建設業界のICT化を理解し、就活に活かそう!
IT化、ICT化というワードはあらゆる産業において近年のトレンドであり、私たちの生活も最新の技術によってどんどん便利になっています。
このIT化の普及は建設業界でも進められていて、新しい技術の開発や現場での導入は大手ゼネコンを中心に進められています。
今後、建設業界に関わる学生の皆さんはこのような技術を実際に触る機会や知識があることが就活での1つのポイントになってきます。
就活でもこのような技術の知識や情報を頭に入れておくと、企業が力を入れている分野や企業の将来性についてより具体的に話すことができるからです。
今回は建設業界のICT化について背景や建設業界が抱えている課題などに触れながら紹介し、就活でどのように活かすべきかという点まで紹介していきたいと思います。
企業研究をするうえで周りの学生と差をつける方法が知りたい学生の方などぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
ICT化が進められた背景
ICTとITの違いとは
ICTという言葉が初めて聞くという方も多いと思いますが、皆さんはICTとITの区別ができているでしょうか。
普段の生活や就活ではあまりICTという言葉を聞く機会はないかもしれませんが、実は国際的にはICTという言葉の方が定着しています。
ICTとITはあまり違いはなく、どちらも情報技術やその発展を意味するときに使われます。
しかし正確にはITがInformation Technology(情報技術)の略なのに対し、ICTはInformation and Communicaion Technology(情報通信技術)の略であり、前者が「デジタル機器や、デジタル化された情報や技術」を指すのに対し、後者「通信を使ってデジタル化された情報をやりとりする技術」を指します。前者は機械同士をデータを介して連携させるイメージであり、後者が人間がコミュニケショーンをするためのIT技術というイメージです。
建設業界のICTの例としてはスマホやタブレット、ドローンを使って図面や工数の確認、測量を行うことで仕事の効率化を図るという取り組みがあります。
国土交通省が推進するi-constructionとは
現在多くの業界でICT化が進められていますが、実は建設業界はITとの親和性はあまり高くありません。
それはICT化が積極的に進められている現在でも後に記載するようにいくつかの課題があるからです。
ではそんな建設業界でなぜ積極的にICT化が進められているのでしょうか。
この背景には国の方針が大きく関わっています。
皆さんは「i-construction」というワードを聞いたことがあるでしょうか。
i-constructionは国土交通省が掲げる20個の生産性革命プロジェクトのうちの一つで、建設業界の生産性向上を目指すために2016年より始められた取り組みになります。
i-constructionには次の3つの柱と呼ばれる以下の大きな3つの取り組みに分けられます。
1. ICTの全面的な活用(ICT土木)
2. 規格の標準化(コンクリート工)
3. 施工時期の標準化
この中のICTの全面的な活用は、土木の現場において、ドローンを用いた3次元測量やICT建設機械による施工などで、高速かつ高品質な建設作業を実現していく取り組みで、建設業界にICT化を導入が進められているのはこの施策が関係しています。
現在建設業界が抱える問題点
ではi-constructionの取り組みによって建設業界の抱える問題点を解消していくという取り組みがあることを紹介しましたが、現在建設業界はどのような問題を抱えているのでしょうか。
生産性の低さ
まず1つ目は、生産性の低さです。
建設業界は他の業界に比べて生産性が低いというデータがあるようですが、これは建設業界の特徴とも関連しています。
建設業界の特徴としてあげられるのが、
・現場ごとに違う建築物を作らなければならないため、製造業などと比べて作業の標準化、仕組み化が難しいこと
・元請けや下請け、サブコンなどの専門的な技術が必要になるなど1つの建築物を完成させるのに多くの企業が関わるため、1企業が生産性をあげようとしても効果が薄いこと
これらの特徴が建設業界の生産性の低さの原因となっています。
人手不足の深刻化
2つ目は人手不足の深刻化です。
近年の建設業就労者数は500万人前後の推移ですが、もっとも建設業就労者数が多かった1997年の685万人と比べると、約30%ほど減少していることになります。
また業界内の高齢化も問題になっており、建設業就労者数全体のうち、29歳以下の労働者は10%以下であるというデータも存在します。
建設業界に対するマイナスイメージ
3つ目は建設業界に対するマイナスイメージです。
2つ目の問題を解消するためには、多くの人に建設業界に興味を持ってもらう必要がありますが、現状として建設業界の職場は3K(キツい、汚い、危険)というイメージを持っている人が多く、若者や女性から敬遠されがちな業界となっています。
これらの課題を解決し、業界内の生産効率を上げ、新3K(給与、休暇、希望)のイメージを定着させるために政府によって掲げられた取り組みがi-constructionになるのです。
ICT化を進めることで建設業界はどう変わる?
