不動産の価値を見定める「不動産鑑定士」について解説!
みなさんは、不動産鑑定士という資格を聞いたことがありますか?不動産鑑定士は、弁護士や公認会計士に並ぶ3大国家資格に含まれる資格です。難易度は高いですが、受験資格に制限はなく、誰でも挑戦することができる資格です。
街づくりに関連する業界として、建築土木系(特に建築)からも不動産業界に就職する方は多くいます。
今回は、そんな不動産鑑定士の仕事内容、試験や合格後に必要なこと、不動産鑑定士を活かすことができる業界や取得することのメリットなどをご紹介していきます。
自分の目指す業界や、これからの進路と照らし合わせながら、挑戦するかしないかを吟味してみてくださいね。
この記事の目次
不動産鑑定士とは?
不動産鑑定士とは、その名前から分かる通り、不動産の適正な価値を鑑定する国家資格のこと。
仕事内容としては、土地や建物といった不動産自体のさまざまな状態や環境から、その不動産に適した利用方法や適正な地価を判断することが主となります。
土地の売買や贈与の際に、依頼人からその土地の適性な資産価値の算出を請負います。これはこの資格でしか出来ない独占業務です。
また、そうした鑑定だけでなく、企業や公共団体に対して不動産や土地に関するコンサルティングを行うのも、不動産鑑定士の仕事です。
このように不動産にまつわる多くの知識を身に着けることから、不動産系の資格の最高峰と言われており、国内に約8000人しか取得者がいないほど、希少価値の高い資格です。
では、そうした業務に携わることができる不動産鑑定士の資格はどのようなものなのでしょうか。ここからは、不動産鑑定士の試験について具体的にご紹介していきます。
不動産鑑定士の試験について
不動産鑑定士の試験は2段階
不動産鑑定士を取得するには、「短答式試験」と「論文式試験」の2段階の試験を通過しなければなりません。1段階目の短答式試験に合格した方だけが、2段階目の論文式試験を受験することができます。
また、論文式試験に不合格となった場合でも、短答式試験に合格した翌年と翌々年の2年間は短答式試験が免除され、論文式試験を受験することができます。
つまり一度、短答式試験に合格すると、論文式試験に合計3回まで挑戦することができます。
それぞれの試験の内容と合格率
短答式試験
短答式試験は、午前と午後に分かれて行われます。また、5択のマークシート式で、制限時間はそれぞれ120分ずつです。
問題の数はそれぞれ40問ずつで、午前は「不動産に関する行政法規」、午後は「不動産の鑑定評価に関する理論」に関する問題が出題されます。
それぞれ100点満点となっており、合格ラインは午前試験と午後試験を合わせた200点満点中140点程度です。また、合格率は約70%と言われています。
短答式試験のあとには論文式試験が控えているため、勉強時間を上手く配分して対策をすることが重要となります。
論文式試験
文式試験は3日間、午前と午後に分かれて行われます。また、記述式で制限時間はそれぞれ120分ずつです。
1日目の午前は「民法」に関する試験で、問題数は2問です。午後は「経済学」に関する試験で、問題数は2問です。
2日目の午前は「会計学」に関する試験で、問題数は2問です。午後は「不動産の鑑定評価に関する理論」に関する論文問題で、問題数は2問です。
3日目の午前は「不動産の鑑定評価に関する理論」に関する論文問題、問題数は2問です。午後は「不動産の鑑定評価に関する理論」の演習問題で、問題数は1問です。
それぞれ100点満点となっており、合格ラインは3日間の試験を合わせた600満点中360点程度です。また、合格率は約14%と言われています。
また、各科目に設定されている一定水準の規定の点数を達していないと、総合計で合格点に達していても不合格となる場合があります。そのため、各科目をバランスよく勉強し、点数を取ることが必要となります。
試験の日程と必要な費用
不動産鑑定士の試験は、短答式試験も論文式試験も年に1回行われます。 また、短答式試験は1日、論文式試験は3日間行われます。
日程として、短答式試験は5月中旬頃、論文式試験は8月上旬に行われます。
申込期間は2月の中旬頃から3月の下旬頃で、受験に必要な費用は署名申請だと13,000円、電子申請だと12,800円となります。
受験する方は国土交通省のホームぺ―ジをチェックしておきましょう。
また、不動産鑑定士の試験は試験地が限られている点にも注意が必要です。
短答式試験は北海道・宮城県・東京都・新潟県・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県で行われ、論文式試験は東京都・大阪府・福岡県で行われます。
試験に合格した後に必要なこと
3段階の実務講習
1. 不動産鑑定評価に関する実務に関する講義
不動産鑑定士として業務を行うことはできません。
この実務講習には1年コースと2年コースがあり、どちらか一方を選択することができます。
