都市開発で地図に残る仕事を担う、不動産デベロッパーの「開発職」の仕事内容とは?

2025年1月6日 更新

不動産業界の中でも「デベロッパー」は、建築土木学生の方はもちろん、一般の学生の方にも聞き馴染みのある職業ではないでしょうか。都市開発や街づくりを手掛けるデベロッパーは就活生に人気の就職先となっています。

一口にデベロッパーといっても、手掛けている業務の範囲はとても幅広いです。
企業ごとに事業領域は異なりますが、オフィスビル、マンション、商業施設、ホテル、物流倉庫などが挙げられます。

そこで今回は、そんな幅広いデベロッパーの業務の中でも「開発職」についてご紹介します。デベロッパーが携わる全体の流れについても触れるので、業界全体とその流れについても整理していきましょう。

そもそもデベロッパーとは?

デベロッパーは、土地を取得し、そこに建設する不動産を計画したのち、設計事務所やゼネコンなどの力を借りながら、不動産の開発を行う業界を指します。開発した後、不動産の販売や運用を行います。

不動産の種類は、企業によって異なりますが、主に、商業施設、オフィスビル、マンション、ホテル・リゾートが挙げられます。
その他にも再生可能エネルギーの施設やスキー場などの開発及び運用をしている企業もあります。

デベロッパーの「開発職」の仕事内容とは

先ほどは、主にデベロッパーが担う事業内容についてご紹介しました。
ここからご紹介するのは、デベロッパーの「開発」の部分に携わる職種について注目し、ご紹介していきます。

デベロッパーの開発の業務は、以下になります。

開発職は主に、用地取得担当と計画担当に大別されますが、一貫して1人の担当が担う会社もあります。
これらをそれぞれ詳しく見ていき、デベロッパーの仕事の要となる開発の仕事について整理していきましょう。

1. 用地取得(事業計画の検討)

まず、デベロッパーが行うのは用地の取得です。用地を手に入れるにあたって、まず土地の調査を行う必要があります。
土地自体の情報はもちろん、土地周辺の環境などといったさまざまな情報を手に入れ、それを吟味した上で用地を取得します。用地取得をする際には、各地の土地の売買を仲介している企業から土地を仕入れる場合が多いですが、地権者から直接取得する場合もあります。

用地を取得してから用途(住宅、商業、オフィス等)や収益を見極めるのではなく、用地取得の前に事業性を確認し、そのうえで土地代にいくら捻出できるかを検証します。
例えば、住宅地として有名な駅から徒歩5分の土地を買収しようとする場合、その周辺でのマンションの価格を参考に、駅からの距離や立地環境などを踏まえて、大まかな将来の販売価格を見定めます。そのうえでその建物を建てるための設計費用や工事費などの原価を算定して、売上高(販売総額)からその残額として土地代を算定するのが一般的です。
そして入札(他の買主との価格競争)の場合、その土地代によって買収できるかどうかが決まります。

さまざまな視点から土地に対するリサーチを行うため、専門的な知識と共に、自社に有利な条件を売主や仲介会社から引き出したり、適正な価格で用地を取得するための交渉力も必要となります。

2. コンセプトの企画・計画(商品企画)

用地を取得したあとは、街づくりや施設計画、商品企画のコンセプトを企画・計画します。
デベロッパーにとって重要な点としては、事業計画(マンションであれば目標とする販売価格)を達成できるように、顧客・ターゲットにとってより良い商品企画を練ることが重要です。

具体的には、若年層ファミリー向けのマンション需要が高いエリアであれば、
小さい子供がいる若年層夫婦を想定したペルソナを見立て、そのライフスタイルを分析したうえで、その顧客が潜在的に望んでいる生活像を満たせるようなマンションを考えます。

その一つが共用部に子供向けの遊び場を設けることや、親子でゆっくり寛げるような空間を作るなどです。

そして、そのコンセプトをもとに施設計画の基本構想を立て、外観・内観のデザインから間取り種類や数の方針を立てます。

3. 設計・施工発注(実施設計〜工場着工)

コンセプトが決まり、それに準じた設計の計画ができたら、実施設計と施工の発注を行います。設計は設計事務所やゼネコンの設計部署が主な発注先になりますが、デザイン監修という立場で意匠設計事務所が入ることがあります。施工はゼネコンに発注します。

設計は用地取得後から発注することが多いですが、商品企画の方針をもとに基本設計、実施設計というように、より具体の設計が進んでいきます。この時、建築基準法や自治体の条例などに則り、適法な設計が求められます。

施工においては、デベロッパー自身は実際に工事には携わることはありませんが、発注を委託した設計会社や建設会社と連携し、スケジュール管理や工事費のコントロールがデベロッパーの重要な仕事となります。

また、工事が進むなかで、事業主であるデベロッパーが近隣住民への説明会や対応などを真摯に行うことで、竣工後も地域から愛される建物につながります。

4. 竣工・販売・運営

建物が竣工したら、デベロッパーの開発職が受け持つ仕事はここで終了です。
完成した建物は、その建物にあった業界へ向けて販売担当や営業担当によって販売やリーシングが行われます。

