空港の運営・保守の仕事とは? 建設後の施設を支える仕事について
日本各地にある空港は、観光やビジネス、物流など、さまざまな分野で地域と世界を結ぶ重要なインフラです。
そして、空港は「完成したら終わり」というものではありません。
滑走路や誘導路、旅客ターミナル、電気・通信設備などは日々稼働し続けており、各分野の技術者が継続的に点検・整備・更新を行うことで、安全性と快適性が保たれています。
実際、新しい空港の建設には数年から十数年かかりますが、その後の運用フェーズは何十年にもわたって続きます。そしてこの運用段階こそ、より多くの技術者やスタッフが活躍するステージでもあります。
本記事では、空港が完成した後に携わる人々の仕事に焦点を当て、設備保守や滑走路の維持管理、システム運用、空港運営といった具体的な役割や、そこで感じられるやりがいを紹介します。
この記事の目次
空港運営の全体像
空港の運営は、国土交通省や空港会社(例:成田国際空港株式会社、関西エアポートなど)を中心に、航空会社・整備会社・設備管理会社・警備・清掃事業者・ICT関連企業など、多くの組織が連携して行われています。
空港は、24時間体制で人と物流を支える巨大インフラです。その安全・快適性を長期にわたって維持するためには、建築・土木・設備・ICTといった多様な専門分野が一体となって取り組む必要があります。
中でも、各分野の技術者は、空港の施設を「つくる」だけでなく、完成後もメンテナンスや改修を通じて「保ち、更新していく」ことで、その持続的な進化を支える欠かせない存在です。
また、空港が完成されるまでにも関心のある方は、あわせてこちらの記事もご覧ください!
空港建設とは?スケールの大きなプロジェクトを支える仕事をわかりやすく解説!
今回は、その中でも特に建築・土木分野に焦点を当て、空港づくりの現場でどのように技術者たちが活躍しているのかを見ていきましょう。

【建設】施設管理
旅客ターミナル内の空調・電気・給排水など、空港の「日常」を支える設備を守る仕事です。空港では、毎日数万人が行き交い、昼夜を問わず運航が続くため、老朽化した設備の交換や耐震補強、省エネ改修といった工事も、空港の運用を止めずに進めることが前提です。
工事の多くは、旅客便が途絶える深夜や早朝の限られた時間に行われます。
各工事の施工管理者は、短時間で確実に作業を終わらせるための段取りや安全対策を綿密に計画し、作業員や設備担当者と連携して現場を動かします。
【土木】滑走路・誘導路の保守
滑走路や誘導路など、航空機の安全運航を支える基盤を守る仕事です。コンクリートのひび割れ一つが事故につながる可能性があるため、精密な点検と迅速な補修が求められます。
この工事も、航空機が発着を多く繰り返す昼間は作業できないため、多くの保守工事は夜間に実施されます。
土木工事担当者は、限られた数時間の中で安全・品質を確保しながら工程を完了させる調整役です。
空港の舗装工事では、一晩で舗装を剥がして補修し、翌朝には航空機が安全に離着陸できる状態に仕上げる高い正確さとスピードが求められます。さらに、積雪時の除雪や排水設備の点検など、自然環境に応じた柔軟な対応力も必要です。
ICT活用
フライト情報表示や照明制御、監視カメラ、入退場管理など、空港の安全と効率を支えるシステムの整備・更新を担います。
近年は、BIM/CIMやIoTを活用したモニタリング、DXによる自動化・遠隔制御など、空港全体をデジタルで最適化する動きが進んでおり、システム更新時の機器設置・ネットワーク工事の段取りから、運用テストまでの統括が可能になります。
フライトや運航業務に支障をきたさないよう運用チームと綿密に調整しながら、安全にシステムを切り替えるためのスケジュール管理と高い集中力が求められます。
一見デジタルな仕事に見えても、現場調整や安全管理といった現場の知識を持つ人の力で支えるICTが基盤となっており、建設とITの融合が進む中で、空港DXを支えるこの分野の重要性はますます高まっています。
運用・安全管理
航空機の発着スケジュールや滑走路の使用計画を管理し、空港全体の運用と安全を統括する仕事です。
空港は、建設工事や設備更新が行われている最中も、常に運航を続けなければなりません。
そのため、現場担当者と運用担当者が密に連携し、「どの時間に」「どのエリアで」「どの程度の作業が可能か」などを細かく調整します。わずかな作業時間のズレが航空機の離発着に影響するため、分単位での調整力と判断力が求められます。
また、災害発生時やトラブル時には、滑走路の一時閉鎖や避難経路の確保など、安全運用のための即時対応も担います。

空港運営で活躍する主な分野と関わる業界
空港は、完成後も多くの専門職が協力して「運用・維持・改善」を繰り返すことで、安全で快適な運航を支えています。
ここでは、図で示した4つの分野について、それぞれの仕事内容や関わる企業を解説します。
施設管理(建築・設備分野)
ターミナルビルや駐車場などの建築物をはじめ、空調・電気・給排水・防災など、空港施設全体の快適性と機能性を維持します。老朽化した設備の改修、省エネリニューアル、耐震補強など、利用者の安全と快適性を守る重要な仕事です。
関わる業界・企業例
・建設会社(大成建設、清水建設、竹中工務店など)
・設備工事会社(高砂熱学工業、ダイダン、新日本空調など)
・空港施設管理会社(成田国際空港株式会社、関西エアポートファシリティーズなど)
建築・設備系の企業に就職をすると「空港=大規模施設の運用・改修」を支える現場に携わることができます。建設会社の施設保全部門や、設備管理会社、空港グループ企業などの技術職も調べてみてください!
