環境保護とビジネスの観点から注目を集める「再生可能エネルギー」と建設業界の関わりをご紹介
皆さんは「再生可能エネルギー」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
最近ではニュースなどで取り上げられる機会も多いため、名前だけは聞いたことがあるという方も多いかもしれません。
現在、再生可能エネルギー分野は、今後の成長分野として様々な企業から注目を集めており、その中には建築、土木業界も含まれています。
今回は再生可能エネルギーとは何かという説明から、注目を集めている理由、そして建築、土木業界の中でも、再生可能エネルギーと関わりの深い業界と関連性について紹介します。
建築、土木業界への就活を考えている学生の方は、業界研究の一環としてぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
再生可能エネルギーとは?
そもそもエネルギーとは何か
再生可能エネルギーを理解するために、まずは「エネルギー」とは何かという部分を理解しましょう。
エネルギーはその起源や特徴によって、主に一次エネルギーと二次エネルギーに分類することができます。
一次エネルギーは、自然の中に存在する状態で、利用できるエネルギーのことを指し、石油や石炭、水、原子力などが一次エネルギーに該当します。
対して、私たちが生活する中で必要なエネルギーである電気、ガス、ガソリンなどは二次エネルギーと呼ばれており、一次エネルギーを使いやすい形にしたものです。
特に電気エネルギー(発電)は、一次エネルギーからの変換が、容易であるため、現在私たちの生活や産業に欠かせないエネルギーとなっています。
再生可能エネルギーとは
ここまで、エネルギーは一次エネルギーと二次エネルギーに分類されることを説明しましたが、一次エネルギーはさらに「化石エネルギー」と「非化石エネルギー」に分けることができます。
化石エネルギーに該当するのが石油や石炭、天然ガスであり、現在の一次エネルギー供給のうち多くが化石エネルギー(化石燃料)を使用しています。
化石燃料は、私たちの生活に欠かすことができませんが、
資源に限りがあること
電気エネルギーを作るために、化石燃料を燃焼させる過程でCO2を多く輩出すること
の2点が問題視されています。
一方で今回のテーマである再生可能エネルギーは一次エネルギーの中でも非化石エネルギーに分類され、
・資源が枯渇せずに繰り返し利用できる
・二次エネルギーに変換する過程でもCO2を排出しない(増加させない)
という特徴があります。
現在日本の法律では太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存在する熱、バイオマスの7つが再生可能エネルギーとして定義されています。
再生可能エネルギーが注目されている社会的な背景
ではここからは再生可能エネルギーが今注目されている理由を社会的背景と照らし合わせながら紹介します。
環境保護
まず1つ目にあげられるのが、環境にやさしいエネルギーという点です。
地球温暖化の大きな原因である温室効果ガスの代表である二酸化炭素(CO2)は、おもに化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)を燃焼させると発生します。
近年は地球温暖化対策に対する関心は高まっており、世界でも2015年のパリ協定を境に、化石燃料を使わない世界を目指す流れが大きくなっています。
上記で説明したように、再生可能エネルギーは、CO2等の温室効果ガスを排出しないという特徴があるため、日本だけでなく世界中で再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みが積極的に行われています。
エネルギー自給率の向上
実は、日本のエネルギー自給率は約10%と、諸外国に比べてとても低いです。
つまり日本で使われるエネルギーの9割は海外に依存しているということです。
自給率が低い要因としては、日本はエネルギー資源が乏しく、石油・石炭・液化天然ガスなどの化石燃料のほとんどを、海外からの輸入に依存していることがあげられます。
世界のエネルギー需要が急速に増えてる中で、安定したエネルギー源の確保は日本にとって大きな課題です。
そのため、多くが純国産エネルギーである再生可能エネルギーの普及率をあげることによって、国のエネルギー問題を解決することが期待されています。
社会貢献性が高い
社会貢献性の高い分野への取り組みは、企業にとって大きなアピールポイントとなります。
再生可能エネルギーは環境問題への取り組みのアピールはもちろん、こちらも近年あらゆる活動のスタンダードとなっているSDGsにおいて、SDGs17の目標の一つである
7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
の達成に直接的に関連しており、他にも
9.産業と技術革新の基盤を作ろう
11.住み続けられるまちづくりを
13.気候変動に具体的な対策を
の分野との関連性もあります。
このように再生可能エネルギーへの取り組みは、企業にとって社会貢献性へのアピールにも繋がるのです。