竣工後は、
マンションの場合はマンション管理会社に、商業施設やオフィスビルの場合は建物管理会社に管理運営業務を委託します。

大型型のオフィスビルや商業施設などは、会社にとっても重要な位置付けのため、リーシングや施設の管理運営を社内の専門の部署が担い、関係会社と協働する場合が多いです。

デベロッパーとゼネコンの関係性

ここまで、デベロッパーの開発について具体的にご紹介してきましたが、近い業界であるゼネコンとの関係性についても整理しておきましょう。

デベロッパーはご紹介した通り、用地の取得から企画、販売までを行いますが、実際に工事を行うことはありません。そこで設計、施工の発注を行い、その委託を受けて実際に工事を行うのがゼネコンとなります。

そしてデベロッパーとゼネコンは利益相反の立場にあることは認識しておくと良いでしょう。
デベロッパーは工事費が原価(=利益を圧迫するコスト)であり、ゼネコンにとっては売上高であり利益となります。
そのためデベロッパーにおいては、自社の利益を最大化するために、建築工事についてコスト管理という観点から精通しておく必要があります。

実際に、デベロッパーの計画担当の社員に話を聞くと、大型案件であればあるほど、ゼネコンから提出される見積書に隈なく目を通し適正な工事費となっているかを見定めたうえで、さらにVE (バリューエンジニアリング)、CD(コストダウン)を検討し、不動産の価値を下げずにコストを下げることが非常に重要であると語っています。

同じ都市開発の中でも、役割によって重要となる仕事内容が変わってくることも理解しておくと良いでしょう。

デベロッパーの開発職の魅力とやりがい

デベロッパーは職種を問わず、土地や不動産といった大規模な分野に携わる仕事のため、責任が重く大変な職業であると言えます。

しかし、実際に成果が建物という形となって完成することや、多くの人に利用されるようになったりするなど、自分自身の努力が成果となるのを目に見える形で実感することができ、達成感ややりがいに繋がります。

デベロッパーは街づくりという人々の生活をより豊かにする職業であり、社会に貢献しているという実感を味わうことができる魅力があります。

また、大規模な建物を立てる際には、予期せぬ事態によって一時的に工事がストップしてしまうことがあります。

しかし、計画通りのスケジュールで進めないと、コストがかさみ利益が大きく減ってしまうため、臨機応変に対応しながらスケジュール管理とコスト管理を徹底する必要があります。

デベロッパーとしての腕の見せ所であるため、チームをうまく運営しながら、計画通りに事業を完遂できたときに大きな達成感を得られるでしょう。

デベロッパーの開発職を目指すためには?

就職後に必要な資格は?

デベロッパーの開発職に就いたあとには、どのような資格やスキルがあると良いのでしょうか。

デベロッパーのどの職種を目指すうえでも必要な資格は「宅地建物取引士」です。不動産の売買や賃貸借を生業とする会社のため、ほぼ全ての社員が取得しています。

また、設計や施工を委託する設計事務所やゼネコンからの信頼が高まるという点において、「一級建築士・二級建築士」の資格も持っておくと良いでしょう。

あくまでもこれらはデベロッパーで働くうえで重要となる資格ですが、選考時にはあまり重要視されないため、そのほかの対策を入念に行いましょう。

他に必要なスキルは?

デベロッパーの開発職は、営業職と違った形で多くの人と交渉や合意形成をしたり、チームとして動くことが主な職業です。

用地取得や企画などにおいては、試行錯誤を繰り返しながらさまざまな視点から土地を調査し、そこから最適な案を計画します。また、新規性がありより付加価値の高い不動産を開発するためにもプロデュース力も重要となります。
日々様々な情報や体験に触れ、自身の価値観やセンスを磨くことも非常に重要です。

また、設計・施工発注においても、スケジュール及びコスト管理や、ゼネコン・設計事務所との連携が不可欠となるため、チームプレーや全体を統括する主体性が不可欠となります。

デベロッパーの開発職は、ゼネラリスト色の強い職種です。
チームワーク、多様なステークホルダーとのコミュニケーション、デザイン・プロデュース、建築的知識など様々な能力の総合値で仕事をするイメージでしょう。
そのため入社後は様々な経験を積みながら、自身の強みとする領域を見出し、ステークホルダーの力と掛け合わせながら、事業を推進していく人材が重宝されるでしょう。

まとめ

今回は、デベロッパーの中でも開発職に着目して仕事内容や必要な素養をご紹介しました。開発職は、デベロッパーの要となる業務に携わっていると言えます。事業の規模が大きく、責任は大きいですが、その分のやりがいが感じられる職業です。

また、最近では、行政と協力しながら公共施設と一体的な開発をする事例も増えてきているため、今後も事業の質や領域が変化する興味深い業界と言えます。

デベロッパーと一口に言っても、手掛ける事業範囲が広いため、どの分野の職種がどのような仕事を担っているのかを整理する必要があります。

ぜひ参考にして、職業研究を深めてみてください。

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