新型コロナウイルスの影響を踏まえた鉄道業界の現状と今後とは?
鉄道業界は日本の交通インフラとして大きな役割を果たしており、学生からも人気の業界の1つです。
業界全体でも、コロナ禍以前まで業績は安定しており、訪日外国人数の増加による成長も期待ができていました。
しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)が鉄道業界を大きく変えようとしています。
コロナ禍以降では、鉄道の主要企業の多くが赤字損益となり、他の業界と比較しても、鉄道業界は特にコロナの影響を受けています。
今回はなぜ鉄道業界がコロナの影響を大きく受けたのか、そしてコロナを踏まえたうえで今後業界はどのように変わっていくと考えられているか、さらに近年注目を浴びているサービスであるMaaSについてご紹介したいと思います。
鉄道業界を志望している、興味がある学生は業界の現状や課題、今後の動向を理解するための参考としてください。
この記事の目次
鉄道業界について
鉄道業界の現状についてご紹介する前に、建築、土木学生が鉄道業界で就職する場合どのような職種があるのか、また鉄道業界の選考対策などについて知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
都市交通インフラの要!鉄道業界の土木部門とは
鉄道会社の建築技術職って何をしているの?
街づくりに大きく貢献する鉄道業界の「開発職」とは?
鉄道業界の技術職になるためには? ESから面接までの傾向や対策をご紹介(開発、土木、建築)
鉄道業界の開発職の選考フローとは?ESから面接まで徹底解説
各企業の特徴を理解しよう
鉄道業界のコロナの影響についての説明の前に、まずは各企業の特徴を理解しましょう。
鉄道業界といっても、企業によって特徴があり、それぞれの売上高の割合は企業によって大きく異なります。
例として、JR東日本では売上高の4割が在来線、2割が新幹線、残りの4割が駅ビルやホテルとなっているのに対し、JR東海は売上高の約7割を新幹線が占めています。
また私鉄では、東急は生活・サービス事業が約6割を占め、鉄道と不動産が2割ずつを占める割合になっていて、西武HDではホテルやレジャー関連が3割、鉄道関連が約3割を占めています。
自分の興味のある企業の売り上げの割合を把握できていると、企業の特徴やコロナの影響を理解するうえでも役立つため、ぜひチェックしてみましょう。
鉄道業界が受けたコロナの影響
ここでは鉄道業界が受けた新型コロナウイルスの影響を紹介します。
先ほども紹介したようにコロナ禍での決算では、鉄道の主要各社の多くが赤字となり、鉄道業界全体でコロナの影響を大きく受けています。
鉄道の利用者の減少
まず、鉄道の利用者の減少です。
理由としては企業が在宅勤務を推奨したことによる通勤電車を利用する人、そして旅行などを自粛する人の増加による、電車を利用する人の減少が挙げられます。
そして、もう1つの理由が、外国人観光客の減少です。
コロナ以前の鉄道業界が比較的順調であった理由は、訪日外国人旅行者が一貫して伸び続け、その人たちが鉄道を利用し各地を訪れていたからです。
コロナによる移動制限などで外国人観光客がほとんど来なくなったことも、鉄道業界に大きな影響を与えました。
鉄道特有の固定費の高さによる利益率の低下
鉄道各社の赤字が膨らんでいる要因として、コロナによる乗客の減少も挙げられますが、鉄道特有の固定費の高さも影響しています。
鉄道事業は人件費や修繕費などの固定費が、費用の多くを占めているという特徴があります。
減価償却費などの固定費が多いということは、列車本数を減らしたとしても、経費削減効果は期待できません。
そして鉄道は公共交通機関としての役割も担っているため、鉄道の利用者数が減ったとしても運休や本数を減らすことが難しく、人件費の削減が難しいといった特徴もあります。
企業によって影響は異なる
ここまでコロナの影響について紹介してきましたが、コロナのダメージは企業によって異なるようです。
上記で紹介したように、西武HDはレジャー事業の割合が多いため赤字額も大きく、東急は主力である不動産の影響が回復傾向にあるため、赤字の割合も少なくなっています。
このようにコロナの影響は各企業によって異なるため、自分の興味のある企業がコロナによってどれぐらい影響を受けているのか、そしてその理由を売上高、営業利益率などを参考に調べてみると企業の現状や今後の動向予想にも役立ちます。
鉄道業界の今後
ではコロナの影響を受けた鉄道業界の今後はどのように変わっていくのでしょうか。
ここでは鉄道業界の今後の取り組みについて紹介していきます。
運賃の値上げや変動運賃制
現在コロナ禍の収入減により、今後の運賃の値上げを検討している企業があります。
値上げについては、減収分を補える可能性がありますが、現在の利用者から反感を持たれ、さらなる鉄道離れを引き起こす可能性があるため、慎重な検討が必要です。
また現在JR東日本がこれからトライアルとして試すのが、変動運賃制です。