ではここからはICT技術によって建設業界がどのように変わっていくのか、そして現在実際に導入されている技術などを紹介していきたいと思います。
まずはICT化によってどのような課題が解決できるのかを紹介します。
生産性の向上と業務の効率化
まず挙げられるのは、生産性の向上や業務の効率化です。
具体例としてはCIM(Construction Information Modeling)といった、土木・建設現場に3次元モデルを活用する取り組みなどが挙げられます。
設計や調査の段階などで3Dモデルを使って作業を進めることで、紙媒体使用時に比べ作業スピードが上がり、業務の効率化や品質向上も期待できます。
また測量などにドローンが使われることにより測量時間の大幅な短縮、人手不足の解消にも貢献しています。
安全性・正確性の向上
そして2つ目は、安全性、正確性が上がることです。
今まで人が行ってきた作業を機会に変わることによって、人災によって起こる事故を減らすことができます。
i-constructionが目指すものの1つに、建設現場での死亡事故をゼロにするという目標があります。
ICT化によって安全、健康管理といった面の貢献も期待できるのです。
実際に導入されている事例/技術
ここからは実際の現場で導入されている最新技術を紹介していきます。
今回は大手ゼネコンで取り入れられている技術に焦点を当てていきたいと思います。
建設機器の遠隔操作(例:鹿島建設 A4CSEL®)
まずは鹿島建設の「A4CSEL®(クワッドアクセル)」です。
A4CSEL®は人間がリモコンなどを用いて行う建設機械の遠隔操作などとは異なり、作業指示を送ることで、機械が無人で自律・自動運転を行うことを可能にしました。
この技術によってブルドーザやダンプトラックなどの重機が自動運転で24時間休まず作業を続けることが可能になります。
A4CSEL®は現在複数のダム建設工事で導入実績があり、今後はトンネル、シールドなど他工種にも自動化施工の展開を予定しています。
自動施工ロボット(例:大成建設 T-iROBO)
続いては大成建設の「T-iROBO」シリーズを紹介します。
こちらも自動化施工ロボットのシリーズで、人が入れない場所や、負担の大きな作業が求められる現場などの導入を目指して開発されています。
水中の各種作業を遠隔操作で行うT-iROBO® UW(シャフト式遠隔操縦水中作業機)、T-iROBO Remote Viewer(臨場型遠隔映像システム)、T-iROBO Cleaner(自律型清掃ロボット)、T-iROBO Rebar(鉄筋結束ロボット)など約10種類の建設ロボットシリーズを導入しています。
人とロボットの協同の実現(例:清水建設 シミズ・スマート・サイト)
清水建設は、現場でBuddy(仲間)のように働けるロボットを開発コンセプトに、現場で人と一緒に作業をする自立型ロボットの開発に取り組んでいます。
作業員の介在なく完全自動溶接を行うことができる、溶接ロボット 「Robo-Welder」。インサートへの挿入、下地材の組み立て、OAフロアの台座やパネル設置などを行う、多能工作業ロボット Robo-Buddy。現場に搬入された資材を、作業場所まで自動搬送する、自動搬送システム Robo-Carrier。の全3台を現在までに開発しており、人とロボットが協働できる環境を目指しています。
ICT化に向けての課題
ここまで現在の企業の取り組みや具体的に現場に導入されている技術について紹介してきましたが、建設業界のICT化を進めるうえで課題もあります。
ここでは今後建設業界がICT化を進めるうえでどのようなことが課題になっていくのかをご紹介します。
高コスト
まず1つ目はICT技術を導入するコストです。
建設業界は非常に中小企業が多い業界です。
今回紹介した技術は全て大手ゼネコンの技術であり、中小企業にとっては導入費用が高額なICT技術を取り入れる資金的余裕がないのが現状です。
導入だけでは結果が出ない場合も
2つ目は機械などを導入しても必ずしも作業効率がよくなるとは限らないことです。
機械を導入したとしても、動かすために人が介在する必要があり、また品質も人が施工した方が高い場合もあります。
現場で長く働いている人にとっては、扱いが難しく、品質も疑わしい機械を導入するよりも、自ら手を動かした方がいいという判断になってしまう場合があります。
このような課題がICT化を進めるうえでの課題となっていることを理解しておきましょう。
就活の観点からICT化をどう捉えるか
ここまでICT化の現状や、課題について紹介してきましたが、学生の皆さんはICT化を踏まえて、就活をどう捉えていけば良いのでしょうか。
企業研究に活かす
まず1つ目は企業研究の材料になります。
企業によってICT導入の状況や考え方は異なります。
ICTや最新技術についてホームページや、採用ページでどれくらい紹介しているのかを他社などと比較してみましょう。
比較することによって企業のICTへの興味や力の入れ具合を比較することができます。
IT・ICT化の程度をみることで、新しい技術の導入に対する会社の風土を理解する一つの手掛かりになると言えるでしょう。
また開発、導入している技術も企業によって異なります。
たとえばA社が自動搬送システムを導入しているとすると、なぜその技術を導入しようと思ったのか、数ある施工工程の中でその部分を自動化しようと思った理由や背景などを調べてみたり、企業説明会や面接で質問すると企業の考えや将来性なども理解することができます。
自分なりの見解をまとめ、面接に備える
2つ目は、現在のICTの課題を踏まえて、自分の意見をまとめておくことです。
志望企業や業界のICT化の現状、課題を理解したうえで自分は今後「何に対してどのようにICT化を進めたいのか」、そして業界がどのように向かっていくのかを考えたうえで、自分はどのように貢献していきたいのかを面接で話してみましょう。
将来のビジョンや業界の今後について語ることは面接ではとても大事になります。
ICT化という観点から企業や業界についての意見をしっかりと述べることができれば、他の学生との差別化にもつながります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
少し前まではICT化は人がロボットを操作することで、作業効率をあげるものでしたが、現在はロボットが自分で考え作業をする自立型がトレンドになっています。
企業側としても、今後長く業界に関わり続ける、若い学生がICTや最新技術に抵抗がなく、企業のICT化を促進してくれる存在になってくれることを期待しています。
とはいえ、ICT化が進んでいない施工分野や、導入に向けての課題があるのも事実です。
業界の課題を理解していることは就活では強みになります。
ICT化について詳しくなることで、選考の際の自分の強みにできるようにしましょう。
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