i-Constructionとは?建設業の未来を切り拓くDXの最前線
近年、建設業界では「デジタル化」が大きなキーワードになっており、現場の人手不足や作業の非効率を解決するため、国が2016年から行っている「i-Construction」という取り組みが進められています。
さらに、建設機械メーカーのコマツが展開している「スマートコンストラクション」のように、実際の現場でデジタル技術を取り入れるための民間企業による取り組みも進んでいます。
この記事では、建設の未来を支えるi-Constructionとi-Constructionを元にした次世代の考え方であるi-Construction2.0、そしてスマートコンストラクションについて紹介しながら、これから業界を目指す就活生が知っておきたいポイントをわかりやすくまとめていきます。
この記事の目次
i-Constructionについて
i-Constructionが生まれた背景と目的
2016年に国土交通省が打ち出した「i-Construction」は、建設業界の生産性を高め、現場のデジタル化を進めるための政策ですが、この政策が誕生した背景には、業界全体が抱えるいくつもの課題があります。
まず、少子高齢化による人手不足です。建設業界では、40代後半〜60代の技術者が多くを占めており、若手の入職者は減少傾向にあります。
また、建設業は長時間労働や休日の少なさが問題視されてきた業界でもあり、特に公共工事は「年度末(3月)」に集中しやすく、工期が偏ることで現場の負担が増し、働き方改革が進みにくいという構造的な課題もあります。
さらに、熟練技術者の技術を次の世代にどう継承するかという問題もあり、経験と勘に頼る仕事が多かった従来の現場では、ノウハウの引き継ぎが難しく、若手が成長しにくい環境であることも課題とされてきました。

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より
i-Constructionとは何か?
「i-Construction(アイ・コンストラクション)」とは、ICT(情報通信技術)を活用して、建設現場のすべての工程を効率化・高度化する国家プロジェクトです。2016年に国土交通省がスタートさせ、主に公共工事の現場から導入が進められています。
このプロジェクトの大きな特徴は、測量・調査・設計・積算・施工・監督・検査といった一連のプロセスを“すべてデジタルで連携する”という点です。
たとえば、従来は現場で測量機器を使って人の手で時間をかけて行っていた測量作業も、現在ではドローンによる空撮と3Dデータ処理によって、短時間で正確に地形を把握することが可能になります。
また、設計段階で作られた3次元モデルのデータは、そのままICT建機(GPSやセンサーを搭載した建設機械)に取り込まれ、現場の自動制御に活用されます。これにより、熟練技術がなくても高精度な施工が可能になり、若手や未経験者でも活躍できるチャンスが広がっています。
さらに、施工後の進捗状況や品質管理もクラウドで一元管理できるため、現場とオフィス間の連携がスムーズになり、報告・連絡・共有の手間も大きく削減されています。
つまり、i-Constructionは、建設現場を「紙からデータへ」「勘と経験からテクノロジーへ」変えていく政策であり、これまで“人に頼る”しかなかった業務を、デジタル技術の力で誰もが扱える形に変えることで、建設業の未来を支える基盤となっています。

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より
i-Constructionの「3つの柱」
i-Constructionは、建設業界の生産性を大幅に高め、持続可能な働き方を実現するために、以下の3つの柱を軸に進められています。それぞれの取り組みは、現場の「無駄を減らし」「品質を高め」「人に優しい環境をつくる」ことを目指しています。
ICTの全面的な活用(ICT土工)
建設現場にドローンや3Dスキャナー、ICT建機(自動で動くブルドーザーやショベルカー)などを導入し、測量から設計、施工、検査までをデジタル化することです。
これにより、例えば従来数日かかっていた測量作業が数時間で完了したり、熟練作業員でなければ難しかった重機操作も、自動制御で正確に行えるようになりました。
若手や未経験者でも早く現場に慣れやすくなり、人手不足対策にもつながっています。
部材規格の標準化
全体の効率化および生産性向上を目指すために、これまで工事のたびに受注生産していた部材を、設計・施工のルールや寸法などを統一する取り組みです。たとえば、構造物のサイズや使用部品の規格を共通化することで、設計や製造、管理の手間が減り、全体の効率がアップします。
建設業では「毎回一品もの」をつくることが多かったのですが、この標準化によって、プレキャスト(工場であらかじめ製作した構造物)などの導入も進み、品質とスピードの両立が可能になっています。
施工時期の平準化
建設業界では、発注のタイミングが年度末に集中しがちで、冬場や年明けに工事が集中する傾向がありました。これにより、人手不足や長時間労働、品質のばらつきが起きやすくなるという課題がありました。
「施工時期の平準化」では、発注や工期を年間を通じてバランスよく分散することで、労働環境の安定化や、余裕のある品質管理を実現します。
結果として、働き方改革の推進や若者の定着にもつながる重要な取り組みです。
これら3つの柱が連携することで、建設現場の「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし、生産性向上・品質改善・労働環境の改善といった効果が期待されています。