こちらは密を避けるための取り組みでもありますが、通勤時間帯の満員電車を緩和するための施策にもなります。
今後はピーク時間帯を避けて鉄道を利用すると、ポイント還元などでインセンティブを付与する取り組みが行われていく予定ですが、将来的には通常やピーク時の値段を上げることにより混雑を平準化し、車両や要員の削減にも繋がることが期待されています。
終電の繰り上げ
2021年春のダイヤ改正によって、首都圏や関西圏の終電の時間が繰り上げが行われました。
コロナの影響で在宅勤務や、仕事後に飲食をせずに帰宅した人が増えたことによって、深夜時間帯の電車を利用する人が特に減っているというのも理由の1つですが、深夜作業の人員確保が大きな理由です。
今後、線路メンテナンスの作業員が、人手不足により1~2割減少することが予測されているため、深夜時間帯の作業時間を確保できるというメリットや、コスト削減効果が期待できます。
テレワークオフィスの提供の促進
在宅ワークが普及し始めている中で、鉄道各社が注目しているのがテレワークオフィスの提供です。
JR東日本は首都圏の駅ナカなどで個人向けのブース型シェアオフィス「STATION BOOTH(ステーションブース)」を展開していますが、東急や東武鉄道など郊外にシェアオフィスを設置する場合もあるようです。
この動きが進めば、都心のオフィスに出社する代わりに、自宅最寄り駅近くのシェアオフィスに出向いて仕事をするというライフスタイルが可能となります。
さらにJR東日本は走行する東北新幹線の車両をテレワークオフィスとして使う構想を発表するなど、これからの新しい働き方に対しての関わり方に各企業が力を入れています。
今後発展が期待されるMaaSとは?
最後に今後鉄道業界で発展が期待されている分野であるMaaSについて紹介します。
MaaS分野は、現在1000億円前後の市場規模が、10年後には12兆円にも上るとも予想されているため、鉄道業界を志望する学生はぜひ押さえておきましょう。
MaaSについて
まずはMaaSとは何かについて説明します。
MaaSはMobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の略になり、一言で説明すると、鉄道やバスなどあらゆる交通手段を連携させ、出発地から目的地への移動をITで最適化し、サービスとして提供します。
現在でも乗り換え案内アプリなどのサービスはありますが、MaaSは決済のサービスも備えており、宿泊先のホテルなどの決済もすることができ、インバウンドの観光客への対応としても期待されています。
そしてスマホの画面を使用し非接触で決算ができるため、「Withコロナの時代」における行動様式ともマッチします。
現在、東急、JR東日本、伊豆急行が共同で、伊豆内の観光施設や観光体験をワンストップの決済で提供するサービスや、ユーザーの現在位置を取得することで、観光情報やお得情報を通知するサービスを取り入れた「Izuko」の展開を実証実験として進めています。
詳しく知りたい方は、各社HPや各サービス名で検索して見ると良いでしょう。
MaaSの課題
このように注目を集めているMaaSですが、実現に向けた課題もあります。
認知度の低さ
海外では浸透しているMaaSですが、日本での認知度はまだまだ低いようです。
MaaSの認知度が低いと、サービスを利用してもらうことも難しくなってしまうため、MaaSの普及とともに認知度の向上も課題と言えます。
異なる事業者の連携が難しい
MaaSのサービスは複数の企業の協力によって、様々な交通手段の展開が必要です。
しかし、企業同士は競合他社、業界になるため、複数の交通事業者などを連携し、1つのサービスとして提供するための調整は簡単には進められない場合も多く、今後も障壁となる可能性があります。
MaaSの今後の展開
現在は鉄道業界を主体とした複数の交通事業者によって展開されているMaaSですが、将来的には、公共交通機関に加え、自動車メーカー、通信・IT、不動産など多くの業界が参入し、スマートシティーを実現させていくことが目標になります。
そのため鉄道業界はもちろん、鉄道以外の業界も今後MaaSに関わる機会が増えていくことになるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
鉄道業界はコロナの影響を大きく受けた業界のため、今後の事業形態やビジネスモデルが大きく変化する可能性があります。
そして業界の変化に伴って、今後は企業が新卒の学生に期待することも変わっていくかもしれません。
鉄道業界が今後どのような人材を求めるようになるのか、そこに対しての適切なアピールが内定を得るための重要なポイントです。
今までの交通インフラから今後鉄道業界はどのような役割を担えるのか、そしてそこに社員としてどのようなアピールができるのか、を考えながら選考に臨むようにしましょう。
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