「建築士」とはどのような資格?種類や内容まで徹底解説

2024年9月6日 更新

建築学生の方であれば、一度は聞いたことがある「建築士」と呼ばれる資格。一般の方でも聞き馴染みのある資格ですが、具体的にはどのような資格なのでしょうか。

今回は、そんな建築士の仕事内容から、資格の種類や受験資格、試験の内容までご紹介します。建築士に少しでも興味がある方は、ぜひチェックして、自分自身の進路に必要かどうかを吟味してみてくださいね。

そもそも建築士の仕事内容とは?

最初に、資格を取った際になることができる建築士の仕事内容についてご紹介します。

建築士は、主に建築物の設計や工事、監理を行う職業です。実際の設計や工事にも携わる職業であるため、建築に関する専門的な知識はもちろん、大きな責任が必要とされます。

そこで必要になるのが、建築士と呼ばれる資格です。国家資格であるため、受験する際にもさまざまな受験資格が必要とされます。

ここからは、その資格について詳しくご紹介していきます。

建築士の種類と違い

建築士には3つの種類がある

建築士と一口に言ってもさまざまな種類があり、それぞれに取り扱うことのできる建築物の種類や受験するための資格が異なります。

建築士の種類として、

・一級建築士
・二級建築士
・木造建築士

の3つが挙げられます。この中で比較的、難易度が最も低い資格が木造建築士であり、反対に最も難易度が高い資格が、一級建築士となります。

難易度が高くなるにつれて、取り扱うことのできる建築物の規模が異なり、受験資格の条件狭められる点が大きな違いです。

一級建築士

資格の内容

まずご紹介するのは、3つの建築士の中でも最も難易度の高い一級建築士です。こちらは二級建築士の上位資格です。

取り扱う建築物が一般の住宅をはじめ、高層ビルや国を代表するような特殊な建築物などといった範囲まで渡り、建築物の種類や規模に制限が無いことが特徴です。

そのため、さまざまな建築物の設計や工事、監理はもちろん、それ以外の専門的な業務に携わることもできる資格となります。

受験資格について

次に、一級建築士を受ける際の受験資格をご紹介します。先程ご紹介したように、一級建築士は取り扱うことのできる建築物がさまざまであるため、その分難易度が高く、受験資格の幅も狭い点が特徴です。
主な受験資格として、

・4年制大学、短期大学などで指定科目を修めて卒業すること
・二級建築士の資格を持っていること
・国土交通省が同等と認める者
・建築設備士の資格を取得していること

が挙げられます。平成30年12月14日に施行された「建築士法の一部を改正する法律」により、従来あった実務経験が受験資格に含まれなくなったので、比較的受験しやすい環境になったと言えます。

免許取得の際に必要なこと

また、建築士を取得するためには試験に合格するだけではなく、そのあとに免許の登録を行わないといけません。その際に、試験に合格することと併せて実務経験が必須となります。また、必要な実務経験の年数は学歴によってそれぞれ異なる点も注意です。

具体的な実務経験の年数として、

・4年制大学を卒業した場合、必要な実務経験は2年以上
・3年制の短期大学を卒業した場合、必要な実務経験は3年以上
・2年制の短期大学または高等専門学校を卒業した場合、必要な実務経験は4年以上
・二級建築士の資格を持っている場合、二級建築士として必要な実務経験は4年以上
・国土交通省が同等と認める場合、必要な実務経験は所定の年数以上
・建築設備士の資格を持っている場合、建設整備士としての必要な実務経験は4年以上

が主に挙げられます。上記のうち1つ以上該当すれば、資格の取得が可能になります。

また上記に加え、4年制大学を卒業し、大学院課程において修得した「インターンシップ又はインターンシップ関連科目」で指定の単位数を取得すると、実務経験に加算されます。各大学及び大学院で公開されている要項を確認しましょう。

二級建築士

資格の内容

次にご紹介するのは、二級建築士についてです。二級建築士は、先程ご紹介した一級建築士とは異なり、取り扱うことができる建築物の規模に制限があります。

二級建築士が扱える規模は戸建住宅程度と言われています。その規模内であれば、木造はもちろん、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建築物の設計、工事、監理に携わることができます。

そのため、さまざまな建築物に関わることができる一級建築士とは違い、住宅の設計を主として行う場合が多いです。

一方で、一級建築士の監督もとで大規模建築物の設計業務に携わる場合もあります。企業の業務内容によって携わる建築物の用途や規模は異なります。

受験資格について

次に、二級建築士を受験する際の資格についてご紹介します。二級建築士の主な受験資格として、

・4年制大学、短期大学などで指定科目を修めて卒業すること
・国土交通省が同等と認める者
・建築整備士の資格を取得していること
・建築に関する学歴なしの場合、7年以上の実務経験がマスト

