新しい土地利用にむけた既存建物の解体工事業界についてご紹介します

2024年9月26日 更新

建設業界に興味のある方は、新しい建物の建築やその後の管理に着目して業界や職種、仕事内容について調べる機会が多いと思います。

しかし、建設のサイクルにおいては、更地の状態から建物を建設し、管理運営、リフォームを行いながら、最終的には老朽化した建物を解体し、再び更地に戻して新しい建物を建てます。

今回は、建設における一連のサイクルの中でも、解体業に焦点を当て、解体工事の種類や工法、解体業界に関わる企業や業界の課題、将来性をご紹介していきます。

解体業界に興味のある方はもちろん、建設業界の全体像を把握するうえでの業界研究としてもぜひ参考にしてみてください。

解体業とは

今回のテーマである解体業、解体工事とは建物や家屋を取り壊して撤去する工事のことを指し、
建物を壊して敷地に何もない状態に戻すことや、内装の変更のために建物内部を撤去することなどが解体工事です。

普段の生活の中で、一般住宅の解体工事などは見る機会があるかもしれませんが、その他にもマンション、ビル、公共施設まで全ての建築物が最終的には解体されることになります。

解体業を行う企業とは

解体業者はゼネコンと呼ばれる大手企業から、元請け下請けを行う中小企業、そして個人事業主の3パターンに分類されます。
中でも中小企業や個人事業主の割合が多く、地方では土木工事業・建築工事業・産業廃棄物処理業などと兼業している企業も多くみられます。

後ほどご紹介しますが、解体工事の規模によって必要な許可、資格が異なるため、業者によって幅広く請け負う点が特徴です。

解体工事に必要な知識

続いては、解体工事を行うのに必要な知識をご紹介します。
こちらは入社後に身につけるべき知識のため、就活の段階では知っておく必要はありませんが、解体業に興味がある方は是非頭の片隅に置いておくと良いでしょう。

解体工事を行う際に関連する法律は主に建設業法と建設リサイクル法の2つです。

建設業法関連

2016年の建設業法改正により解体工事は建設業許可が必要な業種となりました。

そのため、解体工事を元請けや下請けとして請け負うときは建物を建てる場合と同じく、請負金額に応じて建設業許可、または解体工事業登録が必要です。

具体的には1件当たりの請負金額が500万円以上の解体工事を行う際は解体工事の建設業許可が必要となり、1件当たりの請負金額が500万円未満の解体工事を行う業者は解体工事業登録が必要となります。

基本的に解体業を行っている会社は上記の許可を得ていると思うので、志望する会社が許可・登録を得ているかを改めて確認する必要はありません。

建設リサイクル法関連

建設リサイクル法は、建設工事に関する資材のリサイクルに関する法律です。

解体工事では、さまざまな廃棄物や産業廃棄物が発生するため、これらの廃棄物を、適切に処理してリサイクルできるように建設リサイクル法で規定しており、この法律によって、解体工事を行う際は産業廃棄物を、細かく分別する義務が生じます。
こちらは実務に関わる重要な要素となっています。

解体工事に関わる職種

ここからは解体工事の仕事内容を職種別にご紹介します。

現場作業員

現場作業員は手作業や工具を使用し、解体工事を行うのが仕事です。

ショベルカーなどの重機を扱う場合や、解体工事で出た廃棄物を処理場まで運搬するには、免許や資格が必要になるため、重機の操縦を行う人をオペレーター、運搬する仕事をドライバーと呼ぶ場合もあります。

現場監督

現場監督の主な仕事は、解体工事のスケジュール管理や、関係先との連携、工事に関する施主との調整・交渉、現場作業員全体の安全管理など、工事全体のスケジュールのとりまとめを行います。
そのため、建設現場における施工管理のような職種であると言えるでしょう。