滑走路・誘導路の保守(土木分野)
航空機が離着陸する滑走路や誘導路などを点検・補修し、安全な運航環境を維持します。排水や雪氷対策も重要な業務で、気象条件や運航スケジュールに合わせた夜間施工も行われます。
関わる業界・企業例
・土木系ゼネコン(鹿島建設、飛島建設、五洋建設など)
・舗装・空港土木専門会社(日本道路、前田道路、世紀東急工業など)
・官公庁(国交省航空局、地方整備局など)
インフラ系・土木系の企業に就職をすると道路・港湾に並ぶ「国家的インフラ」に携わることができます。ゼネコンや舗装会社、公務員(土木職)を目指す中で空港関連工事について調べてみることも有効です!
ICT・運航支援システム
フライト情報表示や照明制御、監視カメラ、入退場管理など、空港のあらゆるシステム運用を支えています。
近年では、BIM・CIMやセンサーによる設備モニタリング、AIによる運航データ分析など、インフラDX(デジタル化)が進んでいます。これにより、滑走路や設備の維持管理を効率化し、より安全で持続可能な空港運営が実現されています。
関わる業界・企業例
・情報通信系(NEC、富士通、日立製作所など)
・電気・計装工事会社(きんでん、関電工、九電工など)
・空港システム事業者(日本空港テクノ、東急エアポートサービスなど)
建築・土木系の学生にとっても、ICTは無縁ではありません。空港では「構造物の維持管理 × デジタル技術」が急速に進み、施工管理のデータ化や設備の遠隔監視など、新たな技術応用が求められています。
将来の空港づくりでは、「現場を理解する技術者がDXを活かす」ことは、活躍するチャンスにもなります!
運用・安全管理
航空機の離着陸スケジュールを調整したり、滑走路や誘導路の使用状況を確認したりするなど、空港全体の「安全でスムーズな運営」を支える仕事です。
国際民間航空機関(ICAO)の安全基準に基づいて管理体制を整え、トラブルや緊急時にも迅速に対応できるようにしています。
また、日々の点検や訓練を通じて、空港スタッフ全体で「安全文化」を高めていくことも重要な役割です。
関わる業界・企業例
・空港運営会社(成田国際空港株式会社、関西エアポート、東京国際空港ターミナル)
・行政機関(航空局、地方自治体の空港課)
・運航支援・グランドハンドリング企業(ANAエアポートサービス、JALグランドサービスなど)
建築や土木で学んだ構造・施工・安全管理の知識は、こうした運用の現場でも大いに活かせます。
空港を“つくる”だけでなく、“守り続ける”という視点で関われるのが、この仕事の魅力です。

空港運営・保守の事例紹介
完成後も、空港では多くの技術者が「安全・快適な運航」を支えています。
建設後の維持管理には、土木・建築・設備・ICTなど、幅広い専門知識が活かされています。
成田国際空港(千葉県)
概要
成田国際空港では、2025年5月25日から第三滑走路(3,500 m)の新設や既存滑走路の延長を含む大規模な拡張工事が本格的に始まり、2029年3月の完成を目標としています。
これにより、年間発着回数を増加する計画です。また、2025年3月21日には旅客ターミナル第1ビル5階や展望デッキの改修も発表されました。こうした大規模プロジェクトでは、さまざまな分野の技術者が連携して工事を支えています。
施工管理技術者は滑走路の地盤改良や舗装設計、工程管理を担当し、安全と品質を確保します。建築・設備技術者はターミナルのリニューアルに携わり、省エネ設備の導入や快適性向上を図ります。空港は昼間も運航が続くため、夜間や分割施工が基本であり、建設会社と運営会社が綿密に連携し、通常運航に支障を出さずに工事を進めています。
具体的な仕事・活躍する技術者
・夜間に滑走路や誘導路の補修・点検を行う土木技術者チーム
・照明設備や誘導灯の点検を担う電気・設備担当者
・航空機の動線を踏まえて工事計画を立てる施工管理技術者
「昼は運航、夜は整備」という24時間体制の中で、安全を止めない技術が求められます。
関西国際空港(大阪府)
概要
関西国際空港は、人工島上に建設された海上空港であり、長年にわたり地盤沈下が大きな課題となっています。
例えば、2024年時点で第2島では年間平均21 cmの沈下が観測されています。この課題に対応するため、垂直排水パイプの設置や防潮堤の強化などの対策が実施されています。