が挙げられます。

また、最後に挙げた建築に関する学歴がない方に関しては、受験資格の際に7年以上の実務経験が必須となります。

免許取得の際に必要なこと

また、二級建築士の免許を取得する際にも、一級建築士と同様に実務経験が必要な場合があります。具体的に必要な実務経験として、

・4年制大学を卒業した場合、実務経験は必要なし
・高等学校または中学校を卒業した場合、必要な実務経験は2年以上
・実務経験のみで受験した場合、引き続き必要な実務経験は7年以上
・国土交通省が同等と認める場合、必要な実務経験は所定の年数以上

が主に挙げられます。
上記のうち1つ以上該当すれば、資格の取得が可能になります。

木造建築士

資格の内容

最後にご紹介するのは、木造建築士です。木造建築士は、これまでご紹介した一級建築士や二級建築士よりも、更に取り扱うことができる建築物の規模に制限があります。

木造建築士が取り扱うことのできる建築物の規模として、「階数2階建て以下、延べ床面積300平方メートル以下の建物」と言われています。

規模に制限は設けられていますが、社寺仏閣に用いられるような木材や木造の建築物に関しての専門的な知識を持ち、日本の伝統的な木造建築物にも携わることもできる資格です。

受験資格について

次に、木造建築士の受験資格についてご紹介します。木造建築士の受験資格は、基本的に二級建築士と変わらず、

・4年制大学、短期大学などで指定科目を修めて卒業すること
・国土交通省が同等と認める者
・建築整備士の資格を取得していること
・建築に関する学歴なしの場合、7年以上の実務経験がマスト

となります。

免許取得の際に必要なこと

また、免許を取得する際に必要となる実務経験の年数も、二級建築士と同様に、

・4年制大学を卒業した場合、実務経験は必要なし
・高等学校または中学校を卒業した場合、必要な実務経験は2年以上
・実務経験のみで受験した場合、引き続き必要な実務経験は7年以上
・国土交通省が同等と認める場合、必要な実務経験は所定の年数以上

となります。上記のうち1つ以上該当すれば、資格の取得が可能になります。

ここまでは、一級建築士・二級建築士・木造建築士の資格自体についてご紹介しました。では、具体的に日程や試験内容はどのようなものなのでしょうか。
ここからは、そうした建築士の試験について、それぞれ具体的にご紹介していきます。

建築士の試験について

主な建築士の試験内容

建築士の試験では、どの種類であっても2つの試験を受験する必要があります。

まず最初に、学科試験を受験し、そちらに合格した後に設計製図の試験を受験します。
また、学科試験に合格している場合、5年間の有効期限がある中で設計製図の試験を3回まで受けることができます。

これを踏まえた上で、一級建築士・二級建築士・木造建築士それぞれの試験の情報についてご紹介していきます。

一級建築士

試験の日程と必要な費用

まず、一級建築士の試験は年に1回行われます。

また、日程としては、学科試験であれば、7月の下旬頃、設計製図の試験であれば10月の中旬頃に行われます。

受験の申込自体は、初めて受験する方は4月中に郵送、受付場所で行われ、過去に受験したことのある方はインターネットでも行われるので、公益財団法人である「建築技術研究普及センター」のホームページでチェックしておくといいでしょう。

また、一級建築士を受験する際には19,700円の受験費用がかかるため、こちらもチェックしておきましょう。

試験の内容と合格率

では、実際に一級建築士の試験内容はどのようなものなのでしょうか。

まず学科試験は、全て4択形式の試験となります。問題数は全部で125問あり、「計画」科目が20問、「環境・設備」科目が20問、「法規」科目が30問、「構造」科目が30問、「施工」科目が25問と、5つの科目に分けて出題されます。

また、「計画」と「環境・設備」科目に2時間、「法規」科目に1時間、「構造」「施工」科目に2時間45分の制限時間が設けられています。

その学科試験の合格基準としては、125問中90点が目安となっています。

次に、設計製図の試験は、課題形式となっています。用途や敷地などの設計条件があらかじめ公表されている建築物について手書きで設計図書の制作を行います。試験時間は1課題に対し6時間30分で、時間配分がカギとなってくる試験です。

一級建築士の試験の合格率は、学科試験が20%程、設計製図の試験が40%程、合わせると12%程と言われており、難易度は非常に高いと言えます。

二級建築士

試験の日程と必要な費用

次に、二級建築士の試験についてご紹介します。

二級建築士の試験も、一級建築士と同様に年に1回行われます。
日程としては、学科試験であれば、7月の上旬頃、設計製図の試験であれば9月の上旬に行われます。

受験の申込自体は、初めて受験する方は3月の下旬から4月の上旬頃に郵送または受付場所で行われ、過去に受験したことのある方はインターネットでも行われます。こちらも、一級建築士と同様に「建築技術研究普及センター」のホームページをチェックしておきましょう。

また、二級建築士を受験する際には、費用として17,700円が必要となるので、こちらも確認しておくといいでしょう。

試験の内容と合格率

次に、二級建築士の実際の試験内容や合格率についてご紹介していきます。

まず、二級建築士の学科試験は全て5択形式の試験です。問題数は全部で100問あり、「建築計画・建築法規」科目がそれぞれ25問ずつ、「建築構造・建築施工」科目がそれぞれ25問ずつ出題されます。また、「建築計画・建築法規」科目、「建築構造・建築施工」科目と、どちらもそれぞれ3時間の制限時間が設けられています。