また、解体工事が始まる前の近隣挨拶や説明も現場監督が行うケースが多いようです。

営業

解体業の仕事でも営業は必要な職種です。

営業職の主な仕事は解体工事の案件を獲得することですが、それ以外にも顧客への問い合わせ対応や見積もり作成、工事内容の説明、工期の調整など業務内容は多岐に渡ります。

解体工事の流れ

では、解体工事は実際にどの様な工程で進められていくのでしょうか?
ここでは、解体工事の一連の流れをご紹介します。

解体工事は、
見積もり→事前準備→解体工事の実施→解体後の手続き
に分類できます。

見積もり

解体工事を実施するにあたって、依頼主は解体業者の選定から始めます。

解体業者は現地で視察を行い、解体の難易度や、必要な重機数、人員数、工事期間を勘案し見積りを算出します。
双方が見積り内容に合意すれば契約をし、工事の計画を進めていくことになります。

事前準備

契約が完了した後は、解体工事が始まる前の事前準備が必要です。

事前準備として必要なことは主にやるべきこととしては、
​​・行政への様々な届け出
・ライフラインの停止
・近隣への挨拶
が挙げられます。

上記にあげた項目は解体業者と依頼主どちらが行っても問題ありませんが、通常は解体業者が請け負うことが多いです。

解体工事の実施

事前準備が終わったら、解体工事に着工します。

新築の工事やビルの施工の際に、足場を組んで周りをシートで覆われている建物を見たことがあるかもしれませんが、解体工事でも周囲への影響を抑えるために、同じような状態で解体工事を進めることが多いようです。

解体工事の機関としては、一般的な戸建住宅は1、2週間程、100坪以上ある大きな建物の解体は1、2ヶ月程かかる場合もあります。

中規模の雑居ビルなどは、3ヶ月から半年近くかかる場合があります。

解体後の手続き

解体が終わった土地は、地面を平らにする整地作業をして解体工事は完了となります。

解体工事後には、建物が無くなったことを登記する建物滅失登記が必要で、必要書類を揃えて法務局に申請することで解体工事の一連の流れが完了します。

解体工事の種類・工法

ここまで解体工事に必要な資格や流れについてご紹介しましたが、解体工事は目的に応じていくつかの種類があり、解体工事の種類や建物の構造によって、解体工法が異なります。

ここでは代表的な解体工事の種類、解体工事の工法をご紹介します。

解体工事の種類

解体工事と聞くと建物を全て壊すイメージが強いかもしれませんが、解体工事には、目的に応じていくつかの種類があります。

解体工事の種類は大きく分けると、
・建物全ての解体
・建物の一部を解体
・建物の内装を解体
・外構のみの解体

の4つに分けられます。

建物の一部を解体は家族構成の変化による減築や、長屋の切り離し工事など、建物の一部のみを取り壊すケースです。

そして、リフォームやリノベーションに伴い、内装部分のみを解体する場合や、ブロック塀やカーポートなどの外構のみを解体する解体工事もあります。

解体工事の工法

続いては解体工事の工法をご紹介します。
解体工事は建物の構造や使われている建材によって工法が異なります。

一般的な建物の構造は大きく
・木造
・RC造(鉄筋コンクリート造)
・SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
に分けられます。

