理想的な住宅を提案する「ハウスメーカーの設計職」の仕事内容や魅力とは?

2025年2月3日 更新

ハウスメーカーとは住宅の設計・施工・販売を行う企業であり、自社ブランドを持ち、全国規模で営業していることが特徴として挙げられます。

近所で見かける住宅展示場やテレビCM、チラシなどで見かけることもあり、馴染みのある方が多いと思います。
そんなハウスメーカーの職種は大きく分けて「営業」「設計」「施工管理」の3つの職種があります。

なかでも、住宅の専門的な知識を持ち、安全で快適な住宅を提案する「設計職」はどのような仕事をしているのでしょうか?

今回はハウスメーカーの設計職の仕事内容や魅力についてご紹介します。
建築学を専攻している方々で住宅業界へ就職を考えている方は興味を持たれている職種だと思いますので、こちらの記事でハウスメーカーと設計職の基礎知識を身に付けましょう。

ハウスメーカーの業態について

まずハウスメーカーの業態について簡単にご紹介します。

ハウスメーカーとは、全国規模または広範囲のエリアで事業展開をしています。住宅建築の企画、設計、施工のすべて行う「自社一貫施工」を行う会社では、施工を協力会社に依頼することで、同じ業者が工事を行うため安定した品質の商品を提供できます。 

蓄積した技術を基に「自社独自の構造・工法などの商品開発」を行い高い技術力を武器としています。また、多くの会社では自社工場で部材を生産し、「設計から施工までをシステム化」しているため、短工期かつ安定した品質を実現しています。

大手企業ではグループ会社と連携し、引渡し後の定期点検やアフターサービス、リフォームを自社グループで行う場合もあります。

会社によって手がける規模も変わり、注文住宅、分譲住宅、賃貸住宅などの企画、設計、施工も行います。

注文住宅には外装や内装、間取りの全てを自分で決めていく「自由設計型」とすでに間取りが決まっている「規格型」があり、独自規格の制約もあるため、設計職としてより自由度の高い提案を望む場合には、会社ごとの研究が重要となります。

《ハウスメーカーの強み》

・全国展開での販売や、住宅展示場やテレビCMと言ったプロモーションにより、認知度やブランド力があり、社会的信頼度が高い
・自社工場で部材を製造しているように、業務がシステム化されているため、生産性が高く、住宅の完成までの工程が早い  
・「自社独自の構造・工法などの商品開発」を武器として、技術力が高い
・グループ会社で連携している企業は、顧客のサポート体制が整っている

などが挙げられます。

簡潔に言えば、地域の個人規模の工務店とは異なり、企業の規模が大きいことによる安定した生産ラインや充実したサービスを兼ね備えていることから、安心と信頼感を武器に住宅を提供している業態といえます。

ハウスメーカーの「設計職」について 

住宅の「設計職」といえど、ハウスメーカーや工務店、設計事務所など業態の違いによって、お客さまに対して”どのように提案するか”が異なります。

簡潔に説明すると、設計事務所や工務店の場合は、お客様の要望を伺い、可能な限り要望を実現できるよう構造から設備、仕様まで計画を行うことに対し、ハウスメーカーは、独自の工法や構造の規格の範囲内で、商品化された住宅の中からお客様の要望に合う商品を選び、土台に手を加える形で設計するイメージになります。

ハウスメーカー設計職の仕事内容

住宅の設計は、敷地の前提条件を理解し、住宅の間取りや広さ、日当り、設備、収納、使い勝手や建材の仕様まで、計画し提案を行います。

また、ハウスメーカーの設計職は、独自の構造や工法の規格を武器に、技術的に可能な範囲内でお客様の要望に合わせた住宅設計し、提供する仕事です。

設計職のイメージでは、お客様との打合せの内容をプランニングし、提案をするイメージが強いですが、その他にも住宅を建てるうえで欠かせない業務があります。今回は、仕事の流れと共にどのような業務を行うのかを紹介していきます。

設計職の主な仕事流れ

フェーズ① 営業・企画設計

購入に前向きなお客様に対し、営業職と共に要望を伺いながら企画を行います。CADを用いて図面やCGを作成し、イメージが伝わる資料をお客様にお見せし、お客様のイメージやニーズと食い違いがないか、打合せを重ねてすり合わせていきます。

フェーズ② 実施設計・見積書の作成

住宅(面積・高さ・間取り)の構造に加えて、内装材や設備など詳細を検討していきます。方針が決まり次第、建築基準法などの関連法規・構造・部材納まりの検討を行い、施工性を考慮し、現実的なプランに落とし込んでいきます。