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成長率の高さ
将来にかけての成長率という点でも再生可能エネルギーは魅力的な分野です。
世界の再生エネルギー市場は21年から27年までの間で、年平均で8.2%成長するというデータがあり、日本国内におていも、政府が再生可能エネルギーの主力電源化を徹底する方針を明記し、2030年度の電力供給に占める再生エネルギーの割合を19年度実績の約2倍に当たる36~38%まで拡大する目標を掲げています。
このような成長分野は各企業にとって新たな事業の柱となる可能性があり、様々な企業が再生エネルギー事業に参入しています。
建設、土木に関する業界と再生エネルギーの関連性
ここからは建設、土木の中でも特に、再生エネルギーとの関連性が高い業界をご紹介していきます。
細かな事業内容については、企業ごとに違いがありますが、業界ごとに再生エネルギーとどのように関わっているのかを理解するうえでの参考にしてください。
ゼネコン業界
ゼネコン業界と聞くと、建物の設計から施工管理を担当するイメージが強いと思います。
実際再生エネルギーの分野でも、太陽光パネルや風力発電施設の設備、設計、施工までを担当しています。
しかし、再生可能エネルギー事業において、建設を計画する際の土地の選定や、事前調査がとても重要になり、ゼネコンはこの調査の部分でも重要な役割を果たしています。
事前調査が必要な理由として、再生可能エネルギーは自然の力を使っての発電になるため、その土地の気候や立地に発電量が影響されます。
また再生可能エネルギーは化石燃料と比べると発電コストが高いため、調査や年間の発電量予測が重要になるのです。
太陽光発電では1日を通して影が出ないようなソーラーパネル配置や傾斜地でも効率よく、発電できるように、最適なパネル配置の調査を行ったり、風力発電では風速や風向等の測定を最低でも1年間行うなど、調査の部分に強みを持っているのがゼネコン業界の特徴です。
近年は建築物に陽光パネルを設置するケースが増えているため、ゼネコンの強みである建築設計のノウハウを活かした、効果的な発電ができ、かつ意匠的に優れた設計を提案する機会も増えています。
他にも自社が所有する土地に太陽光発電所を建設し、自社事業として事業計画から事業運営までを行い、発電した電力を売電する企業があるなど、再生可能エネルギー事業に対してはゼネコンの強みを活かしながら、新たなビジネスを展開する可能性にも期待ができるでしょう。
不動産デベロッパー
デベロッパー業界での再生可能エネルギーへの取り組みとしてあげられるのが、自社で保有・賃貸するオフィスビルや施設などの電力に、グリーン電力(再生可能エネルギーで作った電気)を使用するという方法です。
環境問題への関心が高まるなか、オフィスビルなどで、グリーン電力を使用することは、テナントからの支持を集めやすくなるため、大きなアピールポイントとなります。
通常、グリーン電力を使用する場合、「グリーン電力証書」付きの電気を買うという手法が一般的ですが、東急不動産や三井不動産は風力発電機や太陽光発電所を外部業者を通じて運営管理することで、自社で発電したグリーンエネルギーを自社のオフィスやビルで使用しています。
建設コンサルタント
建設コンサルタントが再生可能エネルギーと関わる分野としてあげられるのが、環境アセスメントです。
環境アセスメントとは「環境影響調査」のことで、大規模な開発事業を行う場合に、事前に環境への影響を調査・予測・評価を行い、深刻な公害や自然破壊を防ぐための制度です。
実は再生可能エネルギー開発で懸念されている点の1つとして、エネルギー開発に伴う、地域の自然破壊があります。
例として、風力発電機を建設する場合、立地場所によっては、鳥類への影響、海洋生物への影響等が想定されます。このように、自然環境を保護するために、建てられた再生可能エネルギーの発電機が逆に自然を破壊してしまう可能性があり、事前の調査や地域住民への説明が不十分だった場合、トラブルに発展し、事業自体が中止に至るケースもあります。
建設コンサルタントは再生可能エネルギー事業以外にも道路やダムを作るときの調査として環境アセスメントを実施していました。
しかし、再生可能エネルギーの普及に向けて、今後は環境アセスメントの重要性がさらに高まっていくと考えられています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
再生エネルギーとは一体何かという点から、なぜ注目を集めているのか、そして建築土木業界でも様々な事業で再生可能エネルギーに関わっていることをお分かりいただけたと思います。
再生可能エネルギーのような今後も成長を続けていく分野に、企業がどのように関わっているのか、また業界内でどのようなポジションにいるのかを理解することは、企業の将来性を考えるうえでも参考になります。
皆さんもニュースや近年のトレンドとして話題に上がっているワードについては、ぜひ業界や企業がどのような関わりを持っているかを調べ、業界研究につなげていきましょう!
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