅・オフィス・商業施設・教育機関など多様な機能が融合したミクストユース開発
※ミクストユースとは、住宅、オフィス、商業施設、レクリエーション施設など、複数の異なる用途の施設を同一エリア内(土地や建物)に複合的に配置する開発手法
環境性能だけでなく、人々の健康・交流・文化を育む場としてのデザインも重視されており、 「自然と都市の共生」を体現する日本を代表する街づくりの事例といえます。
【オフィス】YKK 80ビル
所在地: 東京都千代田区
認証: LEED BD+C(Core & Shell)Platinum
YKKグループの本社オフィスとして建設された、日本初のLEED Core & Shell部門「Platinum」認証取得ビルです。
「Core & Shell(コア&シェル)」とは、建物の外装・構造・共用部などの基本性能を評価するカテゴリーで、建物全体の環境性能を高水準に保つことが求められます。
YKK 80ビルでは、自社の強みである窓やファサード技術を最大限に活かし、自然光を効果的に取り入れる採光設計や、高断熱ガラス・高効率空調によるエネルギー最適化を実現しています。
また、再生可能エネルギーの活用や雨水利用など、環境負荷を低減する取り組みも行われています。これらの設計により、国内オフィスビルの中でもトップクラスの環境性能を誇る建物として高く評価されています。
【教育】順天堂大学 新研究棟(本郷キャンパス)
所在地: 東京都文京区
認証: LEED NC(New Construction)Platinum
順天堂大学本郷キャンパス内に建設された新研究棟は、大学施設として国内で初めてLEED NC(新築部門)のPlatinum認証を取得した建物です。
教育・研究機能を持つ施設として、環境性能と快適性の両立が高く評価されました。
建物は、研究活動に適した自然採光や通風を取り入れ、屋内環境の質を向上させました。さらに、高効率な空調・照明設備や省エネガラスの採用により、エネルギー消費を大幅に削減しています。
また、雨水や自然換気の活用、緑化空間の整備など、キャンパス全体での環境配慮設計も特徴です。
このプロジェクトは、教育機関における「学びと環境の調和」を象徴する事例として、今後の大学キャンパス設計のモデルケースとされています。
【医療】順天堂医院 B棟
所在地: 東京都文京区
認証: LEED Healthcare(医療施設部門)Gold
順天堂医院B棟は、日本で初めてLEED Healthcare認証を取得した医療施設です。
このカテゴリーは、病院やクリニックなど「医療環境に特化した建物」を対象としており、患者や医療従事者の健康・快適性・安全性を重視した評価項目が設定されています。
順天堂医院では、自然光を取り入れた明るい病室や、空気の質を保つ高性能換気システムの導入などにより、患者の回復を支え、スタッフが安心して働ける環境づくりを実現しました。
また、建物全体での省エネ設計や環境負荷の低減にも取り組み、「人の健康を守る空間づくり」にLEEDの理念を応用した先進的な事例となっています。

LEEDを知っていると就活で有利?注目される理由とは
グローバル企業や外資系の企業では、LEEDの認証・取得をすることで不動産価値や企業イメージを高める効果があります。また、SDGsやESG投資の広がりにより、環境認証を持つ建物は投資家や利用者からも高評価を得やすくなっています。
さらに、就職活動をするうえで知っておくことで、以下のような強みがあります。
企業研究・志望動機の説得力が上がる
環境建築やサステナブル設計に力を入れる企業では、採用ページや会社説明会で「LEED」「WELL」「ZEB」「カーボンニュートラル」などのキーワードが頻繁に登場します。
LEEDの基本構造(評価項目やランク制度)を理解しておくことで、
「御社の◯◯プロジェクトがLEED Gold認証を取得しており、環境性能と快適性を両立させる姿勢に共感しました」 のように、企業の方針と自分の志向を結びつけた志望動機を具体的に語れるようになります。
また、単に「環境に興味があります」ではなく、「街区全体のサステナビリティを評価するLEED NDに関心がある」など、専門的な視点を加えることで、業界理解の深い学生として印象づけることができます。
設計職・施工管理職でのアピールになる
設計事務所やゼネコンでは、環境性能を数値で示し、認証を取得できるスキルが求められています。
LEEDを理解している学生は、「図面を描くだけ」「施工を管理するだけ」でなく、建築の価値を高める提案(省エネ計画・資材選定・運用シミュレーション)まで視野を広げられる点で評価されやすいです。
たとえば、LEED認証の他事例である梓設計の「HANEDA SKY CAMPUS」のように、LEED×WELLのダブル認証を実現したオフィス設計の事例や森ビルの「虎ノ門・麻布台プロジェクト」のように、街区全体(ND)+建物単体(BD+C)での認証取得した事例を理解しておくと、「自分もこうした総合的な設計・計画に携わりたい」という志望動機を具体的に表現できます。
グローバル企業を志望する場合に有利
LEEDはアメリカ発の国際認証であり、世界160か国以上のプロジェクトで採用されています。そのため、外資系デベロッパーや海外展開している設計事務所では、LEEDが“共通言語”のように扱われています。
英語面接やエントリーシートで、「LEEDを学び、国内外の認証事例を調べています」
と触れることで、国際的な視野・専門的関心を持つ人材としてアピール可能です。
特に、海外案件・ESG関連部門を目指す学生にとって、LEEDの知識は大きな武器になります。
面接で具体的な話題にできる
面接では、「なぜサステナブル建築に興味を持ったのですか?」と聞かれることがあります。
その際に、「虎ノ門・麻布台プロジェクトのように、都市スケールで環境と健康を両立する開発に魅力を感じました」また、「梓設計の本社のように、LEEDとWELLの両方から“働く人の快適性”を考える設計が理想です」と答えることができれば、抽象的な理想論ではなく、実際の事例に基づいた回答として説得力が増します。
また、これらの事例は「日本の企業が世界基準で評価されている好例」でもあり、「国内企業が国際的な基準に挑戦している姿勢に共感した」と話すことで、企業への尊敬と学習意欲を同時に伝えられます。
まとめ
LEEDは、世界中で使われている「環境×人」を評価する建築認証制度です。
建築・土木を学ぶ学生にとっては、地球規模で建築を考える視点を身につけるきっかけになります。
省エネ設備の導入や素材の選定だけでなく、「街全体のつながり」や「人の健康・快適性」までを設計に組み込むのがLEEDの考え方で、こうした視点は、設計職・施工管理・不動産・デベロッパーなど幅広い職種で求められています。
就活では、「環境に配慮した建築に興味がある」「国際的な基準を学びながら、持続可能な街づくりに貢献したい」といった志望動機を伝えることで、あなたの関心や視野の広さをアピールできます。
これからの建築を担う世代として、LEEDを通して「人と地球の未来をデザインする建築とは何か」を考え、就職活動を進めていきましょう!