出典:国土交通省(i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~)
i-Construction 2.0(建設現場のオートメーション化)
i-Construction 2.0とは
「i-Construction 2.0」は、2024年4月に国土交通省が発表した最新のデジタル戦略で、建設業界の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」をさらに加速させる政策です。
もともと「i-Construction」は2016年にスタートし、建設現場の効率化を目的にICT建機やドローン測量などを導入してきました。
そして「i-Construction 2.0」では、現場の効率化だけでなく、インフラの点検・補修、災害時の対応、地域の課題解決といった幅広いテーマにもデジタルの力を活用するようになりました。

出典:国土交通省(i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~)
i-Construction とi-Construction 2.0の違い
i-Constructionでは、建設業界の生産性向上を大きな目標として掲げた取り組みです。ICT(情報通信技術)を活用し、測量や施工、検査などの工程を効率化することで、限られた人手でもより多くの成果を出せるようにするものでした。
しかし、生産性を上げることは、現場の作業員に大きな負担をかけてしまうという側面もあり、早く・たくさんの作業をこなすことが求められることで、安全確保や労働者の建設業界でのキャリア形成といった観点では、課題が残る状況でもありました。
そこで登場したのが、i-Construction 2.0です。
この新たな取り組みでは、単に「生産性を上げる」だけでなく、省人化=人手を減らしつつ、より安全で働きやすい現場をつくることを目指しています。ロボット技術やAI、自動化建機の導入を進めることで、作業員の負担を軽減し、より持続可能な建設業界を実現しようとしています。

出典:国土交通省(i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~)
省人化とは? 〜人に頼らず、持続可能な建設業へ〜
i-Construction 2.0で掲げられている重要なキーワードのひとつが「省人化(しょうじんか)」です。
省人化とは、単に人手を減らすという意味ではなく、人に頼らずにできる作業を増やすことで、建設現場の効率性と安全性を高める取り組みです。たとえば、これまで人が操作していた重機を自動化したり、測量や検査をドローンやAIで行ったりといった技術が活用されています。
これにより、人手不足という業界の大きな課題に対応できるだけでなく、重労働や危険な作業から人を解放し、より安全で働きやすい現場環境の実現にもつながります。
建設業界の未来を考えるうえで、「どれだけ人手を減らせるか」ではなく、「限られた人材でどう持続可能な現場をつくるか」が重要になっています。よって、省人化は、持続可能な建設業の実現に向けた重要な政策的アプローチの一つです。

出典:国土交通省(i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~)
建設現場のオートメーショ実現のための3つの柱
建設業界が抱える人手不足や高齢化といった課題に対応するため、現場のオートメーション化が進められています。
i-Construction 2.0では、「省人化」をキーワードに、これまで人の手で行ってきた作業をデジタル技術や機械によって効率化・自動化する取り組みが進んでいます。
このオートメーション化を支えるのが、以下の3つの柱です。それぞれの分野でどのような変化が起きているのかについて、今回ご紹介していきます。

施工のオートメーション化
現場での土工や舗装といった「施工作業」そのものを自動化する取り組みです。
たとえば、ICT建機(情報化施工機械)と呼ばれる重機には、GPSやセンサー、3D設計データが組み込まれており、オペレーターが操作しなくても自動で正確に掘削・整地ができる機能が搭載されています。
中でも、「自動運転ブルドーザー」や「マシンガイダンス付きショベルカー」は、ベテランの技術がなくても、正確な作業を実現できる技術として注目されています。
これによって、作業のミスや手戻りが減り、安全でスピーディーな工事が可能になります。
また、若手や未経験者でも活躍しやすくなり、人手不足の解消にもつながると期待されています。

データ連携のオートメーション化
建設プロジェクトでは、「測量」「設計」「施工」「管理」など、さまざまな工程ごとに多くのデータが使われています。
このデータをBIM/CIM(3Dモデルを使った設計・施工管理)やクラウドサービスでつなぎ、自動的に連携させるのが、この分野のポイントです。
たとえば、ドローンで測量した地形データをクラウドにアップすると、すぐに3Dの設計図に反映され、重機の動きにも反映されるようになります。
わざわざ紙で渡したり、手作業でデータを入力し直したりする必要がなくなるため、情報の伝達ミスや作業のやり直しを減らすことができます。
また、現場・事務所・発注者(お客様)など、関係する人たちがリアルタイムで同じ情報を確認できるのも大きなメリットです。
このように、データ連携のオートメーション化によって、仕事のスピードが上がるだけでなく、コスト削減や品質の向上にもつながると期待されています。