こうした維持管理には、多くの技術者が関わっています。地盤モニタリング技術者は人工島の沈下率を測定・解析し、将来の沈下を予測します。
施工管理技術者は滑走路や誘導路、排水設備、防潮堤の補修・改修を行い、空港運航を止めずに工事を進めます。また、維持管理計画の担当者は、沈下対策と運航スケジュールを両立させるため、工程や安全、予算の管理を行います。
関西国際空港では、このように「海上空港を維持するための土木技術」が日々の運用を支えています。
具体的な仕事・活躍する技術者
・地盤沈下を継続的に観測するモニタリング技術者(土木・測量)
・ターミナルや滑走路の沈下補修を行うメンテナンス施工管理者
・鋼構造の腐食対策を担う建築・防食分野のエンジニア
「長く使い続けるための技術開発」が重視され、維持管理の知識が活かせます。
羽田空港(東京都)
概要
羽田空港では、最新技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが進められています。
現在は、生成AIやローカル5G、施設管理DXソリューション「TransBots®」などの実証実験や展示、導入準備段階が中心で、空港内の設備管理や業務効率化の可能性を検証しています。
ロボット技術の導入についても、搬送や清掃、案内業務などで実証実験が行われており、今後の本格的な運用を見据えた準備が進められています。
こうした取り組みには、ICTシステムエンジニアや建築・設備技術者、DXプロジェクトマネージャーなど多くの技術者が関わっており、既存施設との調整や運航への影響を最小限に抑えながら、新しい技術の導入に向けたプロジェクト管理が行われています。
羽田空港では、このように段階的にDXを試行しながら、将来的により安全で効率的な空港運営を実現する取り組みが進められています。
具体的な仕事・活躍する技術者
・AIカメラや自動巡回ロボットで施設異常を検知するICTエンジニア
・ターミナルビルや設備機器の維持管理を行う建築・設備技術者
・空港全体のオペレーションを統括する運用管理職(行政・運輸系)
デジタル技術とインフラ運用が融合する新しい仕事が生まれています。

これからの空港運営の将来性
これからの空港運営では、「環境にやさしく、強く、賢く運営できる空港」を目指す動きが加速しています。
まず、省エネ化・カーボンニュートラル化の取り組みが進んでいます。
照明のLED化や空調システムの高効率化、太陽光発電設備の導入など、建築・設備分野の技術者が中心となって“エネルギーを賢く使う空港”をつくっています。
次に、デジタル技術の活用です。 BIM/CIMやIoTを使って設備や構造物の状態をリアルタイムで監視し、トラブルを未然に防ぐ「スマート保守」が広がっています。
たとえば、滑走路のひび割れや照明設備の異常をセンサーで検知し、夜間に迅速に補修を行うといった現場も増えています。
さらに、災害に強い空港づくりも重要なテーマです。地震時の安全確保や浸水対策の強化、非常電源の整備など、土木・設備技術者が中心となって“止まらない空港”を支えています。
このように、空港では「新しく建てる」だけでなく、「安全に、長く使い続ける」ための維持・改修・デジタル化の仕事が増えています。
建築・土木・設備系の学生にとって、空港は技術力を社会の安心につなげるフィールドとして、これからますます活躍の場が広がる分野です。
まとめ
空港の建設は、滑走路やターミナル、設備といった施設を「つくる」仕事です。しかし、完成後も空港は日々使われ続けるため、運用・保守の仕事が欠かせません。これは、空港を「育て、守る」仕事です。
運用・保守では、建築・土木・設備・ICTなど、多様な専門技術が一体となって、安全で快適な空港運営を支えます。
例えば、滑走路の夜間補修やターミナル設備の更新、省エネ改修、地盤沈下対策やDXによるモニタリングなど、現場では高度な計画力・調整力・技術力が求められます。
こうした仕事の魅力は、目に見える建物や設備だけでなく、航空機の安全運航や利用者の快適性を長期にわたって支える点にあります。
空港という大規模プロジェクトに関わることに興味がある方は、ぜひ空港建設の現場を深掘りしてみてください!