住宅の工事を行うために必要な金額を表記した見積書の提示を行い、金額と工事内容について説得力のある説明を行うことも大事です。

フェーズ③ 契約締結・工事準備(各種発注)

契約後は、住宅を建てるための資材や設備の発注に取り掛かります。

図面を確認しながら、必要な部材を拾い出し、工期に間に合うように手配します。工事を滞りなく行うためにとても重要な業務になっていきます。

フェーズ④ 工事着工・工事監理・竣工図の作成

工事を行うための詳細な指示図面である実施設計図面を完成させ、工事担当者へと工事内容の引継ぎをします。工事完了後には工事中に発生した設計変更などを反映して、竣工した建物を正確に表した竣工図を作成します。

設計職の業務のポイント

① 営業職に同行し、打合せで顧客へのヒアリング
お客様の要望を明確に汲み取り、専門的で難しい内容を分かりやすく説明することで、説得力のある提案をすることが大切です。

②  ヒアリングを基に設計図面の作成・CGパース作成
自らの描いたラフ図面を正確に分かりやすく資料化するためにもCADのスキルも伸ばしていくことが求められます。

③ 部材や設備、内装材の提案・選定
ハウスメーカーでは自社工場で生産した独自の部材の設定や、設備会社と提携してパッケージしたオリジナル商品を採用しています。そのため、ある程度規格化された商材の中からのみを選んで提案するシステムになっている会社もあります。

④ 見積と設計図面の整合性の確認
自らが描いた設計図と建材費、工事費、人件費などの詳細をまとめた見積と比較し、お客様に整合性ある資料を用意します。

⑤ 構造を絡めた安全性の確認
柱や耐力壁などの位置は構造上安全な計画になっているかなど確認を、企業の技術マニュアルなどを読み込み、商品に適した計画を行います。

⑥ 部材納まりの検討
建具や設備、造作家具などがその壁に問題なく取り付けられるかなど、ミリ単位での計画を行います。

⑦ 関連法規の調整
敷地に対する前提条件を理解し、建築基準法に反した計画になっていないかの確認を行います。法律を守る=人の命を守る とも言われるほど大切な業務です。

⑧ 建築に必要な書類の作成の申請~認可
例:確認申請=建築物を新築したり、大規模な増改築や模様替えをしたりする前に、建築基準法や条例に適合しているかどうかを審査してもらうための申請を行います。
※建築確認申請は建築士にしかできない業務となります

⑨ 部材の発注等
工期に間に合わせるように、部材の納期等をあらかじめ考慮して計画的に業務を進めていきます。

⑩ 実施設計図(工事用図面)の作成
プランニングを分かりやすく説明するための設計図面とは別に、工事担当者に詳細な工事に必要な情報を伝えるための実施設計図面を作成します。
例:平面図、立面図、基礎伏図、展開図、矩計図、設備図など

以上に記した業務範囲は各ハウスメーカーごとに大きく差があります。
設計関連業務はとても広範囲であり、細分化して業務効率を求める会社が主であるので、面接時にはその会社の設計職が「どこからどこまでの業務を担うのか?」などと質問をしてみることで、働くイメージを持ちやすくなるでしょう。

ハウスメーカー設計職の魅力とは

ハウスメーカーの設計職は、お客様の生涯で一度しかないと言われるほどの、人生の一大イベントである住宅購入のサポートをし、プロの設計者として間取りと暮らしをデザインする仕事です。

お客様と何度も打合せを重ね、専門的な知識を用い、より良い提案をするために試行錯誤を重ね完成させたときはとても達成感を得られます。

そしてお客様から「あなたが担当者で良かった」と感謝していただけることが自らの自信につながり、魅力になります。

また、営業職と同様にお客様と密接に関わり、関係を構築することも大切です。相手の話をよく聞き、相手の目線で物事を考える対人折衝能力も身に付きます。

そして、一緒に働く営業職に頼られ、技術的な質問に対して的確な回答をすることができたときにも成長を感じることができます。

自らが描いた図面によって実際に住宅として建築されることや、技術的な知識を駆使し、お客様に快適で豊かな提案をできたとき、設計者としての充実感を感じることができます。

ハウスメーカー設計職に向いている人

ハウスメーカーの設計職は、技術職であり常に高い技術を求められる仕事です。時代によって知識や技術は進化するため、常に学び続ける意欲や向上心が必要です。そして、営業職と同様にお客様と密接に関わり、関係を構築することも大切になってくるため、対人関係を構築するためのスキルも必要になります。