まず、1段階目の講習として、「不動産の鑑定評価に関する講義」があります。インターネット上でのeラーニング形式で行われ、期間は12月頃から3月頃まで行われます。
こちらの講義は、不動産の鑑定評価を行う実務に関する基礎的な知識を身に着けるための講義で、合計16科目に分かれています。eラーニング形式のため、講義を受講し終わったあとに科目ごとに確認テストがあるので、それぞれしっかりと受講することが重要になってきます。
2. 基本演習
次に、2段階目の講習として「基本演習」があります。こちらは、鑑定評価報告書を作成する手順について実践的に習得する演習となります。
基本演習は4段階に分かれており、それぞれの段階で課題が出されます。そこから鑑定評価報告書を作成し、提出します。この演習は、合計10日間かけて集合研修として行われます。
3. 実地演習
最後に、3段階目の講習として「実地演習」があります。こちらは、実地において「物件調査実地演習」と呼ばれる演習を2件、「一般実地演習」と呼ばれる演習を13件行い、鑑定評価報告書を作成する演習です。
この演習が行われる期間は1年コースと2年コースで異なるため、チェックが必要です。
4. 修了考査
最後に、3段階の講習を受講し終わった後に修了考査を受験する必要があります。こちらの修了考査は、「記述考査」と「口述考査」に分かれて実施されます。
記述考査は1月中旬から1月下旬にかけて行われ、多肢択一式と論文式に分かれて実施されます。
多肢択一式では、鑑定評価の実務に関する基礎的な知識や、種類別鑑定評価及び手法適用上の技術的な知識について問われます。
また、論文式では不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項について問われます。
口述考査は1月中旬から2月上旬にかけて行われ、規定第27条に規定する鑑定評価報告書を用い、実地演習の内容について問われます。
こうして、試験に通過し、実務講習と修了考査を終えて、不動産鑑定士として業務に携わることができます。
では、そうした不動産鑑定士はどのような業界で活かすことができるのでしょうか。ここからは、不動産鑑定士を活かすことができる業界、また不動産鑑定士を取得するメリットについてご紹介します。
不動産鑑定士を活かせる業界とは?
不動産業界
まず、不動産鑑定士を活かせる業界として挙げられるのは不動産業界です。
そこで主に不動産鑑定事務所が挙げられます。不動産鑑定士は依頼を受けて仕事を行いますが、依頼を受ける相手は国や都道府県といった機関から法人の企業、個人までさまざまです。
また、不動産販売会社も就職先として挙げられます。こちらは、依頼を受けて仕事を行う不動産鑑定事務所と違い、自社で取り扱っている不動産に対して評価を行います。
最後に、プロパティマネジメントと呼ばれる職種もあり、こちらは不動産の経営をオーナーに代わって請け負います。
同じ不動産業界でも、仕事内容が異なる場合があるのでチェックしておきましょう。
金融業界
また、不動産鑑定士は金融業界でも活躍することが多いです。金融業界の中でも、担保評価部門と信託部門があり、それぞれ仕事内容が異なります。
担保評価部門は、銀行が不動産担保を行う際に不動産の評価を行います。また、信託部門では不動産物件をどのように運用することによって最大の利益を得られるかを仕事としています。
金融業界においても、不動産業界と同様に部門によって仕事内容が異なる場合があるので、しっかり理解しておくことが必要です。
不動産鑑定士を取るメリット
さまざまな業界で活躍できる
不動産鑑定士を持つことで、先程ご紹介した不動産業界や金融業界をはじめ、さまざまな業界で活躍することができます。そういった点から、自分自身が社会で働くに当たって、就職先の幅を広げたいという方に合っている資格であると言えます。
難易度が高く、取得するまでに時間がかかる資格ですが、その分将来進む選択肢が増える点がひとつのメリットです。
独立開業をすることができ、キャリアアップにも有利
不動産鑑定士の特徴のひとつとして、独立開業への道を開くことができるという点も、不動産鑑定士を取得するメリットであると言えます。さまざまな経験や知識を活かして、自分自身の裁量で仕事を行うことができます。
また、独立開業だけでなく、企業に就職してからもキャリアアップに繋げることができる資格であるため、就職後もキャリアを磨いていきたいという方に合っている資格であると言えます。
まとめ
今回は、不動産鑑定士についてご紹介しました。難易度が高く、取得するまでに時間がかかる難関資格ですが、さまざまな分野で活躍できることや、キャリアアップに繋げることができるなど、取得した際のメリットは大きいと言えます。
不動産だけでなく、色んな業界を見てみたい人にも向いている資格であると言えるため、自分自身の進路に関する選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
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