施工管理のオートメーション化
施工現場では、進捗確認・品質チェック・安全管理などの「管理業務」が多く発生します。
これまでは現場監督が目で見て確認するのが当たり前でしたが、最近ではAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、画像解析の技術を使って、こうした作業が自動で行えるようになってきています。
たとえば、現場に設置したカメラやドローンが自動で撮影した画像をもとに、工事の進行状況を自動判定したり、作業者が適切な防護具を着用しているかをAIがチェックしたりする仕組みが実用化されています。
また、作業員の出退勤管理や、資材の在庫・納品スケジュールなどもクラウド管理でリアルタイムに可視化されるようになっています。
これにより、現場監督者の負担が減り、ヒューマンエラーなどによるミスの防止や安全性の確保が実現されているのです。

出典:コマツのICT建機
スマートコンストラクションとは?
スマートコンストラクションの概要
建設現場の“未来”をつくる、コマツの先進的DXソリューション
「スマートコンストラクション」は、建設機械メーカーであるコマツ(株式会社小松製作所)が、2015年から展開している建設現場のデジタル化(DX)を進めるための技術やサービスの総称です。
建設業界では、人手不足や作業の非効率・安全面の課題など、さまざまな問題が以前から指摘されてきました。
そうした課題を解決するために、ICT(情報通信技術)・AI・IoT・自動化技術を積極的に取り入れて、現場の“見える化”や“省人化”を実現しようとしているのがスマートコンストラクションです。

国の政策「i-Construction」との違いは?
国のビジョン × 民間のテクノロジー=デジタル化による現場改革の加速
国が進める政策としての方向性や仕組みの整備を目的とする全体方針での「i-Construction」であるのに対し、「スマートコンストラクション」は、民間企業が現場で実際に導入・運用している具体的な技術とサービスです。
たとえば、i-Constructionが「建設現場をデジタル化しよう」と呼びかける存在だとすれば、スマートコンストラクションは「そのために何ができるか」を実際に形にして、現場で活用されている代表例といえます。
実際の導入事例
i-Constructionやスマートコンストラクションの技術は、すでに全国各地の建設現場で導入されており、作業の効率化や安全性の向上に大きく貢献しています。ここでは、代表的な事例をいくつかご紹介します。

出典:コマツのICT建機
事例① 北海道の造成工事:ICT建機とアプリで効率化
工事名:旧美唄川片倉川樋門下流地区 攪拌土造成工事
施工会社:草野作工株式会社(北海道)
北海道の河川改修工事では、ICT建機(ブルドーザー・ショベルカー)にGPSやセンサーを搭載し、設計データに基づいて土の掘削や整地が自動で行われました。
さらに、スマートコンストラクションのアプリを使い、現場の進捗や出来形をデジタルで管理。これにより、冬場の過酷な測量作業の負担が大幅に軽減され、若手社員でも高精度な施工が可能となりました。
北海道 草野作工(株) 様|ICTソリューション|コマツカスタマーサポート株式会社

出典:コマツのICT建機
事例② 宮城県の道路工事:ドローン測量でスピードアップ
工事名:湯元上原線道路改良工事(国道286号バイパス整備)
施工会社:株式会社深松組(宮城県)
こちらの現場では、ドローンによる空中写真から3D地形データを作成し、ICT建機と連携した施工を実施。従来10日以上かかっていた測量作業が、わずか1日に短縮されました。
また、丁張(施工基準線)の設置が不要となり、現場作業の安全性も大きく向上。施工の進捗はアプリでリアルタイムに共有され、効率的な現場管理が実現しています。
宮城県 (株)深松組 様|ICTソリューション|コマツカスタマーサポート株式会社

出典:コマツのICT建機
事例③ 首都圏の地下駅工事:点群とBIMで遠隔管理
施工会社:清水建設株式会社(大手ゼネコン)
首都圏の大型地下駅の建設現場では、iPhoneのLiDARや360°カメラで取得した点群データを活用。これをBIMモデルに反映させ、現場の状況をクラウド上でリアルタイムに共有しています。
この取り組みにより、設計・施工・安全管理の各チームが離れた場所にいてもスムーズに連携可能に。データ共有の時間は従来の10分の1以下に、現場の生産性は8倍にも向上しました。
なぜ、これほどの成果が出るのか?
これらの事例に共通するのは、「現場のすべての情報がデジタルでつながっている」という点です。
従来は熟練の技や経験に依存していた作業も、ICT建機やクラウド管理を導入することで、少人数でも高精度・高効率な施工が可能になりました。さらに、設計ミスや施工トラブルの削減、現場の安全性向上にもつながっています。