特に建物を扱う建築業界では、一つの工事を行うにも多岐にわたる専門業者の方々と仕事をしていきます。そのため、より幅広いスキルが求められてきます。

《ハウスメーカーの設計職に向いている人の特徴》
・建築、住宅、現場を見ることが好き
・住宅の技術に興味がある
・図面を描くなど、正確性を問われる作業が好き
・好奇心旺盛であり、学ぶことが好きで、その知識を課題などに活かせる力がある
・人を喜ばせることが好き
・会話の背景を考えられる力がある
・物事の因果関係を考えることができる
・学校の課題やスケジュールなど、計画的に進められる
・与えられた課題を取り組むときに、多角的に物事を見ることができる
・1つの物事を深く考え抜くことができる

自分の持つ強みを理解し、知識の引き出しを多く持っておくことで、実際の業務に応用できると思いますので、就活の自己PRの際に、上記を意識すると良いでしょう。

「設計職」の観点でのハウスメーカーの選び方

ハウスメーカーによって、「注文住宅」「分譲住宅」「賃貸住宅」などの種類や注文住宅であれば「自由設計型」と「規格型」などの提案手法によって設計者としての仕事内容や関わり方も変わっていきます。

設計職として、住宅の提案をどのように行いたいのかイメージを持つことで、会社への志望動機も明確になるでしょう。

「注文住宅」「分譲住宅」「賃貸住宅」のどの領域に力を入れている企業か

ハウスメーカによって住宅事業の展開方法は様々であり、大きく分けると「注文住宅」「分譲住宅」「賃貸住宅」(リフォーム・リノベーションはこちらhttps://const-career.com/blog/about-renovation/)の3つがあります。

注文住宅

顧客は設計するお家に住むお客様であり、お客様の要望に対して比較的に間取りを自由に決めて建てられる戸建住宅です。

ただし、注文住宅だからと言っても全てが自由なのではなく、規格化された住宅の商品の中で間取りや設備自由に決められるフルオーダー住宅と、基本的な仕様は決められていて、いくつかの選択肢の中細かい仕様を決めるセミオーダー住宅があります。

一般に顧客が設計に対して要望できる自由度は、

フルオーダー>セミオーダー

となります。

設計者として携われる範囲は、会社ごとやオーダータイプによっても異なります。

分譲住宅

会社がまとめて購入した土地を分割し、そこに住宅を建てて販売するものを分譲住宅と言います。なので、特定のお客様相手に打合せをするのではなく、1つ1つの敷地の土地の形状や日当たり、隣地との関係性や風通しを考慮して計画をしていきます。統一感のあるデザイン・同仕様の住宅を建てて販売し、住宅街の街並みを作ることができます。

賃貸住宅

戸建の住宅とは違い、賃貸住宅は入居者が数年単位で住み替えを行うため、設計提案時の顧客はその賃貸住宅を所有するオーナーです。

各住戸内の間取りや設備だけでなく、住居者の共用空間や仕上げ材の提案を行います。賃貸住宅を魅力的にすることで、需要が増え多くの人々が暮らしやすい住まいの提案ができます。

そして、長期的に土地の活用を行えるよう、賃貸住宅だけでなく店舗併用住宅や福祉施設の事業を行う会社も存在します。

「自由設計型」と「規格型」のどちらがメインか

注文住宅には外装や内装、間取りの全てを自分で決めていく「自由設計型」とすでに間取りが決まっている「規格型」があります。
プラン提案の自由度の違いの比較などの参考にしてみてください。

自由設計型

間取りの自由度を武器にするハウスメーカーの中には“自由設計“と謳う会社もありますが、ハウスメーカの設計は基本的なプランの中から、外観、外壁、窓、壁、キッチン、バス、トイレ、などを選択していくパターンです。

メーカーの「既製品」をオプション選択して組み合わせるため、正確にはセミオーダーとイメージしておく方が良いです。

規格型

デザインや間取りのパターンが決まっており、また設備や建材なども指定されたものから選ぶスタイルが規格型住宅の特徴です。

自由設計型よりも自由度が低いことが特徴になります。

ライフスタイルや土地の形状に合わせて数多くのプランを用意している会社もあります。

独自の構造形式や構法・工法があるか(差別化要素があるか)

ハウスメーカーの特徴として「自社独自の構造・工法などの商品開発」を武器としていることが特徴に挙げられるため、各ハウスメーカーの工法などを知ることでも、企業研究を深めることができます。