次に、設計製図の試験は一級建築士と同様、用途や敷地などの設計条件が課題形式であらかじめ公表されている建築物について手書きで設計図書の制作を行います。制限時間は1課題に対して5時間です。

二級建築士の試験の合格率は、学科試験が40%程、設計製図の試験が50%程、合わせて20%程と言われています。一級建築士ほどではありませんが、難易度は高い資格であると言えます。

木造建築士

試験の日程と必要な費用

最後に、木造建築士の試験についてご紹介します。

木造建築士の試験も、一級建築士・二級建築士と同様に年に1回行われます。
日程としては、学科試験であれば、7月の下旬頃、設計製図の試験であれば10月の中旬頃に行われ、一級建築士と同じ頃の日程で行われます。

受験の申込は、初めての方であれば初めて受験する方は3月の下旬から4月の上旬頃に郵送または受付場所で行われ、過去に受験したことのある方はインターネットでも行われます。こちらも、一級建築士・二級建築士と同様に「建築技術研究普及センター」のホームページをチェックしておきましょう。

また、木造建築士を受験する際には、費用として17,700円が必要となるので、こちらも確認しておくといいでしょう。

試験の内容と合格率

次に、木造建築士の試験の内容と合格率についてご紹介します。

木造建築士の試験の形式は二級建築士と同様で、学科試験は全て5択形式の試験です。

問題数は全部で100問あり、「建築計画・建築法規」科目がそれぞれ25問ずつ、「建築構造・建築施工」科目がそれぞれ25問ずつ出題されます。また、「建築計画・建築法規」科目、「建築構造・建築施工」科目と、どちらもそれぞれ3時間の制限時間が設けられています。

また、設計製図の課題も同様で、課題形式で用途や敷地などの設計条件があらかじめ公表されている建築物について手書きで設計図書の制作を行います。制限時間は1課題に対して5時間です。

木造建築際の試験の合格率は、学科試験が60%程、設計製図の試験が40%程、合わせて30~40%程だと言われています。

ここまで、3つの種類の建築士についてご紹介しました。ここからは、実際に建築士をどういった業界で活かすことができ、どんなメリットがあるのかをご紹介していきます。

建築士を活かせる業界とは?

建設会社や住宅メーカー

建築士を主に活かすことができる業界として、建設会社や住宅メーカーが挙げられます。特に二級建築士や木造建築士は、規模が制限されているため、主に住宅メーカーで活躍できると言えます。

また、キャリアアップを目指したい方は、建設会社や住宅メーカーなどで経験を詰み、知識を蓄えた上で個人の設計事務所を立ち上げるのもひとつの手です。

実際に日々の業務のなかで設計を行う場合は、それ自体が自身の設計のスキルや建築の知識が培われるため、一級建築士などの上位資格の取得につながりやすいと言えます。

設計事務所

設計事務所では、設計に従事する方のほとんどが建築士がを取得しており、一級建築士の取得を目指す方も多くいます。
特に組織設計事務所では大規模な建物の設計を行うため、実務上でも大規模な建物の設計に携わることができ、一級建築士などの上位資格の取得につながりやすいでしょう。

公務員

また、建設会社や住宅メーカーからの転職で人気な業界では、官公庁や自治体が主に挙げられます。公務員として働くことができ、街づくりなどの直接設計や工事に携わる仕事や、建築物に関する法律の許認可に関わる仕事にも携わることができます。
公務員の中にも、国家公務員や地方公務員など種類が分かれているため、そうした業界へのチェックも必要です。

また、公務員になるための試験も必要となりますが、キャリアアップや安定感を得ることができるため、選択肢を広げるひとつの手にもなると言えます。

建築士を取るメリット

ここまで、建築士について具体的にご紹介してきました。建築物の設計や工事、監理など、建築物の根本に携わることができる建築士は、難易度が高く、実務経験も必要とされるため、簡単に取ることはできない資格と言えます。

しかし、建築士を取得することで専門的な知識が身に付き、それを活かした業務に関わることができます。また、建築に関わる業界であれば、建築士を持っていることでキャリアアップも望めます。
取り扱う規模が大きい分、責任も重くなりますが、自分自身が蓄えた知識を活かして重要な仕事をこなすことができるため、やりがいにも繋がる資格であると言えます。

まとめ

今回は、建築士の具体的な種類や、それぞれの資格の内容、試験について、建築士を取るメリットなどをご紹介しました。

他の資格に比べてさまざまな受験資格があり、難易度も高いため簡単に取得できる資格ではありませんが、取得したあとの昇給や昇進といったキャリアアップに大きく繋がる資格であると言えます。

自分自身の進路に合わせて、取得するべきかどうか、また、取得する際どんなプランで取得し、その先のキャリアに繋げていくかをイメージするといいでしょう。

しっかりと建築士について理解したうえで、これからの選択肢のひとつとして考えてみてくださいね。

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