就活生が意識すべきポイント
かつての建設業界には、「きつい・汚い・危険」といった、いわゆる“3K”のイメージが根強くありました。特に若い世代や女性にとっては、敬遠されがちな業界だったかもしれません。
しかし今、i-Constructionやスマートコンストラクションといったデジタル技術の登場によって、建設現場の環境は大きく変わりつつあり、重労働や人手に頼る作業が減り、ITスキルやデータ活用力が活かせる職場へと進化しています。
現在の現場では、ドローンや3Dスキャナを使った測量、タブレットによる施工管理、クラウドでのデータ共有など、効率的かつスマートな働き方が進んでいます。
また、現場で蓄積されたデータをもとに施工を最適化するため、ICTやAIの知見を持った技術者のニーズも増加中です。
これにより、従来の「体力勝負」なイメージから、「テクノロジーで支える建設」という新しい働き方が広がっており、若手や女性にとって、スキルを軸に自分らしく活躍できるチャンスが増えているのです。

こんな職種が注目されています
建設業界のデジタル化が進む中で、今までにない新しい仕事が生まれ、活躍のフィールドも広がっています。ここでは、今注目されている代表的な職種を紹介します。
技術職(設計・測量・3Dデータ作成など)
BIM/CIMなどの3次元データを活用した設計・測量を担うポジションです。
パソコンで図面を描いたり、点の集まりから地形を読み取ったりと、「空間」をあつかうスキルが求められます。
3Dのモデリング(立体図を作ること)が得意な人や、建築・土木の勉強をしてきた人に向いている仕事です。
施工管理(現場全体のマネジメント)
工程・品質・安全など、現場の進行を管理する仕事です。
最近では、ドローンで現場を確認したり、タブレットやクラウドを使って情報をチームで共有したりするのが普及しています。
パソコンなどの機器操作に自信のある人は、そうしたITの知識を活かせるチャンスでもあります。
また、「人や仕事をまとめるのが好き」「チームを動かすのが得意」という人にもぴったりな仕事です。
ICTエンジニア(システムの開発・運用)
現場で活用されるアプリやセンサー、クラウドシステムの開発・運用を担う職種です。
たとえば、建機を動かすためのデジタル操作システムや、現場の情報をクラウドでまとめる仕組みなどを担当します。
土木や建築の知識にくわえて、プログラミングやネットワークの知識がある人が活躍していて、「現場のデジタル化」を見えないところから支える大切な役割です。
その他にも…
・データ分析担当:工事データをもとに業務改善を提案
・ドローンオペレーター:空撮や測量の効率化に貢献
・リモート支援技術者:現場と本社をつなぐ遠隔管理を担当
デジタル技術の導入により、これまでの“現場仕事”というイメージにとらわれず、多彩なキャリアが描けるのが、今の建設業界の魅力です。
ITやデザイン、マネジメントなど、自分の得意分野を活かせる仕事をぜひ探してみてください。
企業研究のポイント
就職活動では、「その企業がどれだけデジタル化に取り組んでいるか」を確認することが、志望動機や企業選びのカギになります。
特に以下の点をチェックしてみましょう:
・i-Constructionやスマートコンストラクションの導入実績
・ICT建機やBIM/CIM、クラウド管理などへの取り組み
・若手技術者や女性社員の活躍状況
・DX推進のための研修制度やキャリア支援の有無
これらの情報を調べることで、その企業の「未来を見据えた姿勢」や「働きやすさ」「成長できる環境」が見えてきます。
まとめ
建設業界のデジタル化は、今や避けられない大きな流れです。国の政策「i-Construction」と、今回ご紹介したコマツの「スマートコンストラクション」のような民間企業の施策が一緒になって、現場はどんどん進化しています。
特に「i-Construction 2.0」は、これまでの力仕事中心のイメージを変え、データや最新技術を使いこなす新しい建設業の形をつくっています。これからの建設業界では、ITスキルを持った若い人材がとても求められています。
技術職や施工管理、ICTエンジニアなど、幅広い仕事があり、文系・理系問わず活躍できるチャンスが広がっています。就職活動では、企業のデジタル化の取り組みをしっかり調べ、自分の強みを活かせる会社を見つけましょう。
社会のインフラを支えるやりがいのある仕事に、ぜひチャレンジしてください!