住宅の構造には「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3種類があり、住宅を建てる方法である”工法”にも種類が存在します。

各ハウスメーカーは特定の工法に特化しています.。工法によって、間取りの自由度耐久性耐震性耐火性工期コストなどが異なります。

木造


「在来軸組み工法」
日本で古くから用いられていた伝統工法で、柱と梁によって建物を支える特徴があります。

「枠組壁工法」(2×4工法)
規格木材でつくられた枠組みと壁・床・屋根などの構造用合板を打ち付けて、建物全体の荷重を箱のような構造で支える工法のことです。

「木質パネル工法」
住宅の床・壁などの構造体をパネルとして、工場で生産したものを現場に持ち込んで組み立てるプレハブ工法の一種です。

鉄骨造(S)

建物の骨組み(柱や梁など)に鉄骨を使用する構造や工法のことです。

「軽量鉄骨造」
鋼材の厚みが6㎜未満のものを用いる工法であり、2階建てまでのアパートや戸建住宅に使われています。

「重量鉄骨造」
鋼材の厚みが6㎜以上のものを用いる工法であり、3階建て以上の戸建住宅などに使われます。

鉄筋コンクリート造(RC)


柱や梁、床、壁が鉄筋コンクリートで構成されていて、鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めたものを用いて建物をつくります。

柱と梁で建物を支えるラーメン構造と、柱や梁の代わりに壁で建物を支える壁工法があります。

ハウスメーカーの設計職に求められる資格は?

建築士

建築士は設計職として活躍するには必要とされる資格です。

基本的に建築士はクライアントの注文に応じて、建築物の安全性や快適性、構造や設備にかかわる技術を頭に入れながら仕事を行い、建築士法に基づいて建物の設計や工事監理を行います。

一級建築士、二級建築士、木造建築士の3つに分かれており、建物の規模、用途、構造に応じて、取り扱うことのできる業務範囲が定められています。

【種別の業務範囲の比較】

一級建築士>二級建築士>木造建築士

「一級建築士」
国土交通大臣の免許を受けており、一級建築士の名称を用いて、複雑・高度な技術を要するすべての建築物の設計・工事監理等を行うことができます。(ただし、一定規模以上の構造設計や設備設計をおこなうには、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士証の交付を受けている者の関与が必要になります。)

一級建築士しか設計・工事監理できない建築物

(例)
・高さが13m又は軒の高さが9mを超えるもの
・鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が300㎡を超えるもの

「二級建築士」
都道府県知事の免許を受けており、二級建築士の名称を用いて、設計・工事監理等の業務を行うことができます。

一級・ 二級建築士しか設計・工事監理できない建築物
(例)
・鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が30㎡を超え300㎡以内のもの

「木造建築士」
都道府県知事の免許を受けており 、木造建築士の名称を用いて、木造の建築物の設計・工事監理等の業務を行うことができます。

一級・二級・ 木造建築士のいずれもが設計・工事監理できる建築物
(例)
・2階建までの木造建築物で延べ面積が100㎡を超え300㎡以内のもの

引用:国土交通省 住宅局(平成31年3月14日):https://www.mlit.go.jp/common/001279403.pdf

インテリアコーディネーター

インテリアコーディネーターは、お客様の要望をヒアリングして、快適な住空間やインテリアプランを提案する専門職の資格です。

一次試験では、インテリアコーディネーションの計画、インテリアエレメント、インテリアの構造・構法と仕上げ、環境と設備、インテリア関連の法規・規格・制度などに関する幅広い知識を勉強することになり、二次試験ではインテリアを提案するためのプレゼンテーション(図面)の技能や、コーディネーターとしての資質(論文)を学ぶことになります。

住宅建築に携わるうえでは、建築士よりも難易度は低く、住宅営業に必要な知識を浅く広く学びやすく、お客様との会話の引き出しを増やすことができます。

まとめ

今回は、ハウスメーカーの「設計職」に焦点を当てて仕事内容ややりがい、会社の選び方や必要な資格などをご紹介しました。

ハウスメーカーの設計職は、プロとしてお客様の住宅購入のサポートをし、安全で快適な間取りと暮らしをデザインする仕事です。
ハウスメーカーの設計職を目指すに当たり各ハウスメーカーの企業研究に加え、設計者として「どのような提案が可能か」などの点についても比較することが大切です。どのような働き方が自分自身に向いているのかをしっかりと分析をし、働くイメージを持ちながら就職活動を進めていきましょう。

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