今回は木造建築とRC造・SRC造の2つに分け、それぞれで用いられる代表的な解体工事の工法をご紹介します。

木造建築

個人住宅から集合住宅まで幅広い範囲で利用されている木造建築を解体する際は機械解体工法と手壊し工法が用いられます。

手壊し工法
手壊し工法は名前の通り、重機などを使用せず、手作業で解体工事を行う工法です。

重機が搬送できない狭い敷地や住宅密集地において用いられます。

機械解体工法
機械解体工法は重機を用いて解体工事を行う工法で、多くの木造住宅の解体撤去工事で用いられている工法です。

一般的にイメージされる解体工事はこの機械解体工法が用いられています。

鉄骨造・RC造

鉄骨造やRC造の建物は木造に比べて頑丈なため、解体する工数や費用がかかり、これからご紹介する工法も頑丈な鉄筋やコンクリートを解体するために用いられます。

ここでは鉄骨造・RC造の代表的な工法をいくつかご紹介します。

圧砕機工法
油圧ショベル(ユンボ)の先端にハサミ状のアタッチメントなどの圧砕機を取り付け、鉄筋や鉄骨の切断やコンクリートの破砕を行います。

振動や騒音が少ないというメリットがあるため、現代の鉄筋コンクリート解体の主流となっている工法です。

カッター工法
カッター工法とは、加圧機またはショベルの先に鉄骨切断用のカッターなどの切断用アタッチメントを取り付け、切断しながら解体を進めていく工法です。

主にコンクリートやアスファルトを切断する際に用いられる工法で、コンクリート建造物の部分解体に用いられます。

ブレーカー工法
ブレーカー工法は、ブレーカー(ノミ)をアタッチメントに装着したショベルで、先端の杭を振動させることでコンクリートを砕いて解体する工法です。

主に地盤や壁などのコンクリートの部分的な解体で用いられます。

転倒工法
転倒工法は、建物の外壁を内側に転倒させ、その衝撃で解体するという工法です。
一般的には壁や柱などの上部にワイヤーを取り付け、重機を使ってワイヤーで引っ張り内側に倒します。

周辺への飛散量が少なく、高所作業を少なくできるというメリットもあるため、高い外壁や煙突がついた建物を解体する際に用いられます。

解体業界の課題や将来性

最後に解体業界が抱えている課題や業界の将来性についてご紹介します。

業界の課題

まずは解体業界が現在抱えている課題についてです。

現在、解体業界では
・人材不足
・産業処理場の不足
・処理コストの高騰
が主な課題となっています。

 人材不足については、解体業界だけではなく、建設業界全体が抱える問題と言えるでしょう。

また産業処理場の不足や処理コストの高騰は、解体時に生じる廃棄物や産業廃棄物が関連しています。

以前に比べ、廃棄物や産業廃棄物の法的制約や環境基準が厳しくなったため、廃棄物や産業廃棄物の処理は、環境への負荷を最小限に抑えることが求められるようになりました。
しかし、産業処理場は処理能力や設備の面で限られており、このため解体現場から出る廃棄物を処理するための適切な産業処理場が不足しているのが現状です。

また、産業処理場の不足により、解体業者は廃棄物の処理に高いコストを負担しなければならなくなり、結果的に処理コストが上昇することとなっています。

解体業界の将来性

解体業界が複数の課題を抱えていることは理解いただけたと思いますが、解体業自体の需要は将来的に高まることが予想されています。

ここでは今後需要が高まると考えられている要因をいくつかご紹介します。

建物の老朽化

1970年代前後の高度経済成長期には積極的な設備投資が行われ、多くの建物が生まれました。
これらの建物の多くが現在、老朽化が進んでいます。

老朽化した建物は建て替えや取り壊しを行うことが多いため、解体業の需要は今後も高まると考えられています。

空き家の増加

もう1つの要因が空き家の増加です。
日本では少子高齢化や人口の減少に伴い空き家率は年々増加し、2030年には空き家率が約30%になるという予想もあります。

空き家が放置されると、周囲の景観や環境が悪化する可能性や不法占拠や犯罪行為の温床となる可能性があるため、空き家対策として解体工事への依頼が増えると考えられています。

まとめ

今回は解体工事を行う解体業についてご紹介しました。

解体工事の種類や工法でもお伝えした通り、解体工事と言ってもただ建物を重機で取り壊すだけではなく、さまざまな種類や工法を適切に組み合わせて、解体が行われています。

建設業界の中で解体業界が取り上げられる機会は多くありませんが、老朽化した建物は一度解体しなければ新しい建物を建てることができません。

このように建設業界は様々な仕事のうえで成り立っています。

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